ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は、平家物語に登場する「鵺(ぬえ)退治」の逸話をモチーフに、緊迫感のある造形をつくっていきます。
猿や虎の体を併せもつ怪異「鵺」を造形
今回は「平家物語」に登場する「源頼政の鵺(ぬえ)退治」をモチーフに、武士が鵺を退治する場面を制作しました。鵺の怪物のような妖怪のような禍々しい雰囲気と、今にも退治されそうな緊迫感の描写を意識しています。
鵺(ぬえ)
『平家物語』などに登場し、猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇。文献によっては胴体については何も書かれなかったり、胴が虎で描かれることもある。また、『源平盛衰記』では背が虎で足が狸、尾は狐になっている。さらに、室町時代には頭が猫で胴は鶏のものが出現したと書かれた資料もある[2]。
主要な制作アプリケーション
・ZBrush 2022
・Adobe Photoshop
・KeyShot 8
STEP 01:鵺の身体を作成
今回は、顔を含めて最初からアシンメトリーに制作していきます。左右の正確さより、躍動感や雰囲気をより重視します。
STEP 02:背中に武士を追加する
鵺の造形がある程度進んできたところで、鵺を退治する武士を追加していきます。このとき、甲冑などは最初あまり意識せず、まずはポージングを探っていくことに重きを置いて進めます。
STEP 03:鵺の顔を作成し、体の肉付けをする
次に、鵺の顔の造形を進めた後、体のディテール、肉付けをしていきます。ディテールを意識しすぎて、筋肉など内面的な構造を無視した形状にしないよう注意します。ある程度造形が整ったら、ポリペイントで着色して構造を確認します。
STEP 04:仕上げ
武士の甲冑を追加し、全体のディテールやポージングを整えます。鵺にとどめを刺そうとする瞬間の、武士が刀を振りかぶるポーズは上半身の反り具合を丁寧に調整します。
STEP 05:KeyShotでレンダリング
KeyShotでライティングなど雰囲気を確認し、レンダリングします。ライティングは鵺の怪物感が感じられるよう、何を一番見せたいかに重点を置いて画づくりしていきます。
完成
最終的にPhotoshopで色味などを加えて完成です。
今回は自分の得意とするクリーチャー感を上手く鵺に対して表現でき、不気味な怪物の討伐を描けたと思います。最初から構図をしっかりイメージすることがとても重要ですね。
岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。株式会社Villard代表取締役。
国内外の造形に関わる仕事をメインに活動しており、カプコンフィギュアビルダー クリエイターズモデル『モンスターハンター』シリーズのフィギュア原型や『バイオハザード:インフィニット ダークネス』『ELDEN RING』を始め、『シャザム!〜神々の怒り〜』『65/シックスティ・ファイブ』などにも参加している。ジャンルを問わず映像やゲーム、CMなどの主にクリーチャーのコンセプトアート、モデル作成などを多数手がける。
www.artstation.com/artist/yuzuki
www.villard.co.jp
TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard)
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)