こんにちは! ボーンデジタル テクニカルサポートの黒河です。

建築Vizの現場では短納期で高品質な画づくりが求められますが、そうした環境では、自分の手に馴染んだ機能やフローで対応せざるを得ず、新しいコトを覚える暇がなかなかないですよね。

今回は、建築Vizでもよく用いられるV-Rayに注目し、株式会社オークの山内裕二さんと、作業効率を上げる5つの機能を紹介します。

記事の目次

    黒河 建

    ボーンデジタルのテクニカルサポート担当。前職ではIT企業にて基幹システムの導入に従事。現在はRevitを中心に、建築業界向けのサポート業務を担当している。
    X:@BD_SoftwareDiv

    ※本記事は、月刊『CGWORLD + digital video』vol.337(2026年9月号)掲載の連載「TECH ROOM:このソフト、どこまでやれる?」を再編集したものです。

    INFORMATION

    V-Ray(ブイレイ)


    高品質なフォトリアルレンダリングを実現する、業界標準のレンダリングソフトウェア。建築、インテリア、プロダクトデザイン、映像制作など幅広い分野で活用され、リアルなライティングやマテリアル表現を効率的に構築できる。主要な3DCGソフトにプラグインとして対応し、設計・デザインにおけるビジュアライゼーションを強力にサポートする。
    www.borndigital.co.jp/product/v-ray-for-maya
    www.borndigital.co.jp/product/v-ray-for-3ds-max

    Function① Cryptomatteを使って楽楽マスク!

    Cryptomatteはご存知ですか? 映像業界だと必須の要素で、シーンにある全オブジェクトのマスクを自動生成してくれます。

    その後工程となるレタッチやコンポジションの場面で多大な効率化をもたらしてくれるのですが、建築Vizでは意外と使っていない人も多いかもしれません。

    しくみとしては、レンダリング時にオブジェクト名やマテリアル名などを基に自動でID情報を生成するもので、事前準備がほとんど不要なのです。V-Rayでのセットアップも簡単で、V-Ray Frame Buffer(VFB)での合成もできます。

    ▲レンダーエレメントにVRayCryptomatteエレメントを追加します。エレメントのオプションでIDをマテリアル別、レイヤー別に分けることも可能です
    ▲あとはレンダリングするだけ。レンダーエレメントにVRayCryptomatteが生成されます
    ▲V-Ray Frame Buffer(VFB)では、CryptomatteをあらゆるVFBレイヤーの「マスク」として利用できます。例えば「カーブ(トーンカーブ)」レイヤーを追加し、マスクレイヤーから「Cryptomatteマスク」を追加します。「+ピック」をクリックしてレンダリング画像上をクリックすると、そのオブジェクトがマスクとして追加されます。「選択時にプレビューを表示」にチェックを付けておくと現在のマスクを確認できます

    カーブを調整すると、マスク部分(家の外壁)だけにトーンカーブを適用できます。RGBのカーブを個別に調整することで様々な色調の外壁を作成することが可能です。

    • ▲加工なし
    • ▲トーンカーブのマスターで明度を落として黒く変更したもの
    ▲トーンカーブをRGB別に変更して青く変更したもの

    Function② カメラで解像度と可視性オーバーライド!

    V-Rayのフィジカルカメラには、「解像度上書き」「可視性の上書き(オーバーライド)」項目がありますが、いまいち有益な使い方がわからず、触れていない方も多いのではと思います。

    これらの項目を設定することで、パターンの切り替えが瞬時に行え、デザイン検討時になかなか有効です。早速使い方を見ていきましょう!

    ▲V-Rayのフィジカルカメラには、「解像度上書き」「可視性の上書き(オーバーライド)」項目があります(可視性の上書き機能はV-Ray 7.3 アップデートから追加)

    「解像度上書き」を使ってみましょう。例えばカメラAはスチル(横)、カメラBはポートレート(縦)のようにセットしておくと、カメラを切り替えるだけでレンダリング解像度を変更できます。

    • ▲カメラAでレンダリング
    • ▲カメラAの設定値
    • ▲カメラBでレンダリング
    • ▲カメラBの設定値。ちなみに、VFBのレンダリングボタンを長押しすると、カメラを簡単に切り替え可能です

    「可視性のオーバーライド」を使うと、そのカメラ限定で特定のオブジェクト、レイヤー、オブジェクトIDを非表示にできます。

    例えば、カメラAではパターンBのレイヤーだけ除外、カメラBではパターンAのレイヤーだけ除外してレンダリングと、いうことができます。

    • ▲カメラA
    • ▲カメラB
    ▲この機能を3ds Maxのバッチレンダリングと組み合わせると、様々なパターンのレンダリングを一気に作成できるので、簡易的なシーンステート機能としても使えます

    Function③ スポットライトはDiscライトで!

    V-Rayを使用された経験のある方は「スポットライトないじゃん!」と思ったことがきっと一度はあるでしょう。

    スポットライトの代替策としてIESライトを使うという方が多いのではと思いますが、ササっとダウンライトを配置したければ、Discライトの設定値をいじるとスポットライトになってくれるのでオススメです。

    • ▲V-Rayにはスポットライトが存在しませんが、Discライトをスポットライトとして使うことができます。Discライトはデフォルトで180度に広がって放射します
    • ▲「指向性」パラメータを「1.0」に近づけるほどライトの照射範囲が狭くなり、スポットライト状態になります(指向性1.0はレーザービームになります)
    ▲ライトの形状を「ディスク」に変更すると、ダウンライトを簡単に設置できます。ダウンライトを作成するためにわざわざIESライトを作成する必要はありません

    Function④ Enmeshで建具を簡単配置!

    Enmeshは、基となるオブジェクトの表面に、別のメッシュをタイル状または連続的に配置し、実際の立体形状としてレンダリングできる機能です。

    大量のジオメトリを効率的に扱えるため、建築Vizやプロダクトデザインで細かなディテールを表現する際に活躍します。文章で見てもわかりづらいと思うので、実際に見ていきましょう!

    • ▲Enmeshを使うと、テクスチャ同様に3Dオブジェクトを貼り付けられます。例えば、窓や手すりなどの部分に板ポリゴンをインスタンスで配置できますが、必ず適切なUVを割り当てるようにしましょう
    • ▲「窓」「手すり」のモデルをシーンに追加。Chaos Cosmosに様々なオブジェクトが用意されています。ドアや窓等の平らなオブジェクトの場合「寝かせて配置」しておくのがコツです
    ▲板ポリゴンに VRayEnmeshモディファイヤを追加し、オブジェクトとして「窓」や「手すり」オブジェクトを追加します。「オブジェクト空間に合わせる」ボタンを押すと、Enmeshの参照空間が元オブジェクトにぴったり一致します
    ▲板ポリゴン側に「窓」「手すり」のマテリアルを割りて当ててレンダリングします。板ポリゴンがきちんと3Dオブジェクトとしてレンダリングされていますね。タイリングを調整することでくり返しを調整できます(初期タイリング数5に注意)。なおテクスチャと同様、板ポリゴンのUVを調整することでEnmeshの「伸び・縮み」をコントロールできます

    Function⑤ エレメントでポストプロセスを効率化!

    VRayLightMixは、Render Elementのひとつで、レンダリング後に各ライトの明るさや色、ON/OFFをVFB上で調整できる機能です。

    シーンを再レンダリングすることなくライティングを変更できるため、建築Vizや製品CGのライティング検討を効率化できます。

    ▲レンダーエレメントから「VRayLightMix」を追加します。オプションでインスタンスやグループ、レイヤー別に1つのライトとしてまとめることもできます。同時にVRayDenoiserも追加して問題ありません
    ▲レンダリングです。LigtMixエレメントがあると、VFBのソースが自動的にライトミックスモードに切り替わります。下の例では昼と夕方、夜のHDRIを設定したドームライト2つを同時に配置してあるので、非常に明るくレンダリングされています
    • ▲ライトミックスのインターフェイスで各ライトをON/OFF、強度調整、色調の変更ができます。例えば、昼用のライトを有効にして夕方・夜用のライトを無効にすると、日中のレンダリングが得られます
    • ▲夜のシナリオも、再レンダリングなしで自在に演出できます。部屋ごとに明るさを変えるなんてのも簡単ですね。「シーンへ反映」ボタンを押すと、ライトミックスでのライト設定を実際のライトのパラメータとして反映させることもできます。コツとしては、明るいライトを暗く調整する方がノイズが少なくライトミックスできます。逆に暗いライトを明るくすると、ノイズが目立つ結果になります

    次回予告|V-Ray

    来月もV-Rayを取り上げますが、次回はエンタメ業界向けに話をしようと思います。基本操作では触れられない便利な機能や、知っておくと作業時間を短縮できる設定、実践的な活用方法を中心に解説します。ワークフローの改善や表現力の向上につながるテクニックを取り上げ、より効率的で高品質なCG制作に役立つ情報をお届けしますので、お楽しみに!

    INFORMATION

    月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.337(2026年9月号)


    特集:価値を創造する3DCG
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2026年8月10日

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    TEXT_山内裕二/Yuji Yamauchi(オーク)、黒河 建/Takeru Kurokawa(ボーンデジタル)
    EDIT_李 承眞/Seungjin Lee(CGWORLD)、山田桃子/Momoko Yamada