アニメ製作主幹事を務める「100studio」が100名規模で大型募集。 Blenderをメインツールとした劇場作品やゲーム案件が複数始動。
アニメーション製作やコンソールゲーム制作、音楽コンテンツ制作などグループ内に40社以上のエンターテイメント企業をもち、360度のIPプロデュースを行なう株式会社HIKE。同社のアニメーション事業部が運営するデジタルアニメーションスタジオ「100studio(ワンダブルオースタジオ)」がCGアーティストを100名規模で募集している。
2021年に設立された新しいスタジオだが、瞬く間に規模を拡大し、現在は2024年の公開に向けてオリジナル劇場作品をBlenderで制作中だ。このほかにも2024年春放映予定のTVアニメ「この世界は不完全すぎる」など多数のタイトルが進行中で、2025年までに200名規模を擁するスタジオになる見通しだという。
スタジオ設立はたった二年前だが、製作の部分からアニメーション作りに携わることができる。他のスタジオにはない100studioの魅力や募集の背景について、スタジオ代表を務める堀口広太郎氏、副代表の森 弘光氏、CGディレクターの内藤博高氏に聞いた。
2021年創設、製作出資・元請け制作多数進行中
CGWORLD(以下、CGW):まずは100studioの紹介とともに、最近の手がけたタイトルについて教えていただけますか?
堀口 広太郎氏(以下、堀口):100studioは株式会社HIKEのIP事業本部に属しているデジタルアニメーションスタジオです。HIKEは2023年2月に3社が合併してできた会社なのですが、100studioはそのなかのCREST社のもと、2021年5月に設立されました。私はスタジオの立ち上げ時から代表として関わり、(副代表の)森とともに運営を行なってまいりました。
堀口:私自身はプロデュース業務も行なっており、TVアニメ『セブンナイツ レボリューション -英雄の継承者-』(2021)では製作委員会の幹事会社としてプロデューサーを担当しました。TVアニメ『怪人開発部の黒井津さん』(2022)、『異世界召喚は二度目です』(2022)、『くまクマ熊ベアーぱーんち!』(2023)にも幹事会社ではありませんが、音楽窓口等で参加しております。Netflix作品『ロマンティック・キラー』(2022)ではグループ会社のデルファイサウンドと連携し音響コーディネートを担当しました。
『怪人開発部の黒井津さん』、『異世界召喚は二度目です』は製作委員会において音楽窓口で参画。HIKEクロスメディア事業部の音楽プロデューサーがオープニング/エンディング・テーマや劇伴音楽の担当をしております。
堀口:このほかにも北海道出身・在住のアーティスト「nonoc」(ののっく)さんのMVを4作品、企画・プロデュースしました。この4作を手がけたina監督はBlenderを使用されるので、企画の段階からBlenderを念頭に置いていました。
堀口:100studioでアニメーション制作をしている作品は、現時点でまだタイトルを明かせないのですが、BlenderをメインDCCツールとしたフルCGのオリジナル劇場アニメと、2Dを主体にしたTVアニメが進行中です。また、企画段階を含め複数の作品のご相談をいただいており、その中には2028年発表予定の作品まであります。
CGW:今回の求人は現在動かれている、劇場作品とTVシリーズ作品のスタッフ・CGアーティストの方でしょうか?
堀口:主にゼネラリストの方を募集しています。この両作品やその先のご依頼本数を考えると、2025年までに200名規模のスタッフを必要としています。長期的に関わるお仕事の引き合いを数多くいただいており、それが採用の規模を拡大している背景です。
現在、100studioにいるのはまだ50名ですが、採用活動を進めていて、2024年の前半には100名に達する見通しです。社員採用だけでなく週4~5日従事いただくようなフリーランスも含め広くスタッフを募っております。
CGW:堀口さんは長らくCGアニメ業界でTVアニメ作品や遊技機、劇場アニメ作品のプロデューサーを務めてこられましたが、HIKE・100studioになって、お仕事に変化はありましたか?
堀口:変わりましたね。製作委員会幹事業務、制作元請けを行なうようになりました。つまり、自社で出資製作から実制作までを一気通貫で行うのがこの会社です。それに応じてプロデュース業務もより多岐にわたるようになりました。
こうした動きは現在、東映アニメーションさん、トムスエンターテイメントさん、バンダイナムコフィルムワークスさんなど、限られた会社しか恒常的に行えていません。弊社はそれらの会社のやり方を目指し、業務を進めております。
CGW:親会社はポールトゥウィンホールディングス社で、さらに広範なIPプロデュース業務を行なっています。グループとしての強みを活かした動きについてはいかがでしょうか?
堀口:ポールトゥウィンホールディングスとも素晴らしい連携をとれています。海外のゲーム会社を含め、ゲームの映像制作受注の橋渡しをしていただきました。その中には、グループ会社のアクアプラス(『ToHeart』、『うたわれるもの』など)もあります。連携によりゲーム作品のPVも制作しました。
ほかにも『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』(2023/iOS、Android)のファイナルトレーラーのアニメーションパートを制作したり、現在もまだ公表できないタイトルの映像制作を行なったりしています。
AI導入も早く業務環境の構築にスピード感 エンタメ経費補助もあり
CGW:つづいて、プロデューサーの森さん、CGディレクターの内藤さんに、これまでのキャリアや入社の決め手になった魅力を教えていただければと思います。
森 弘光氏(以下、森):僕は実写の映像制作会社を経て、大手CGスタジオを中心に約10年間勤め、アニメーションプロデューサーを経験したあと、HIKEに入社しました。大手には大手なりの良さもありますが、業務を進める中での改善点や、効率化をしたほうが良さそうなところも見つかって、そのあたりをゼロから構築できることに魅力を感じスタジオの立ち上げに参加しました。
内藤:ここはできたてのスタジオですから、そのあたりの裁量も自由なんですよね。僕も大手のCGスタジオで20年間CGアーティストやディレクターを務め、フリーランスを経て入社をしました。
CGW:おふたりとも大手CG会社から転職をされてきて、おっしゃったような裁量性の高さや、より効率的なパイプライン構築ができる点に魅力を感じているんですね。
森:そうですね。内藤と僕とそれぞれが経験した良い部分を組み合わせた制作フローやパイプラインをつくりあげていけるのは、100studioの大きな魅力だと思います。
内藤:連絡事項や物ごとを決定するスピードの速さに驚きました。従来の感覚ですと数日はかかるだろうなと思ったものが、1日もかからずに決定することが珍しくありません。
森:承認フローが複雑ではない点も要因だと思います。スタジオの代表(堀口氏)と副代表(森氏)、そして現場の距離が近いので、すぐに判断ができます。社内では堀口に直接意見を聞きに行けますし、僕たちがスタジオを不在にしている際はチャットツールやテレビ通話も活用してコミュニケーションを密に行なっています。
CGW:マネジメント層がデザイナー出身なので、現場の状況を把握してもらいやすそうですね。
森:そうですね。堀口も僕も現場を経験しているので、現役のアーティストやクリエイターの大変さはわかっているつもりです。
内藤:2人とも作業工程を理解していますし、ソフトにも詳しいんですよね。クリエイターと普通に会話しているような感覚です。
堀口:……と、立ててくれましたが、僕自身はクリエイターらしくふるまわないように頑張っています(笑)。というのも、実際につくるのは現場の皆さんなので、その意見を傾聴して、任せるところは任せるようにしています。
CGW:実際の100studioの評価制度、現場の環境や福利厚生はいかがでしょうか?
堀口:評価制度は相互評価を採り入れています。それも自分がプロデュース担当している作品に対して行なうので、近い距離で仕事ぶりをよく見た上で適切に評価できるかたちになっています。社内の環境づくりでいえば、CGクリエイターはモニターが2枚と板タブが標準です。機材やソフトウェア、プラグインなどはクリエイターの意見を細かく聞いた上で最適なものを揃えるようにしています。
森:「MOVE Ai」というAIを使ってモーションキャプチャを行うアプリを導入しましたね。テスト段階ではありますが、新しいサービスにも積極的です。とくに最近のAIの分野はCGとの親和性が高く、HIKEの代表(三上政高社長)も力を入れていますので、推進しています。
内藤:福利厚生も大手スタジオと遜色ないものだと思います。
森:そうですね。弊社の特徴といいますと、業務に関わるエンターテイメントの費用に対して、会社から補助が出ることでしょうか。
CGW:それはプライベートで使うものに対して?
森:はい。本やゲーム本体やソフト、あとはイベントのチケットとか。上限はありますが、そもそも会社の業務として扱う範囲が広いので、該当する分野はかなり広くなります。
堀口:僕は韓国語の学習費用で申請しました。技術書については、もちろん一般的な経費で全額を会社が負担します。
CGW:それは素晴らしいですし、モチベーションにも繋がりますね
誰でも参加できる企画会議を毎月開催 社長直接決裁の企画フォームも用意
CGW:ほかにも100studioさんは斬新な企画会議をされているとうかがったのですが、詳しく教えていただけますか?
堀口:「企画トレーニング会議」を毎月1回、開催しています。これは業務委託の方を含め、弊社で働くすべての方を対象にした企画提案の会で、アニメ化企画など弊社の事業として実現したいことを、5分以内で行なうというものです。
CGW:たとえばHIKEで全社的に制作・プロデュースしてみたい作品を、100studioのCGアーティストの方がプレゼンするというかたちでしょうか?
堀口:はい。これは元来、B to Cビジネスのイメージを皆さんにもっていただくことを目的としたもので、そのトレーニングなんです。ご自身の所属とは別の部署の企画でもOKです。「実際にビジネスにしなければいけない」といったようなプレッシャーのあるものではなく、コンテンツ紹介みたいなものでも結構です。
これは評価において加点ポイントとしています。出席しなかったからといって減点にはなりません。中には毎回出席するスタッフもいて、企画書の内容やプレゼンの手法、ツールなど僕自身も参加していてとても刺激になっています。
CGW:実際にこの「企画トレーニング会議」から世に出たものは現時点でありますか?
堀口:残念ながら、現時点では世に出たものはありません。しかし、この会議で提案され、権利元が開くコンペに参加した企画はあります。企画の傾向として、人気ある原作作品のアニメ化だったりと、ユーザー目線で上がってくる企画が多いですね。
ただ、そうした競争率の高いところに割って行くので、現実として世に出る機会が少ないことが課題としてあります。そこで6月からは新たに、実現可能な企画に対して、一定の予算を会社から支給する取り組みも始まりました。
森:こちらは発表やプレゼンではなく、社内にフォームがあってそこから出したものをHIKEの代表が読んで、即時決裁するというものです。
堀口:たとえばミュージックビデオの企画とか、VTuberをオリジナル楽曲でデビューさせようとか。このあたりのスピード感は代表の旗振りに拠るところが大きいですね。
CGW:さらに円滑に、モチベーションが高まる施策を次々と行なっているんですね。現在制作中のオリジナル劇場作品はBlenderを使用されているところも新しいなと感じました。
森:100studioがガチガチにMayaでパイプラインを組んでいるようなスタジオだったら、これは請けることができなかった案件だと思います。こうした柔軟性も100studioの価値のひとつかなと。ゼネラリストも多いですね。この作品はBlenderですが、別の案件には3ds Maxを使ったり、また別のところではMayaを使ったりします。
実際に、Mayaをバリバリ使っていたベテランの方に、劇場作品のリードアニメーターとして入っていただいてます。若手はDCCツールも仕事の内容も含め、様々なかたちで経験を積んでもらっており、モデラー志望者がレイアウトにチャレンジするなどしています。弊社にはそういう様々なことを試したり、挑戦したりするタイプの人が合っているのではないかなと思います。
環境づくりからスタジオの立ち上げに関われる貴重な機会に
CGW:募集されるCGクリエイターの方にはどんなスキルや経験があると望ましいと考えますか?
森:アニメ作品の経験があるとありがたいですが、ゲーム案件の受注も多いので、そちらに強い方も募集しています。そのあたりはご本人のやりたい方向性と評価、得意分野をヒアリングしながら決めていこうと考えています。
堀口:もちろん2Dのアニメーターさんも募集しています。100studioの半数は作画の方です。弊社の中には、最初はゲーム会社で3Dシミュレーションを用いたエフェクト制作を担当して、そのあと2Dのアニメーションを勉強して作画アニメーターになって、さらに3Dアニメーターに転向したスタッフもいます。いろいろな分野の経験があることが作品づくりに役立つのは間違いありません。
内藤:スタジオの規模的にもまだ完全分業になっていないので、ご自分の得意なスキル+他のパートも幅広く担当していただければと思います。制作拠点としましては、東京の西荻窪、大阪、福岡、台湾にスタジオを構えています。また、リモートでの業務環境もご自身の状況に応じて検討しています。
CGW:スタジオ間の転勤や配属先を変えるといったことはありますか?
堀口:我々から指定することはありません。ただ、例えば台湾出身の方にご応募いただいて、勤務地で台北をご希望されるなどの場合は、対応いたします。それは大阪や福岡でも同様で、意思確認をした上で決定します。
CGW:100studioでの業務はどんな経験になると思いますか?
堀口:まだまだ新しいスタジオですので、立ち上げに参加できることは貴重な経験になると思います。若手や中堅の方が、ご自身の方法を反映した上で業務に当たれることが一番の魅力に感じていただけるのではないでしょうか。
森:最初の話にも関わりますが、製作委員会に出資をして、元請けとして企画を立ち上げることができるのは、弊社ならではだといえます。実際にプロットや脚本を若手に読んでもらって、その意見をフィードバックさせたりと、企画の早い段階からコンテンツ制作のながれに関わることができます。
内藤:いろいろな経験をさせてもらえます。僕自身はCGディレクターで、これまでアーティストとしてのキャリアを積んできましたが、最近はマネジメントにも興味があり、それを森(副代表)に伝えたところ、毎週のマネジメント定例会議に参加させてもらえることになりました。
先程の「企画トレーニング会議」もそうですが、自分から発信すると、それを汲み取ってくれますので、さまざまなことに挑戦のしがいがある会社だと思います。
求人情報
<積極採用中!>
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▼コンセプトアーティスト
▼制作
TEXT_日詰明嘉 / Akioyshi Hizume
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada、山下一貴 / Itsuki Yamashita(CGWORLD)