トリノで1週間、トップクリエイターと過ごすCGイベント「VIEW Conference」 主催者マリア・エレナ・グティエレス氏インタビュー
イタリア・トリノで毎年秋に開催されている「VIEW Conference」。アニメーション、VFX、ゲーム、AIをテーマに、ハリウッドの映画監督やVFXスーパーバイザーが1週間にわたって登壇する国際カンファレンスだ。日本ではまだ知る人が多くないこのイベントについて、CEO兼マネージングディレクターのマリア・エレナ・グティエレス(Maria Elena Gutierrez)氏に話を聞いた。
開催情報
VIEW Conference 2026
| 会期 | 2026年10月12日(月)〜16日(金) |
|---|---|
| 会場 | OGR Torino(イタリア・トリノ) |
| 言語 | 英語 |
| チケット | All Access In Person(全セッション)/ライトパス(トークのみ) |
| 公式サイト | https://www.viewconference.it/ |
VIEW Conferenceとは
VIEW Conferenceは、イタリア北西部の都市トリノで毎年10月に開かれる、アニメーション・VFX・ゲーム・AIの国際カンファレンスだ。2000年に始まったイタリア国内向けのイベント「Virtuality」が前身で、2005年に現在の名称となり、国際イベントへと拡大した。
会期は約1週間。公用語は英語で、会場は鉄道車両の整備工場を改装した複合文化施設「OGR Torino」。ハリウッドの映画監督や大手スタジオのVFXスーパーバイザー、ゲーム開発者、研究者らが登壇し、公開前の作品のメイキングをいち早く披露することも多い。
2025年の開催では150名以上が登壇し、トーク76本、ワークショップ22本、パネル14本、マスタークラス9本のほか、ポートフォリオレビューや上映会も行われた。講演を聴くだけでなく、数時間〜一日がかりの実習型ワークショップが充実しているのも特徴だ。
2026年は10月12日〜16日に開催。ブラッド・バード氏、撮影監督のロジャー・ディーキンス氏、Weta FXのエリック・セインドン氏、Insomniac Gamesのスタッフらが登壇し、NVIDIAとRunwayの対談も組まれた。
主催者マリア・エレナ・グティエレス氏インタビュー
マリア・エレナ・グティエレス(Dr. Maria Elena Gutierrez)
VIEW Conference CEO兼マネージングディレクター。映画を専門とする大学教授でもある。2005年にカンファレンスディレクターに就任し、前身イベント「Virtuality」を国際イベント「VIEW Conference」へと発展させた。
イタリアの外へ開かれたイベントを目指した
――2005年にディレクターに就任されたとき、VIEWをどんなイベントにしたいと考えていましたか。当時のイタリアに足りないと感じていたものは何でしょう。
グティエレス:VIEW Conferenceの前身は、2000年に始まった「Virtuality」という年次イベントです。アニメーションやCG、VFXに携わるイタリアのクリエイターや技術者が集まり、自分たちの経験や成果を共有する場でした。
2005年に私がディレクターを引き継いだとき、そのコンセプトを広げてVIEW Conferenceを立ち上げました。イタリア国内にとどまらず、世界中に開かれた本当の意味で国際的なイベントにしたかったのです。
それ以来、VIEW Conferenceはアニメーション、VFX、CG、ゲームの新しい潮流と優れた成果を紹介する場として成長してきました。いまでは業界でも存在感のあるイベントとして知られ、世界中から受賞歴のあるスピーカーが集まっています。
――同じ分野のほかの国際イベントと比べて、VIEWにしかないものは何だとお考えですか。
グティエレス:VIEW Conferenceは、美しい歴史ある街トリノで開かれる英語のイベントです。会期は丸々1週間あり、ほとんどのスピーカーがその間ずっと会場にいます。私たちは、誰もが歓迎されていると感じられる温かい雰囲気づくりを大切にしています。驚くようなプレゼンテーションがある一方で、憧れの人に会ったり、受賞歴のあるプロと交流したりできる機会もたくさんあります。もちろんプロ同士も交流します。実際、VIEW Conferenceから生まれた大きなプロジェクトはひとつやふたつではありません。
1週間のプログラムには、深く掘り下げたセッションが詰まっています。毎日、第一線の映画監督が受賞作や最新作を語り、アニメーションのプロがその細やかな技を解説し、VFXスーパーバイザーが自分たちの仕事をブレイクダウンします。さらに、クリエイターや技術者、有識者が最新のツールや手法、考え方を共有してくれます。ですから、内容の深さ、気取らなさ、そして人と人のつながりという点では、ほかのどのイベントにも負けないと思います。しかもそれが、美しい建築と豊かな文化、すばらしい環境と食事に恵まれたヨーロッパの街で味わえるのです。
数時間〜数日がかりの実習型ワークショップ
――参加者にとって、マスタークラスやワークショップはトークとどう違うのでしょう。
グティエレス:私たちの教育プログラムは、国際カンファレンスの中でも特に充実していると自負しています。愛好家や学生から経験豊富なプロまで、誰でも参加できます。
受賞歴のある業界のリーダーが講師を務める実習型のマスタークラスやワークショップでは、いまの業界で本当に必要とされる分野をじっくり学べます。最新のデジタルツールから伝統的な手仕事の技術、機械学習や生成AIまで、内容はさまざまです。多くのワークショップは数時間、一日がかりのものも少なくありません。VIEW Conference 2026では、アカデミー賞受賞監督のクリス・ラヴィス氏がストップモーションの映画制作を教える4日間の実習「Puppet Lab」も用意しました。
2012年ごろからAIに注目してきた
――生成AIやリアルタイム制作をプログラムの中でどう位置づけていますか。ここ2、3年でセッションの中心はどう変わってきたでしょう。
グティエレス:映画を専門とする大学教授として、そしてVIEW Conferenceのディレクターとして、私は2012年ごろからAIの話を聞いてきました。いまのブームよりずっと前のことです。ここ数年でAIはプログラムの中で着実に存在感を増してきました。AIの最新動向を紹介する発表には、毎年わくわくさせられています。
また、AIがもたらす広い影響を専門家が議論するパネルも設けています。パイプラインやワークフローへの組み込み方、雇用や創造性への影響、さらには哲学的・倫理的な問題まで扱います。こうした視点はワークショップにも反映されていて、AIの最前線で働くプロが講師を務め、参加者は最新のツールや手法を実際に使って学べます。
今年はバーチャルプロダクションを深く扱うパネルに加え、展示エリアにバーチャルステージを設置し、会期のうち4日間にわたって実習型のワークショップを行います。このバーチャルステージは、日本のソニーと、アメリカのテキサスA&M大学の協力で実現しました。
公開前の作品をいち早く紹介する
――前回、特に反響が大きかったセッションはどれでしたか。その理由も含めて教えてください。
グティエレス:難しい質問ですね。昨年のVIEW Conferenceでは150名以上のスピーカーが、トーク76本、ワークショップ22本、パネル14本、マスタークラス9本を行い、ポートフォリオレビューや上映会、基調講演などもありました。世界中から来た参加者はどのセッションも楽しんでくれたと思います。
私自身の印象に残っているのは、Lucasfilmのシニアバイスプレジデント兼エグゼクティブデザインディレクターで、アカデミー賞受賞者のダグ・チャン氏に、視覚芸術への貢献を称えて「VIEW Visionary Award」を授与したことです。ダグ氏はクロージング基調講演「A Life in Film Design」も行い、『スター・ウォーズ』シリーズをはじめとする多くの世界をデザインしてきたキャリアを振り返ってくれました。
また、VIEW Conference 2025で取り上げたうち5本が、のちにアカデミー賞を受賞したことも誇りに思っています。『KPop Demon Hunters』『The Girl Who Cried Pearls』、ギレルモ・デル・トロ監督の『フランケンシュタイン』、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』、『Sinners』です。『フランケンシュタイン』と『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』のセッションは、映画の公開前に行われたものです。こうした公開前の「ファーストルック」は毎年のようにあり、VIEW Conferenceならではの特徴のひとつです。
ヨーロッパで高まる日本作品への関心
――アニメーション、ゲーム、VFXで日本から生まれる作品は、ヨーロッパの制作者の間でどのように受け止められていますか。
グティエレス:全体として、アニメーション、ゲーム、VFXともに日本の作品はヨーロッパでどんどん人気が高まっていると感じます。NetflixやCrunchyrollなどの配信プラットフォームで観られる作品が増えたこともあり、日本の文化や創造性への関心が広がっています。歴史的に見ても、日本のアニメーションが欧米の映画作家に大きな影響を与え続けているのは間違いありません。イタリアにも熱心なファンがたくさんいます。私自身、宮崎駿監督は憧れの人のひとりですし、宮崎監督やスタジオジブリ、そのほか多くの日本の映画作家から影響を受けたと語る監督には、数えきれないほど会ってきました。