作品制作を進行する上で必要不可欠なプロダクションマネージャー。プロダクションマネージャーは、どのように仕事を進め、どのような影響を作品に与えているのか、またどんなキャリアの展開が望めるのかなど、プロダクションマネージャーの実態を明らかにしていく本企画。

各企業に1.基本情報(ツールやチーム構成)、2.仕事内容(ワークフローやスキル)、3.文化(スタッフの一日の過ごし方や学び方、キャリアなど)、の3項目について共通でインタビューを実施。業界、企業ごとに具体的にどんな違いがあるのかを含めその実情を解明していく。

今回はバーチャルカメラによる映像表現を武器に、演出・アニメーション・プリビズなど、様々な映像制作を手掛けてきたジャストコーズプロダクションに取材し、同社で働くプロダクションマネージャーの実情についてお話をうかがった。

記事の目次

    <1.基本情報> ジャストコーズプロダクションのプロダクションマネージャーとは?

    求人情報

    ジャストコーズプロダクションは、現在経験者を対象に、ラインプロデューサー、プロダクションマネージャーを積極採用中だ。現在は中途採用を行なっている。詳細は、こちら

    手がけた案件

    ハリウッドでの映像制作の経験を持つ監督陣が海外のセンスを取り入れた国内は元より世界へ向けた企画・演出・映像を提供している。具体的には、ゲームカットシーンから映画の実写CG合成などのCG制作、プリビズ制作などが主な提供サービスである。プリビズや、バーチャルカメラの導入は、同社が日本でいち早く導入したもので先駆的な取り組みを積極的に行うプロダクションだ。

    ・GRANBLUE FANTASY: Relink
    ・映画 ゴールデンカムイ
    ・Netflixドラマ 幽☆遊☆白書

    上記で示した作品以外にも、『シン・ゴジラ』、Netflixオリジナルドラマ『First Love 初恋』、『FINAL FANTASY XVI(ファイナルファンタジー16)』など、これまでにも数多くの話題作の制作に携わっている。

    チーム構成

    一つの案件に対し、ディレクター、アニメリーダーが1名ずつ、アニメーターが4~5名、そして協力会社のスタッフが参加する。プロダクションマネージャーは、大まかに2~4つの案件ラインを同時に進行、管理する。

    使用ツール

    主にExcel、Wordを使用。特にExcelの使用頻度が高い。またクライアントの希望があればShotGridを使用することもある。


    <2.仕事内容> ワークフローや求められるスキル

    インタビュイー紹介

    ジャストコーズプロダクション代表/プロデューサー 柴田氏、ジャストコーズプロダクションプロダクションマネージャー 金氏

    仕事内容・ワークフロー

    クライアントへの提案、スタッフの選定、アサイン、進捗、スケジュール管理など一連の進行を担当する。クライアントへ演出面を提案する際に使用する絵コンテの作成、リファレンスの収集、モーションアクター、デザイナーなどスタッフのアサイン、各スタッフの作業進捗の確認、関係者間のコミュニケーションなどほぼ全工程に参加する。

    同社のプリビズの実績の豊富さにも表れているが、同社は実制作だけではなく制作の初期段階、演出の設計から依頼されることも多い。そのため、同社のプロダクションマネージャーは、物語や映像の核となる部分の工程に携わることを求められる。プロダクションマネージャーの意見が演出部で考慮されたり、集めたリファレンスの中からディレクターがイメージをピックアップすることもあるため、プロダクションマネージャーの決定が作品にもたらす影響は非常に大きい。

    CGWORLDでは、ジャストコーズプロダクションの協力のもとプリビズに対する正しい理解を広めることを目的とした企画『ほんとのプリビズ!』を連載中

    「私は、プロダクションマネージャーをただ単に制作の進行管理を担うポジションというふうに考えていません。案件の先頭に立ち牽引してゆく非常に重要なポジションだと捉えています。というのも私自身、プロダクションマネージャーが担う業務を長らく経験しそこで作品作りを学んできました。クライアント、社内、社外スタッフほぼ全ての関係者とコミュニケーションをとりながら、全工程に関わる仕事です。全体を俯瞰し作品完成までチームを導く、作品のクオリティ、クライアントの満足を左右する重要な仕事だと考えています。」(柴田氏)


    「入社してこれまで、本当に幅広い業務を経験させて頂いています。案件全体に関わることができるので、案件を担当するたびに新たな知識と、次につながる経験が増えている実感があります。」(金氏)

    スタジオの特徴

    ジャストコーズプロダクションは数多くの有名タイトルに携わり、業界内でも高い評価を受けている。その背景には、柴田氏が前述したように制作の技術力にとどまらず、コミュニケーションに重きをおくスタジオとしてのスタンスがあるようだ。

    「僕らは基本的に「できない」と言わないようにしています。それは映像制作、CG制作といった面だけではなく、例えばアメリカでこういう役者さんと監督で作りたい、となったとき、アメリカにはこういう制度があって、ユニオンのルールがあって…と色んな制約や障害があったりします。それを作品作りの1つの工程と捉え、どう解決するのかが良い作品作りに繋がってゆくと考えています。

    単にクライアントさんから「CG作ってください」と言われて「はい作りました」では終わらないことが重要だと考えています。クライアントが困っていそうなことは何か考え、提供できるものを増やしていく。そういったことをできるだけやってきた結果、クライアントさんたちから「ここに頼んだらやってくれそうだな」という期待を持ってもらえるようになったんじゃないかと思っています。」(柴田氏)

    求められるスキル

    直近で最も求めているのは、映像業界で4、5年の経験がある人材ということだが、最も重要なのは、「人の役に立って嬉しい」と感じるのかという点だ。

    「全体を考えて仕事をするスキルが必要です。今行ってる作業の目的は何か?その作業の前後を担当する人はどう進めたら喜ぶのか?ということを理解していくことが重要です。また性格としては、人の役に立って嬉しいと感じる人が向いていると思います。こうやったらあの人は仕事しやすいかな?喜んでくれるかな?と想像できる人には、経歴に関わらずぜひきていただきたいですね。余談ですが、以前あるコンビニのスタッフの方の気配りに感動し、スカウトしたこともあります(笑)。」(柴田氏)

    キャリア

    プロダクションマネージャーを経てのち、プロデューサーとして活躍する人が最も多い。だが、同社のプロダクションマネージャーの業務は、制作進捗の管理から演出面でのサポートまで行う幅広いものであるためディレクターを目指すことも可能である。


    <3.企業文化>スタッフたちの働き方や価値観

    スタッフの働き方

    金氏のとある一日の働き方を紹介していただいた。

    「10時に出勤し、メールやSlackで連絡事項の確認をします。次に、タスク整理を行います。11時からクライアントとミーティング、12時からは現場でアニメーターさんと打ち合わせをしました。14時ごろから、議事録の作成や、進捗管理シートの整理など情報の整理、書類作成を行います。

    その後、クライアントとのミーティング内容をチームメンバーに共有したり、発生したタスクを各工程のスタッフに伝えます。そのタイミングでチームメンバーの業務の進捗を確認し、再度進捗管理シートの更新を行いました。

    16時からは再度別案件のクライアントとミーティング、その後は締切の近いものから提出資料の作成を行いました。こういった流れで、一日の仕事は進んでいきます」(金氏)

    カルチャー

    ジャストコーズプロダクションでは週に一回、代表の柴田氏自らが腕を振るって料理をし、スタッフ一同で夕食を食べる習慣があるという。「以前ロサンゼルスで仕事をしていたときに、ずっとテイクアウトの食事で、それに飽きてしまい、自分が料理を作りそれをみんなで食べるということがあったんです。その時に、自分たちで作った料理を食べながら会話してコミュニケーションを取る時間を作れたことはとても良かったなと思ったんです。その体験が元になって、もう15年ほど、私が作った料理をみんなで食べるという習慣が続いています。

    現在は毎週木曜日に、社内キッチンで私が料理をして、スタッフ一同で夕食を食べているんです。そこで料理を食べながら会話をしたり、情報交換したりすることが、社内コミュニケーションの場として機能していると感じています。「激辛麻婆豆腐が食べたい」といったようなスタッフのリクエストにも応じているんですよ(笑)」(柴田氏)


    インプット方法

    「本や、各種メディアをみてのインプットももちろん大事だと思いますが、私は人に質問して情報をインプットしていくということを重視してやってきました。目の前の案件に取り組む中でわからないことがあればすぐに質問し、実際にやってみるという繰り返しを経て今があると思っています。」(金氏)

    「元々オリジナル作品を作るために映像業界に入り、後にジャストコーズプロダクションを設立したこともあり、参考に読んでいたのは『ハリウッド リライティング バイブル』、『ストーリーアナリスト』『メイキング・オブ・ブレードランナー』です。『「ウルトラセブン」の帰還』をはじめドキュメンタリーものはいまでもよく読んでいます。」(柴田氏)

    ・『ハリウッド リライティング バイブル』リンダ・シガー著/愛育社
    ・『ストーリーアナリスト』愛育社
    ・『メイキング・オブ・ブレードランナー』ポール・M・サモン/ソニーマガジンズ
    ・『「ウルトラセブン」の帰還』白石雅彦/双葉社