AMD Ryzen™ 7000シリーズ搭載! ZBrush動作確認済みVillard岡田恵太氏コラボレーションPCの使用感をレビュー
今秋に発売され、その着実な進化によりますます高評価を集める「AMD Ryzen 7000」シリーズ。その最新AMD CPUを搭載し、さらにMaxonの監修を経てZBrushの動作検証済みという"導入してすぐ不安なく使える"クリエイター向けPCがTSUKUMOより登場。しかも、ZBrushの第一人者であるVillard 岡田恵太氏とコラボレーションしたスペシャルモデルだ。
最新のAMD Ryzen 9 7950Xを搭載した本モデルは、まさにクリエイター向けのオールインワンモデル、ワンストップPCと言える仕上がりとなっている。CPU、メモリ、GPU、データドライブといった基礎スペックはバランスよく高性能に揃えられ、ハイエンドなスカルプトモデルで活躍するVillard岡田氏も納得するオペレーション速度を発揮。とにかく制作にだけ集中して、自分の成長に投資したいクリエイターにとっては、うってつけのモデルと言えるだろう。
本記事では岡田氏自身にそのPC設計のコンセプトを伺いつつ、そのハイクオリティな実際の作例モデルを用いた実機検証の様子をお伝えしていこう。
デジタルスカルプターとして
国内外で活躍の場を広げる岡田恵太氏
CGWORLD(以下CGW):今回は、岡田さんのコンセプトモデルPCが発売されるということで、どうぞよろしくお願いします! まずはお仕事、作品制作などの近況からお聞かせ願えますか?
Villard岡田恵太氏(以下、岡田):よろしくお願いします。直近だと、そうですね……、既に世に出ているものだとフロム・ソフトウェアさんの『ELDEN RING』ではモンスターや武器などのモデル制作をやらせていただきました。ただ、開発期間が長かったので、それが近況かと言われれば、実際に動いていたのは少し前になりますかね。より直近のものであれば、カプコンフィギュアビルダー クリエイターズモデルの『モンスターハンター』シリーズで、「爵銀龍(しゃくぎんりゅう) メル・ゼナ」のフィギュア原型、そのほかNetflixで配信されているフルCGドラマ『バイオハザード: インフィニット ダークネス』などにも参加しています。
▼プロフィール
岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。
株式会社Villard代表取締役。 国内外の造形に関わる仕事をメインに活動しており、カプコンフィギュアビルダー クリエイターズモデル『モンスターハンター』シリーズのフィギュア原型や『バイオハザード:インフィニット ダークネス』『ELDEN RING』を始め、映像やゲーム、CMなどの主にクリーチャーのコンセプトアート、モデル作成なども多数手がける。
CGWORLD.jpにて「Villard スカルプティング・ラウンジ」連載中。
www.artstation.com/artist/yuzuki
www.villard.co.jp
CGW:直近の活動としては、ゲーム関連が中心となるのでしょうか?
岡田:いえ、特にそう決めているわけではないです。いずれ世に出てくるとは思いますが、映画のコンセプトから実データ制作までをやっていたりもします。有機的なモデル制作を中心として活動している、といった感じですね。
CGW:躍動感あるつくり込まれたクリーチャーモデルが目を引く岡田さんの作品群ですが、これらのモデルの制作時にはマシンの作業負荷はどのくらいになるのでしょう? また、重いと感じる作業はどういった工程でしょうか。
岡田:実はZBrush単体で考えれば、そこまで作業負荷は高くないんです。ノートPCで動かすこともできるくらいですから。ただし、制作の工程がZBrushだけで完結するわけではありません。Substance 3D Painterによるテクスチャ作業やMayaでの調整、レンダリング作業など、フィニッシュワークになるにつれて重くなっていく。クリエイター向けのデスクトップPCとしては、ZBrushだけでなくこれら一連の作業を1台でこなせないと意味がないかな、とは思います。
普段使用しているRyzen Threadripperにも劣らない
Ryzen 9 7950X搭載マシンの実力
CGW:それを踏まえての、今回のコラボPCのスペック構成になっているわけですね。
岡田:ですね。CPUが速いことはもちろん、待ち時間を減らしストレスなく作業を行うためにもメモリは多く積みたい。そして、Substance 3D Painterが動くだけのグラフィックスパワーも必要。この検証機はAMD Ryzen™ 9 7950Xを搭載したモデルになるのですが、ZBrushのモデル制作においては普段自分が業務に使っているPCと比べてもほぼ変わらない、作業内容によっては速く感じるところもある、といったフィーリングでした。
CGW:普段使われているPCのスペックはどのくらいなのでしょうか?
岡田:CPUはAMD Ryzen™ Threadripper 3970X、グラフィックスにGeForce RTX3090を2枚差しで使っています。ワコムの液晶タブレット含め、モニタ3画面構成といったところですね。
CGW:それは100万円を余裕でオーバーするモンスターマシンですね……。それと比べて、今回のモデルでも体感値で速いところがあるということでしょうか。
岡田:さすがにグラフィックスについては、スペックも搭載している枚数もちがうので、そこに大きく依存するSubstance 3D Painterの挙動については、同じというわけにはいきませんでした。ですが、ZBrushの挙動やMayaでの作業については、同じかそれ以上に感じるところがありました。CPUへの依存が大きい普段のPC操作やアプリケーションの立ち上げ、データの読み込み、UV展開やデータ作成、レンダリングといったところでは、こちらのほうが良いのでは? とも感じられるレベルです。今回、ワコムの液晶タブレットCintiq Pro 27を使用して検証しましたが、タブレットでの作業も非常にスムーズでしたね。
CGW:CPUについては、最新のRyzen™ 9 7950Xのほうが岡田さんのPCのThreadripperよりコアの動作クロックが高いこともあり、PC操作のキビキビ感は増しているのかも知れませんね。
岡田:使ってみての全体感としても、そういった印象でストレスなく使えましたね。Mayaの立ち上げなんかは、確実にこちらのPCのほうが速かったですし。普段の制作データをいくつかもち込んでZBrushでの制作、編集、書き出し、Substunce 3D Painterにもっていってデータ変換、などいろいろやってみましたが、一度もソフトが落ちることはありませんでした。重いデータを使ってオペレーションを速くすると、自分のハイスペックPCでも落ちることがあるくらいなので、このPCの安定性は高いですね。
CGW:岡田さんが普段使用するPCに搭載されたThreadripper 3970Xは、CPU単体でも30万くらいはしますよね。このTSUKUMOのRyzen™ 9 7950X搭載マシンは、PC全体で50万をやや超えるくらいの構成。それでいて、岡田さんのThreadripper搭載マシンを体感値で上回る部分すらある、というのはかなりのコストパフォーマンスを感じますね。もちろん、Threadripperは物理的に圧倒的なコア数を誇るので、マルチタスク業務や負荷をかけ続ける作業では優位なのですが。そういえば、岡田さんは以前からAMD CPUを使われていたのですか?
岡田:いえ、ちょうど今使っているThreadripper搭載PCからです。機材更新の際に、ちょうど「Ryzenがすごくいいぞ」、という話をよく聞くようになって。新しいものを試すのも好きですし、そのタイミングで以前のIntel CPU機から切り替えました。それから業務でずっと使っていて、速いし安定感もあるしネガティブなことは一切なかったので、AMDブランドに対する信頼感もあるんですね。そういうこともあって、今回のコラボの話も喜んで引き受けた感じです。
CGW:次のPC更新タイミングでは、AMD Ryzen™ 7000シリーズも視野に入ってきそうですね。
岡田:まだもうしばらくは今のマシンでいけそうですけどね(笑)。ただ本当に、このCPUに切り替えても苦にならないレベルの体感値なので、何も考えずに、ストレスなくこれくらいの作業ができるPCが簡単に手に入るというのは、すごくいいですね。
"好きなこと=作ること"をすぐに始められる
アナログ畑のクリエイターにこそオススメしたい
CGW:あとは結局、どこを重視するかですよね。絶対的な処理能力とマルチタスク性でCPUコア数を重視するのか、オペレーション時の体感動作でCPUクロックを重視するのか。それとも、もっと高負荷時の描画性能を求めて、グラフィックスを突き詰めるのか。
岡田:そうですね。ただ、超高解像度の3DゲームやリアルタイムVRを常時稼働させたり、制作したりするわけではないですし、自分がやるようなコンセプトワークからモデル制作、そのフィニッシュまでといった業務ならひと通りこなせる、このTSUKUMOのモデルのバランスはすごくいいのでは、と。自分の若い頃にはこういったクリエイター向けに最適化されたモデルってあまりなかったと思うんです。実際、自分の最初の作業PCはカスタムしてくれるショップに行って、相談しながら組んでもらいましたね。そのときの構成が、やっぱりだいたい50万くらい。
CGW:やはり岡田さんも、最初からそれくらいの投資をPCにされていたんですね。
岡田:ZBrushのようなアナログ的な感性での制作をしていくのであれば、ストレスなく作業に集中できる最低限のスペックは絶対必要で、それってやっぱりこれくらいの価格帯なのかなと。
CGW:デジタル作業のPCといえど、岡田さんはアナログ感覚を大事にされているのですね。
岡田:もともと、自分がそういう人間なので……。絵を描いたり工作したりをずっと。それで思うのが、そうした絵画や彫刻といったアナログな美術制作には、思ったことを実行するまでに待ち時間がないんですね。デジタルは、本当にいろんなことができて可能性が広がるけど、待ち時間がある。これを極限までなくすことが、アートにとっては非常に大事だなと。だからその"待ちのストレス減少"を実現できるのであれば、可能な限り良い環境に投資すべきだろうと思っています。自分もいろいろ制作環境に投資はしてきましたが、それでも結構我慢しながらやってきました。若い頃にこれくらいのスペックのPCがあればなあ、とはどうしても思いますよね(笑)。
CGW:このPCに対しての最大の誉め言葉ですね(笑)。改めてマシンの監修者としてまとめると、どんな人に使ってほしいPCでしょうか?
岡田:そうですね……。ゲームクリエイターを志すような、最初からハードウェアに詳しい人であれば、自分でPC環境はなんとかしちゃうと思うんですが、アナログ畑のクリエイターってそういうのに疎いところがある。これは、そういう人にこそ使ってほしいPCかなと思いますね。アナログでの制作の可能性を、デジタルの領域を使うことで広げられる。その一歩目として、ストレスなく作業ができる検証済みのPCが、これならポンと一式揃った状態で売っている。余計なことを考えなくても、"好きなこと=作ること"だけを買ってすぐに始められる。"好きだから、やる"は強いですよ。「新しいおもちゃが手に入ったから遊ぼう!」が勉強になる、そんな風に使っていってもらえれば、どんどん新しい優秀なクリエイターも誕生していってくれるのでは、と期待しています。
TEXT_高木貞武 / Sadamu Takagi
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)