MILLENNIUM PARADE、King GnuのMVを手がけるPERIMETRON・神戸雄平が原宿大型LEDビジョン用映像制作にロジクールの左手デバイスを導入!作業効率化はもちろん使って"楽しい"デバイス
MILLENNIUM PARADEやKing GnuといったトップアーティストのMVや『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』 メインビジュアルの制作を担当するなど、先鋭的な表現を手がける気鋭のクリエイティブレーベルPERIMETRONの神戸雄平氏。クリエイターとして、「創造性を邪魔しないストレスフリーなツールこそが作品の質を高める」と語る。
今回、PC周辺機器で定評のあるロジクールが発売したクリエイター向け左手デバイス「MX Creative Console」を神戸氏が導入。シームレスな作業環境と新たな“楽しさ”を提供するこのデバイスが、神戸氏のクリエイティブワークにどのように影響を与えるのか、その真価に迫るとともに、神戸氏のクリエイティブの源泉についても話を伺った。
ストレスフリーなツールが創造性を加速させる
クリエイターにとって、作業効率はもちろんのこと、些細なストレスが大きな障壁になることがある。神戸雄平氏は「ツール選びで重視しているのは、効率性だけではなく“触っていて楽しいか”という感覚」と語る。
「シンプルに楽しめないツールって、使っているとストレスになるんですよね。最初は気にならなくても、長く使っていると、その小さな不快感がクリエイティブの大きな障害になることもある。だからこそ、触ったときの直感的な操作性や、手に馴染む感覚はとても大切です。ストレスフリーなツールだと、作業がシームレスに進むので、自然と良い作品に繋がっていくと思うんです。」
クリエイティブワークで求められるのは、「集中力を切らさず、楽しみながらつくり続けられる環境」。その基準を満たすツールとして、今回ロジクールのクリエイター向け左手デバイス「MX Creative Console」を導入した。神戸氏はその操作性と“楽しさ”が、新たなクリエイティブの可能性を広げていると実感している。
King Gnu常田氏やOSIRIN氏との出会い
そんな神戸氏のクリエイションの源泉は高校生時代まで遡る。
「アートを意識し始めたのは高校時代、MVやCDジャケットのアートワークを意識し出すようになってから。専門的に学んでいたわけではなかったので、最初は広告会社で営業職をやっていました。でもやっぱり自分でつくりたいという想いが強まり、2015年にはテレビの編集プロダクションに入社し、Photoshopでテキストを加工してタイポグラフィをつくったり、After Effectsでエフェクトをつくったりと、そこで制作の楽しさを覚えたんです」。
そのうち、OSRIN氏や常田大希氏とも仕事を通じて縁ができた。その後3DCGにも興味を持ち、2018年に独立した頃Cinema 4Dを導入。常田氏主宰のクリエイティブレーベル・PERIMETRONに正式に加入したのもその時期だ。それ以降、神戸氏のメインツールは一貫してCinema 4D。そこである程度組み上げたシーンをPhotoshop、After Effects、Unreal Engineなどで仕上げるワークフローが中心となっている。
神戸氏はこれまで多数の作品制作に携わってきたが、特に思い入れが強いのはやはり最初の3DCGワーク。それがKing Gnuの『Flash!!!』MVだ。
「映像の冒頭と最後に、お面を被った全裸の人物が走ってくるという、マジで意味がわからないインサートが入るんですが(笑)、それをつくりました。結局CDジャケットのアートワークにも使ってくれて、気が狂ってるなと(笑)」。当該カットはCinema 4Dをインストールしてからわずか2週間程度で取り組んだもので、当時、WebやYouTubeなどに散在するチュートリアル動画を見ながら仕上げたのだという。
その約1年後にはmillennium paradeの『Veil』MVをフルCGで制作。
大型LEDビジョン用の映像制作に「MX Creative Console」を活用
今回神戸氏がMX Creative Consoleを活用したのは、The SHEL'TTER TOKYO 東急プラザ表参道原宿店に設置されている大型LEDビジョン用の映像制作。約1年前からシーズンごとに担当しているプロジェクトだ。
「今回の映像はクリスマス用というモチーフだけが決まっていて、あとは自由につくって良いという、クリエイターとしてはありがたい案件です。そこで、ぬいぐるみっぽい質感のテクスチャのキャラクターの可愛らしい映像をつくりました」。
制作ツールはやはりCinema 4Dが中心で、他はPhotoshopやAfter Effects、Premiere Proを使用。Cinema 4Dでの作業はアイデア出しを兼ねたモデリングからスタートする。
「Cinema 4Dの中でパスを描いて、押し出してパーツをつくりながら、フェルトを重ねるようにキャラクターやオブジェクトを組み立てるという、単純なつくりです。僕はあまり絵が得意じゃないので、モデリングをしながらレイアウトやバランスを整えていくやり方です」。
神戸氏の制作デスクには普段、ペンタブレット、マウス、キーボードが置かれているが、今回そこにMX Creative Consoleが追加された。これらのデバイスではできることが重複しているが、神戸氏はあえてそのままにしている。
「デバイスごとの役割をあまり区別していないというか、その時々で楽しいほう、やりやすいほうを選んでいます。だからMX Creative Consoleの追加は、新しい楽しみが増えたという感覚です」。
効率性だけでなく“楽しさ”もアップ
そして神戸氏は、実際にMX Creative Consoleをワークフローに取り入れてみて、思わぬ効果を体感したという。
「操作性や効率が上がるのはもちろんです。導入してみてまず思ったのは、『想像よりもずっとしっくり来る』という感覚です。高級感があって肌触りのある、それほどメカメカしくないデバイスなので、触りたくなるし、シンプルに“楽しい”(笑)。それがシームレスな作業感覚に繋がり、想像力と集中力を途切れさせない感じがすごくありました」。
MX Creative Consoleの実務的な性能も大いに評価する。キーボードショートカットを多用するという神戸氏は「まず、Cinema 4D用として、MX Creative Keypadにプロジェクト設定、レンダリング設定、レンダリングのビュー表示、タイムラインのドープシートとF-カーブモードの切り替え、MX Creative Dialpadにコマ送り(1フレーム進める・戻す)、再生まわりの機能は全てまとめました」と語った。
神戸氏は制作にペンタブレットを用いるため、左手では押しにくいキーコンビネーションを押す際にペンを置くというひと手間や、キーを忘れてしまうという小さなストレスを従来抱えていたという。
「だから、よく使うショートカットをアイコンという視覚情報の付いたボタンにまとめられるのはとても助かります。しかも、そのアイコンはカスタマイズできる。複数の機能を組み合わせたフローの場合は、実行しやすいようにボタンを左から右にと並べれば、漏れもなくなるので便利ですね。登録できるボタンも9個×15ページ分で最大135個もあるので、モデリングやアニメーションなど工程別に機能群を整理する使い方もできます」。
MX Creative Dialpadのデザインも気に入った神戸氏。「ボタンの配置が絶妙で。それぞれの棲み分けが良い感じにできているんです。各ボタンの機能を用途によって変更できますし。パネルは機能の使い分け、ダイヤルパッドは設定値の変更と役割分担ができていて、それがわかりやすい」。
アドビ製品とのネイティブ統合による直感的な操作性
今回活用したのはCinema 4DとAfter Effectsでの作業。MX Creative ConsoleはAfter Effectsを含むアドビの6製品についてはプラグインを介したネイティブな統合を実現しており、神戸氏はAfter Effectsでの操作性の向上に舌を巻く。
「調整レイヤーや平面レイヤーが一発で出せるんですよ! それに、制作中に右手を離さなくても良くなって。ありがたいですね。僕の場合、特にタイムラインを拡大縮小して1フレーム進めたり戻したりする操作を頻繁に行うんですが、もうペンを置いて操作する必要はなくて、ペンを持ったままサッとできる。これはすごいですよね。アドビ製品はガッチリ統合されているので、キーボードショートカットに馴染みがない人にもメリットが大きいと思います。買ってすぐ、必要な機能にボタンとダイヤルで直感的にアクセスできますから」。
開封から使用開始までの導線や設定環境も周到に整備
設定作業もスムーズに済んだという。「『Logi Options+』がとても良くできているんです。まずUIがすごくわかりやすい。何かを繋いだら自動的に出てきて、デバイスの設定を一元管理、切り替えもできる。設定内容がアカウントに紐付けられているので、他のPCでも同じ設定を使えたり、設定のエクスポートもできる。細かいところまで良くて、超楽しいです」。
タスクの自動化ツールや「Logiマーケットプレイス」が示すさらなる可能性
Logi Option+には、マクロ機能を拡張した「Smart Actions」という反復的タスクの自動化ツールが用意されている。神戸氏はガジェット好きな気質を活かして、ふたつのSmart Actionsを制作してみたという。
「ひとつめはフォルダの呼び出しアクションです。僕はいつも決まったフォルダにダウンロードしたアセットなどを保存するんですが、そこをボタンひとつで出せるようにアクションを組みました。やってみて意外だったのが、とても簡単にできたことです」。
ふたつめは、テンプレートフォルダ群を自動で作成するSmart Actions。神戸氏は新しいプロジェクトに取りかかる際に、独自のルールを持ったテンプレートフォルダをあらかじめ作成しておく。レンダリング画像を格納するフォルダやCinema 4Dのプロジェクトファイルを格納するフォルダなどだ。これらの作成をSmart Actionsにより、ボタンひとつで実行できるようにした。
「こういうのは好きなのでもっともっと開発したいです。例えば僕は、Photoshopでローポリ用のテクスチャをつくるときに、大きなサイズのテクスチャを読み込んで解像度を256×256や128×128に落として、ディザをかけて書き出すという作業をよくやります。この一連の操作をボタンだけで実現できたら、とても楽ですよね」。
こうした神戸氏のSmart Actions開発の姿勢は、ロジクールが運営する「Logiマーケットプレイス」の将来像と重なる。このマーケットプレイスには、世界中のクリエイターがつくったMX Creative Console用のプロファイルやアイコンパック、プラグインが集まる予定だからだ。ユーザーによる、ユーザーのための、ユーザーオリエンテッドなワークフローの共有は、MX Creative Consoleの可能性をさらに押し拡げるだろう。
さらなるDCCツールへのネイティブ対応拡大に期待
今回、ネイティブ非対応のCinema 4Dとネイティブ対応のAfter Effectsの両方で検証を行なった神戸氏は、やはりネイティブ対応の拡大を希望する。
「キーボードショートカットがカバーできない範囲までMX Creative Consoleで制御できるというのは相当大きいですよ。一例として、ZBrushは液晶ペンタブレットと何かしらの左手デバイスを組み合わせて使っているクリエイターがとても多いので、ネイティブ対応する意味はすごく大きいと思います」。
複雑な制作ワークフローを抱えるクリエイティブの現場では、時間的制約の下で作業効率を向上させ、表現を深化させる時間を確保することが常に求められている。その一助となる大きな可能性を秘めているのが、直感的な操作性と高いカスタマイズ性を備えた左手デバイス「MX Creative Console」だ。タイムライン操作やブラシ調整、レイヤー切り替え、プリセットの適用などの編集作業をワンタッチで処理可能にし、Photoshop、Premiere Pro、After Effectsなどアドビ6製品に対してはプラグインを介したネイティブな統合を実現している。さらに、専用ソフト「Logi Options+」を使えば、DCCツールを含むその他のツールのショートカット設定も可能で、クリエイターの作業効率を大幅に向上させる。
神戸氏も魅力についてこう語る。「操作性と効率アップはもう当たり前。ハナからわかってます。それに加えて、クリエイターとして、いちガジェット好きとして“楽しい”。これは面白いし役に立つデバイスです。おすすめします」。
クリエイター向けの左手デバイス「MX Creative Console」
【特徴】
機能割り当て: 最大135の機能を自由に設定可能で、独立した配置が可能。
滑らかな操作: ダイヤルやローラーで細かい調整が可能、ボタンもカスタマイズ対応。
Adobe連携: 14以上のプラグインに対応、また「Adobe Creative Cloud コンプリートプラン (3か月版)」 が付帯(新規、既存ユーザー問わず使用可能)
【価格】
¥29,800 (税込)
TEXT_kagaya(ハリんち)
PHOTO_大沼洋平
EDIT_中川裕介(CGWORLD)