任天堂の「CGスペシャリスト」は同社のデザイン系職種のひとつで、CGにまつわる技術を駆使して、デザイナーのアウトプットを最大化する役割を担っている。本記事ではその仕事の実際を、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下、『TotK』)の制作に参加したCGスペシャリストへのインタビューを通して深掘りしていく。
CGスペシャリストという職種を設けた経緯
CGWORLD(以下、CGW):井上さんは、任天堂でCGスペシャリストのマネージャーを務めているそうですね。CGスペシャリストの役割は、テクニカルアーティスト(以下、TA)のようなものでしょうか?
井上氏(以下、井上):近年のTAはかなり広範囲の業務を担当する職種になっているため、デザイナーのグループに所属して、TA業務の一部を担う職種のことを弊社ではCGスペシャリストと呼んでいます。一般的なTA業務の中でも、特にDCCワークフローの整備や、リグ、プロシージャル生成、マテリアル作成、ライティングといった、デザイン業務やビジュアル構築にまつわる部分を担う、テクニカルなスキルセットをもつ職種です。
CGスペシャリストは比較的新しい職種で、5年ほど前から正式な活動を始めました。当初はテクニカルデザイナーとも呼ばれていましたね。デザイナーの中にも技術に強い人がいて、制作業務を行いながらツールをつくって作業を効率化したり、マテリアルの表現実験をしたりしていました。できる人が積極的に、技術まわりのフォローを買って出ていたわけです。しかし、そういった技術は特定の個人に依存していたり、善意で行われていたりしたため、プロジェクトの座組に大きく左右され、タスクとして明文化されていない状況でした。
それと並行して、ハードの進歩によってグラフィックスの表現力が向上するのと同時に、ゲーム1タイトルあたりの物量が増加し、デザイナーの作業の効率化、品質の統一、クオリティアップが求められるようになったのです。プログラマーによって開発パイプラインが整備されていく中で、できる人がやるだけではフォローしきれなくなり、組織化して計画的に運用することが急務となりました。
そこで、技術に強いデザイナーを集めて、CGスペシャリストの組織化を進めることにしました。初めは別のデザイン業務を担当していた人たちが、CGスペシャリストへジョブチェンジして組織ができあがっていきました。新しい職種をつくることは簡単ではありませんが、間違いなくこれから重要になる職種だという確信がありました。最近は、ジョブチェンジやキャリア採用だけでなく、新卒採用も行なっています。ちなみに、CGスペシャリストの勤務地は京都と東京の両方にあります。
CGW:東京にも開発拠点があるのは、関東圏で生活している人には嬉しいですね。
井上:様々な試行錯誤を経て、現在はCGスペシャリストの仕事を[キャラテクニカル]、[地形テクニカル]、[ライティング・グラフィックス]の3分野に分けています(※1)。今回のインタビューに同席している3人は、各分野のCGスペシャリストです。彼らの経験や、『TotK』での仕事を通じて、CGスペシャリストが大事にしていることや、どのような人がCGスペシャリストに向いているかをお伝えします。
3人のCGスペシャリストの自己紹介
山上氏
任天堂株式会社 企画制作本部 企画制作部 CGスペシャリスト[キャラテクニカル]
山上氏(以下、山上):学生のときはグラフィックデザインを専攻していました。卒業後、2004年にゲームソフト開発会社へ就職し、2018年に任天堂へキャリア入社しました。現在当社で7年目、業界歴は21年目です。学生時代は写実系アナログイラストを描いており、前職ではキャラクターデザイナーとして働く傍ら、業務効率化のためのスクリプトを書き始めたことをきっかけに、技術まわりの業務にも携わるようになりました。現在は[キャラテクニカル]のCGスペシャリストを務めています。
白井氏
任天堂株式会社 企画制作本部 企画制作部 CGスペシャリスト[地形テクニカル]
白井氏(以下、白井):もともと数学やコンピュータが好きで、ゲームプログラマーを志望していました。最初の就職先はゲームとは無関係の業界でしたが、独学で始めたゲーム制作の過程でCGにのめりこみ、デザイナーを志望するようになりました。その後、ゲームソフト開発会社にデザイナーとして転職しました。そこで経験を積んだ後、CG映像業界へ移り、CM・TV映像・ゲームムービーなどの制作にも携わり、フリーランスも経験しました。2006年に任天堂にステージデザイナーとして入社し、現在入社18年目、業界歴28年目です。現在は[地形テクニカル]のCGスペシャリストを務めています。
高雄氏
任天堂株式会社 企画制作本部 企画制作部 CGスペシャリスト[ライティング・グラフィックス]
高雄氏(以下、高雄):学生時代は実写映像とCGの両方に興味があったので、芸術工学部でCG映像を専攻し、実写とCGを合成したプリレンダリングの映像制作をしていました。在学中からMayaを使い、MELスクリプトで生成したアニメーションを映像に取り入れたりもしていました。もともとゲームが好きで、リアルタイムレンダリングにも興味があったので、2010年に任天堂に新卒入社しました。現在入社15年目で、[ライティング・グラフィックス]のCGスペシャリストを務めています。
CGスペシャリストの役割
CGW:3分野のCGスペシャリストの具体的な役割も教えてください。
山上:[キャラテクニカル]は、主にキャラクターモデル制作から、リグのセットアップ、アニメーション制作にまたがる領域を担当しており、具体的には以下のような作業を担います。
・MayaなどのDCCツールのカスタマイズ
・リグのセットアップ、および内製リグシステムの開発
・ワークフローの構築と改善
・ツールやフレームワークの提供
・デザイナー向け技術資料の作成と共有
・技術難度の高いアセットの作成
担当領域にこだわらず、組織全体、あるいはチームで必要とされることには柔軟に対応するよう心がけています。そのためにはデザイナーの要望を聞くだけでなく、奥にある真意まで理解し、本当に必要な対応をすり合わせ、最善の対応を提供することが重要です。年齢や役職を問わず真摯に話を聞き、小さな事案でも丁寧に対応し、「この人なら上手くいく」と思われるような信頼関係を築くことも意識しています。
白井:[地形テクニカル]は主にステージデザインの領域を担当しており、デザイナーの視点でワークフローやアートの課題を抽出し、技術を使って解決していきます。具体的には以下のような作業を担います。
・DCCツールを用いた制作環境の整備と改善、ツール開発
・ワークフローの構築と改善
・技術案件の仕様策定、およびプログラマーへの実装相談
・技術難度の高いアセットの作成
・ライティングの調整、および特殊表現マテリアルの作成
・デザイナー向け技術資料の作成と共有
より多くのお客さまに満足いただけるゲームをつくるには、あらゆる面から磨き上げる時間が必要です。そこに集中できるクリエイティブな時間を最大化するためには、効率的で調整・変更に強いロバストなワークフローや、手戻りの少ないつくり方の確立が不可欠です。また、デザイナーの作業のやりやすさも重視しています。プログラマーとデザイナーの間に立つことも多いため、双方のやりたいことや、問題に感じていることをしっかり理解して、解決につなげていくことも心がけています。
高雄:[ライティング・グラフィックス]は主にライティングとグラフィックスの設計を担当しており、アセットの見映えを大きく左右する役割だと言えます。ゲーム全体のビジュアル品質を統一させる役割も担っており、ステージのライティングを調整する際には[地形テクニカル]のCGスペシャリストと連携しながら進めます。具体的には以下のような作業を担います。
・グラフィックス仕様をプログラマーと共に検討
・ライティングの調整
・マテリアルの運用、シェーダ作成
・アセット調整環境の整備
・デザイナー向け技術資料の作成と共有
ライティングとグラフィックスの設計では、遊びやすさ・ビジュアル品質・作業コストの3要素がトレードオフになるケースが多く、そこが悩みどころです。そういうときにはゲーム制作全体を俯瞰して、グラフィックス担当プログラマーと共に最適な解決策を探るようにしています。ゲームの仕様・ストーリー・各アセットの意図を理解した上で、遊びとビジュアルを統合したゲーム体験全体の向上につながる解決策を見つけることが重要です。
『TotK』でのCGスペシャリストの仕事
CGW:『TotK』で皆さんが担当した、具体的な仕事内容もお聞かせください。
山上:『TotK』のプロジェクトでは、龍などの高難度リグのセットアップを担当しました。私は前作の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、『BotW』)が好きで任天堂に応募したので、『TotK』に配属されたときは本当に嬉しかったです。『TotK』ではリグとアニメーションに関わる人たちが集まる会議を高頻度で開催しており、龍のリグに関しては、プロジェクト序盤に『BotW』で出された課題や要望を洗い出し、アップデートプランを話し合いました。それを基に龍のリグを大幅に更新し、会議でフィードバックを受けてはさらに更新するサイクルを繰り返しました。
山上:この龍をはじめとするボスキャラクターなどには、当時の社内共通の内製リグシステムでは実現できない複雑な要望が数多く出されたので、プロジェクト独自のカスタム機能を実装していきました。しかし、単純なカスタマイズだけでは既存機能とのバッティングによりデータのフローに支障が出たり、ツールが使えなくなったりといった問題が発生しました。そこでプロジェクトごとに独自のカスタマイズができるように、内製リグシステムの機能更新を行いました。
『BotW』ではタイトル専用のリグシステムを使っていましたが、『TotK』では社内共通の内製リグシステムへの変更が決まったので、異なる仕様のリグ間で主要なアニメーションを移植して、前作の資産を有効活用することにもなりました。アニメーションはベイクしないなど、様々なハードルがあったのですが、キャラクターデザイナーやプログラマーの協力にも助けられ、無事に移植システムを構築できました。その後は別タイトルでも同様の移植システムを使うようになり、プロジェクトを横断して共通の内製リグシステムを活用するながれもできてきました。
白井:『TotK』の洞窟の制作時には、事前にステージデザイナーやプランナーが制作したラフな地形モデルを基に、岩壁の凹凸、鍾乳石モデル、マテリアルなどをHoudiniを用いてプロシージャルに自動生成しています。しかし、単純にプロシージャル生成を適用するだけでは求めている地形にはなりません。例えば遊びの邪魔になる場所に鍾乳石モデルが配置されてしまう場合もあり得るので、Houdini Engineを介してパラメータやマスクによって生成結果をコントロールできるしくみをつくりました。
白井:本システムの制作時には、根幹の設計や技術難度の高い部分はプログラマーが担当し、私は各洞窟のデザインに合わせた生成処理の構築や、ステージデザイナー、およびプランナーとの調整を行い、運用のためのガイドラインを取りまとめました。本システムの導入により、レベルデザイン変更に伴う地形変更の工数を大幅に圧縮し、量産に強いワークフローを整備することができました。
高雄『TotK』では、空や地底、古代世界など、新たに追加された環境の設計を担当しました。特に地底は遊びと環境が密接に関係しており、最初はほぼ暗闇の空間に、少しずつ明かりを足しながら探検していきます。暗闇の中を探検するという遊びを実現するためには、最初は見せる情報を可能な限り絞り込み、暗闇の中でゲームを成立させる工夫が必要でした。
そのため、明かりに照らされたときの見え方や見える範囲について、ステージデザイナー、エフェクトデザイナー、プランナーと相談し、アートディレクターや、グラフィックス担当プログラマーと一緒に、遊びとしても、画としても成立する見せ方を探りました。
CGW:『TotK』の地底を私がプレイしたときにも、最初はほぼ暗闇なのに、遠くに見える光だけで様々なことが想像できました。自分が通った跡をふり返ると灯りの道ができていて、これまでの道程が思い返されたりもしました。情報が絞り込まれたゲーム画面にも関わらず、素晴らしい体験ができて驚きました。
プロジェクトへの関わり方
CGW:デザイナーの中での、CGスペシャリストの位置付けについても教えてください。専門チームがあって、そこからプロジェクトに配属されるのでしょうか?
井上:基本的に、ゲームソフトの制作に関わるデザイナーは、各プロジェクトに配属されます。CGスペシャリストも同様で、いちデザイナーとしてプロジェクトに配属されます。
ゲーム制作のプロジェクトは、コアチームにより、ゲームの遊びの内容を決めることから始まります。遊びの基礎が確定し、実制作が始まる段階で、CGスペシャリスト配属の要望がきます。ワークフロー構築や、画づくりを進めるためにはCGスペシャリストが不可欠なので、早い段階でプロジェクトに参加するケースが多いです。
量産が本格化すると、さらに多くの職種が集まり、プランナー、プログラマー、サウンド、デザイナーが一丸となってゲーム制作を進めます。デザイナーの中には、CGスペシャリスト以外にも、ステージデザイン、キャラクターデザイン、UI/UXデザイン、エフェクトデザインなどの職種があります(※2)。各プロジェクトの配属メンバーの席は近くに集められるので、職種の垣根を越えて密にやり取りできます。
ほかの職種と同様、CGスペシャリストもプロジェクトの一員として配属されるため、制作中のゲームを日々プレイして、どんな遊びの提供を目指しているのかを体感します。そうすることでプロジェクトの目的を理解し、「目的」と「技術」の順序が逆にならないよう心がけています。また、完成直前まで問題が発生する可能性もありますし、デバッグも大事な仕事なので、CGスペシャリストはなるべくゲームの完成を見届けるまでプロジェクトに関われるようにしています。ほかのデザイナーと同じように、商品完成に責任をもってほしいですし、そうすることで達成感も大きくなると考えています。
山上:[キャラテクニカル]のCGスペシャリストは、キャラクターデザインやリグの担当者と一緒に仕事を進めます。キャラクターデザイン工程の序盤では、プログラマーの要求仕様や、デザイナーの作業環境に対する要望を聞き取り、仕様を満たしつつ、作業効率を高めるワークフローを構築します。作業開始後は、データ更新や最適化などの自動化、ワークフローを円滑に進めるための環境整備を行います。
『TotK』のような大規模プロジェクトのリグ工程では、リグセクションの取りまとめ、セットアップ、リグの改修などを担当します。キャラクターデザイナーの要望に応じて、リグの機能を最大限に活用できる周辺ツールの作成を行なったりもします。新しいモジュラーリギングのしくみをゼロから構築するなど、複数のプロジェクトを横断してリグやアニメーションの土台部分の整備を行うこともあります。
白井:[地形テクニカル]のCGスペシャリストは、ステージ制作の作業開始前に、負担がかかる反復作業や技術的な懸念についてのヒアリングを行い、作業効率を高めるサポートツールを提供したり、プログラマーと実装の相談をしたりします。プロシージャル生成を採用する場合は、デザイナーの要望を取り入れながら自動化する範囲を検討します。プランナーとの仕様のすり合わせも行い、レベルデザインの意図をどこまで地形に反映させるのかを確認します。
地形は画面に映る面積が広いため、ライティングとの関わりも深いです。ライティングシステムは[ライティング・グラフィックス]のCGスペシャリストとグラフィックス担当プログラマーが設計しますが、ライティングの量産作業は[地形テクニカル]のCGスペシャリストが担当する場合もあります。地形の中にアニメーションを伴うプロップがある場合は、リグやアニメーションの担当者との連携も必要です。破壊や、水、マグマなどの特殊表現が必要なアセットの場合は、エフェクトデザイナーとも連携します。
高雄:[ライティング・グラフィックス]のCGスペシャリストの仕事は、ゲームの遊びとビジュアルに大きく影響するため、多くの関係者と協力しながら進めます。遊びの面では、ディレクターやプランナーと意見交換を行い、見えるべきものや、その見え方を調整します。ビジュアルの面では、アートディレクターや各デザイン担当者と密に連携します。『TotK』のプロジェクトでは、アートディレクターと定期的な情報共有をしつつ、座席も隣だったので、密にビジュアルの方向性の相談などを行いながら進めました。
ライティングとグラフィックスのシステムは、グラフィックス担当プログラマーが作成するため、デザイナーの要望や必要なツールをCGスペシャリストがとりまとめ、プログラマーと相談しながら整備を進めます。ゲームのグラフィックスは、現実を再現すれば良いわけではなく、遊びやすさを実現するための「嘘」をつく必要があります。『TotK』のグラフィックスはトゥーン調とリアル調が混在していたので、その調和も図りつつ、遊びやすい画に仕上げるために、アートディレクターやプログラマーと一緒に知恵を絞りました。
CGスペシャリストの採用と育成
CGW:CGスペシャリストとして、どのような人を採用しているのでしょうか?
井上:キャリア採用に関しては、ゲーム業界はもちろん、CG映像業界出身の人も入社しています。弊社のタイトルは、ビジュアルもゲームジャンルも多様で、規模も様々なので、やり方にこだわらない柔軟性のある方ほど活躍できる幅が広いです。様々なセクションのハブのような立ち回りも求められるので、難しい技術をかみ砕いて説明できる力も必要です。教えることが好きな方は相性が良いと思います。入社後は社内のワークフローを把握するための研修を行い、ベテランCGスペシャリストをメンターとして割り当て、スムーズに現場に馴染めるよう積極的にサポートします。研修後はプロジェクトに配属し、どんどん実績を積んでもらいます。
新卒採用に関しては、3DCG経験者であることは必須としていますが、これからどれだけ伸びそうかというポテンシャルを重視しています。入社後は新人向けの研修を実施し、プロジェクトには「師匠」となる先輩CGスペシャリストと一緒に配属します。加えて、アセット制作業務も経験することで、デザイナー目線をしっかり身に付けられるようにもしています。
いずれにせよ、現場経験の積み上げを重視しつつ、技術的なチャレンジや、新しい技術習得もしていける配属を意識しています。
CGW:山上さん、白井さん、高雄さんは、メンターや師匠として後進の育成も担う立場ですね。ご自身のキャリアや、後進の育成についての考えをお聞かせください。
山上:自分でデザイン業務を行うことは少なくなりましたが、今でも「自分はデザイナーだ」というマインドをもっています。これはとても大事なことで、後進にもそういったマインドをもってほしいと考えています。技術による問題解決を期待されることが多い立場ですが、視野が狭いと独善的な提案をしてしまう場合もあります。技術力を磨くだけでなく、デザイナーに寄り添った制作環境やワークフローをつくれるようになってほしいと思っています。
白井:私も同様に、心はデザイナーのままです。今はCGスペシャリストの仕事に集中していますが、機会があればデザイナーの仕事もしたいと思っています。自分で手を動かせば、どんな需要があるかを実感できますからね。新卒採用者の育成でも、アセット制作業務をきちんとこなしつつ、技術力を発揮する仕事も経験できるようにバランスを考えています。
高雄:[ライティング・グラフィックス]の仕事では、ゲーム全体を俯瞰し、何が重要で、どのようにバランスをとれば良いかを考えることが求められます。プロジェクト全体を見わたし、どんな人たちが、何を考え、どのように動いているのかを理解できるようになって、「ようやく基礎が身に付いてきた」と言える段階に上がれます。周囲から信頼されるCGスペシャリストになるためには、ほかセクションの事情もふまえて、コミュニケーションをとりながら進めることが大事だと思います。
CGスペシャリストの仕事の魅力
CGW:インタビューの最後に、CGスペシャリストの仕事の魅力を教えてください。
山上:この仕事は、自分の提供するソリューションによって、デザイナー全員の仕事の効率化や品質向上に貢献できるので、とても大変ですがその分楽しさもひとしおです。職場はフラットな雰囲気もあり、年齢や役職に関わらず意見を求められます。私たちも能動的に提案・行動することを意識しています。
白井:毎回新しい挑戦があるので、飽きずに仕事に臨むことができます。職種やセクションの垣根が低いため、手を挙げれば挑戦させてもらえる環境も魅力的です。
高雄:[ライティング・グラフィックス]はデザイナーがつくったアセットを預かるような立場なので責任を感じますが、画づくりに大きく貢献できるところには、プレッシャーと同時に面白みも感じます。弊社は遊びを軸にゲームをつくっているので、毎回新しい挑戦があります。そんな環境の中で、世界市場に向けたゲームづくりに携われることは、とても刺激的です。
井上:CGスペシャリストは、ツールをつくったり、制作環境を整備したりする仕事を担うことが多いので、ほかのデザイナーに比べると、ゼロからモノをつくる機会は少ないです。しかしゲーム制作に限らず、プロが仕事をするときには、「道具」や「設備」がとても重要になりますよね。CGスペシャリストの仕事は、「道具」や「設備」を整えることであり、デザイナーのアウトプットに「掛け算」のように作用します。その結果、アセットをより多く、より早く、より見映え良くつくれるようになり、ゲームを磨き上げる時間が最大化され、ゲーム全体の魅力がアップします。とてもやりがいのある仕事だと日々実感しています。
TEXT_痴山紘史/Hiroshi Chiyama(日本CGサービス)
EDIT_尾形美幸/Miyuki Ogata(CGWORLD)