ひとくちに「CGの仕事」と言っても、業種・職種によって内容は様々で、求人情報だけではその実情がわからない場合が多い。
そこで本連載では、様々なCGコンテンツを扱う企業に対して、1.基本情報(ツールやチーム構成)、2.仕事内容(ワークフローやスキル)、3.文化(スタッフの一日の過ごし方や学び方など)の3項目について共通でインタビューを実施。連載を通じて、業界、職種、企業ごとに各項目の違いが比較できるように試みる。

第1回は「デジタルの力で"物語"を創るスタジオ」をコンセプトに掲げるイメージ・ロジック。Apple Arcadeゲーム『FANTASIAN』のリアルタイムカットシーン制作や、Disney+で配信中ドラマ『コネクト』のVFX制作など、様々な案件を手がけるCGプロダクションだ。同社のアニメーションチームにお話を伺った。

記事の目次

    <1.基本情報> イメージ・ロジック アニメーターとは?

    手がける案件

    ・Disney+ドラマ『コネクト』一部VFX制作
    ・『ヒプノシスマイク - Glory or Dust』CGパートアニメーション制作
    ・Apple Arcadeゲーム『FANTASIAN』一部リアルタイムカットシーン制作
    ・アニメ『名探偵コナン』OP映像 真っ赤なLip CGアニメーション制作
    ・映画『竜とそばかすの姫』一部アニメーション制作
    その他コンテンツの垣根を越え、多数のゲーム・アニメ・映画のアニメーション制作を手掛けている。

    ヒプノシスマイク Division All Stars『ヒプノシスマイク -Glory or Dust-』
    『FANTASIAN』紹介編トレーラー

    チーム構成

    アニメーションチームのメンバーは全9名。うち、アニメーションディレクター2名、リードアニメーター2名、アニメーター5名で構成されている。

    複数の案件が入った際にはラインが分かれることもあるが、基本は全員でひとつの案件に当たっている。また、チームには中途入社の方が多く、前職はゲーム制作会社のプリレンダー映像制作部門のプレビズアーティスト、アニメ制作会社の作画アニメーター、他業種では総合コンサルティング会社勤務から転職、海外から来日したスタッフまでさまざまだ。

    使用ツール

    スタッフ全員がMayaに加え、Unreal Engineを使用している。ゲーム案件では制作したアニメーションのデータをUnreal Engineに組み込んで納品することが多いため、習熟しておく必要があるとのことだ。

    <2.仕事内容> ワークフローや求められるスキル

    所属メンバー紹介

    林 聖也氏
    アニメーションディレクター

    伏見滉生氏
    アニメーションディレクター

    石田君志氏
    リードアニメーター

    鴨田 航氏
    リードアニメーター

    佐藤琴音氏
    アニメーター

    Jhon Mena氏
    アニメーター

    仕事内容・ワークフロー

    現在イメージ・ロジックのアニメーションチームが携わる仕事の多くはゲームのカットシーン制作だ。絵コンテがある場合は絵コンテに基づいて各アニメーターがアニメーションを制作するが、その一方で絵コンテの存在しない、シナリオのみのシーンも多く存在する。その場合、アニメーションディレクターが1つ1つのシーンにコンテを切っていては制作が間に合わないため、シナリオを元に各アニメーターが文字コンテを作成。それをもとにプリビズを作成し、アニメーション制作に取り掛かることもある。

    「構図やカメラワーク・尺の取り方・人物配置や音にまつわる演出をアニメーターが構築するというのは中々できない経験ですし、楽しみながら取り組んで欲しいと伝えています。ディレクターのバックアップがある中で個々の自由なアイデアを表現に落とし込むことで、より良いものができると考えています(林氏)」。

    特徴

    社内にはモーションキャプチャシステム OptiTrackが導入されており、スタッフであれば誰でも好きに使用することができる。

    「いずれは全員に、もっと気軽に扱えるようになってもらいたいですね。例えばリファレンスとしてスマホで撮影することがありますが、モーションキャプチャのデータを見た方が良いこともある。そんな時に自由に使ってほしいので、環境はもっと整えていこうと思っています(林氏)」。

    社内に設置されているOptiTrack

    求められるスキル

    同社アニメーションチームで求められるのは、基本的なアニメーションスキルに加えて、演出力やカメラマンのような視点、基礎的な映像理論の知識だ

    「アニメーションスキルだけ持っていれば仕事ができるかというと、必ずしもそうではないというのが専門学校時代の制作との一番のギャップです。基礎的な映像理論の知識などがないと現場ではなかなか通用しないと感じますね(石田氏)」。

    「自分が一から演出を考えて、アニメーションを制作し、ディレクターから高評価をいただいたときはやっぱりとても嬉しいですね。(佐藤氏)」。

    <3.企業文化>スタッフたちの働き方や価値観

    スタッフの1日の過ごし方

    イメージロジックではフレックス制を採用しており、決まった時間に出社するということはない。
    標準的なスケジュールとしては、11時始業、好きなタイミングで昼休憩1時間を取り、20時終業。定例での社内ミーティングはなく、絵コンテの説明や修正指示など、細かな打ち合わせはその都度椅子を寄せ合って打ち合わせをしている。

    インプット方法

    私は映像に関する書籍や小説をよく読んでいます。参考になった書籍は社内の本棚に置いてチームに共有しています。小説は、文字を頭の中で映像化しながら読むことで、それがトレーニングになっている面もあるのかなと思っています。仕事で触れられるシーンの数は限られてくるので、読書を通じて経験値を増やすことに繋がると思います(伏見氏)」。

    「小説を読んで映像化するのは良いトレーニングになると思います。僕の場合は、演出を任せていただいてる時に音をとても意識するようになってから、音楽を勉強するようになりました。コード進行におけるドミナント・トニックの効果や、偽終止・解決などの作用もアニメーションに繋がる部分が大いにあるなと感じたり、今までと別の角度からアニメーションに対しての造詣を深めることに繋がっていますね(林氏)」。

    なお、他のアニメーションチームのメンバーからは、「ジェスチャードローイングで基礎力を鍛えたり(鴨田氏)、「監督の視点で映画を観賞したり(Jhon氏)」と、様々なインプット方法が集まった。

    同社に飾られている書籍を並べてもらった。CG制作の教本だけでなく、演出理論や絵コンテ集など、種類が豊富だ
    社内の廊下には、イメージ・ロジックが制作に携わってきた作品のポスターが飾られている

    TEXT_Kaori Takeda
    EDIT_山下一貴 / Itsuki Yamashita(CGWORLD)