次世代機向けゲーム開発も、ストレスフリーで。 省スペース・安定・ハイパフォーマンスの三拍子そろったEndeavor MR8400の使い勝手をドキドキグルーヴワークスが徹底検証!
高い処理能力と省電力性を兼ね備え、ゲーム開発におけるパフォーマンス向上が期待される第12世代インテル® Core™ プロセッサー。処理性能を重視する「パフォーマンスコア(Pコア)」と省電力性を重視する「高効率コア(Eコア)」の2種類のCPUコアで構成された設計(高性能ハイブリッド・アーキテクチャー)を採用しており、長期的に安定したパフォーマンスが求められる次世代ゲーム機開発において、その実力が大いに期待される。
国内BTOメーカーでも抜群の安定性・サポート力を誇るエプソンダイレクトのEndeavor シリーズからも同CPUを搭載したミニタワー型のEndeavor MR8400が発売されている。そこで今回は柔軟な開発力を武器にコンシューマ向け、ソーシャル向けに幅広いゲーム開発・運営を行う、ドキドキグルーヴワークスに同機の実力を検証してもらった。
モバイルゲームも次世代機の開発もバランスよく対応
CGW:自己紹介をお願いします。
ドキドキグルーヴワークス河野正孝氏:(以下、河野氏):3DCGデザイナーの河野正孝と申します。現在入社6年目で、リードデザイナーとして『ヴァルキリーアナトミア -ジ・オリジン-』に参加しておりました。最近はコンシューマ機を含む、さまざまなプロジェクトに参加しております。
CGW:ドキドキグルーヴワークスはゲーム開発やソフトウェアテスト、運営までを広く手掛ける開発会社ですが、河野さんの普段のお仕事内容について教えてください。
河野氏:私の在籍する大阪支社は、主にスマートフォン向けタイトルの開発や運用をメインの業務としています。私自身は『ヴァルキリーアナトミア -ジ・オリジン-』プロジェクトを5年ほど経験したあと、コンシューマ系のプロップ制作やハイエンド・次世代機向けのキャラクターモデル制作などを行っています。デザイナー全体でいうと、基本となるDCCツールはMayaで、PhotoshopやSubstance Painter、ZBrushなどを使って作業を行っています。
ドキドキグルーヴワークス
河野正孝氏(3DCGデザイナー)
CGW:制作される対象も、スマートフォン向けゲームから次世代機へ向けた内容まで幅広く行っているということですね。
河野氏:そうですね。長期タイトルの運営まで行う場合や、単発のコンシューマ案件がある中で、開発会社として「様々な案件の経験から、社員のスキルアップに繋げていく」という姿勢があるように感じています。中でも次世代機への対応は、これまで以上のPCスペックが求められることから、会社としても機材導入やリプレイスへの機運が高まっているように思います。
CGW:普段皆さんが使用するPCスペックについて教えてください。
河野氏:弊社の場合、作業者や職域によってスペックが異なります。社員の入社やプロジェクト異動のタイミング、あるいは現場判断で「スペックが不足している」となった場合、新規購入してリプレイスする形になります。3Dデザイナーの場合、最も古いもので第7世代インテルCPUにGTX1060を搭載したマシンを使っていたケースもあります。こうした場合、今であればNVIDIA RTX3070搭載マシンへリプレイスするケースが多いですね。
CGW:必要に応じて、少数台からでも入れ替えを行っているということですね。近年ではDCCツールやゲームエンジンの要求スペックも上がっていますので、その辺りは柔軟に対応していく必要があるように感じています。
河野氏:そうですね。本来であれば3年に1度程度のタイミングで一斉に入れ替えが出来るのが理想かも知れませんが、コストとの兼ね合いでこうした運用になっています。節目のタイミング以外は、やはり現場の方からの意見を聞いてリプレイスすることが多いです。
CGW:新しいマシンを購入する時に重視しているポイントを教えてください。
河野氏:エンジニアはゲームエンジンのビルド高速化のためにCPUを、デザイナーの場合はGPUを重視する構成で、職種によってカスタマイズをしています。価格帯は20万~30万円程度のレンジで考えています。最近は部材の高騰で少しずつ予算も上がっていますが、コストと照らし合わせながらその時に一番良いマシンを選択しているといった状況になります。
MayaとZBrushを用いたハイエンドモデルで検証! 旧世代機(第9世代)では太刀打ちできず。第12世代であればインテル® Core™ i7 プロセッサーでもインテル® Core™ i9 プロセッサーでも、いずれも問題なく実戦投入可!
CGW:今回は、インテルの第12世代 CPUを搭載したエプソンダイレクトのMR8400から異なるスペックで2機種検証していただきました。スペックはそれぞれ、インテル® Core™ i7-12700K プロセッサー、GeForce RTX 3070、メモリ32GB、M.2 SSD 1TBを搭載したマシン(モデルA)と、よりハイエンドなインテル® Core™ i9-12900K プロセッサー、GeForce RTX 3090、メモリ64GB、M.2 SSD 1TBを搭載したマシン(モデルB)の2台を検証いただきました。改めて、検証内容について教えてください。
MR8400 (モデルA)
- OS
Windows 10 Pro 64bit (Windows 11 Pro 64bitダウングレード)
- CPU
インテル(R) Core(TM) i7-12700K プロセッサー(12コア(8P+4E)/3.6GHz)
- CPUクーラー
CPUクーラー(標準搭載)
- 電源
650W電源
- HDDフロントアクセス
HDDフロントアクセスあり
- チップセット
インテル(R) H670 チップセット(標準搭載)
- グラフィックス
NVIDIA(R) GeForce RTX(TM) 3070 8GB LHR
- RAM
32.0GB(16.0GB×2) PC4-3200 DDR4 SDRAM
- ストレージ(1基目)
1TB M.2 SSD PCI Express x4対応
- ストレージ(2基目)
1TB SSD シリアルATA 600MB/s対応
MR8400(モデルB)
- OS
Windows 10 Pro 64bit (Windows 11 Pro 64bitダウングレード)
- CPU
インテル(R) Core(TM) i9-12900K プロセッサー(16コア(8P+8E)/3.2GHz)
- CPUクーラー
CPUクーラー(標準搭載)
- 電源
650W電源
- HDDフロントアクセス
HDDフロントアクセスあり
- チップセット
インテル(R) H670 チップセット(標準搭載)
- グラフィックス
NVIDIA(R) GeForce RTX(TM) 3090 24GB
- RAM
64.0GB(32.0GB×2) PC4-3200 DDR4 SDRAM
- ストレージ(1基目)
1TB M.2 SSD PCI Express x4対応
- ストレージ(2基目)
1TB SSD シリアルATA 600MB/s対応
河野氏:次世代機に向けたハイエンドモデルの制作を行いました。普段自分が使っている現行機(第9世代のインテル® Core™ i7 プロセッサー + NVIDIA Quadro P2000)と検証機2台を含めた3台で、同じ作業をしてみて体感の違いやレンダリング時間の差を検証しています。
CGW:検証向けに制作いただいたデータと制作フローについて教えてください。
河野氏:今回制作したのはドラゴンのハイポリモデルです。まずはMayaで3万ポリゴンほどの造形をつくり、その後ZBrushにインポートしてディバイド分割によりハイポリ化し、細かなディティールを付けていきました。ディティールが完成したら、ポリゴンリダクションを行ったのち、Maya ArnoldでGPUレンダリングを行うという一連の作業を試しました。
CGW:3台の使用感については、いかがでしたでしょうか。
河野氏:現行機の場合、ZBrushでは3,000万ポリゴンを超えたあたりから作業がかなり厳しくなり、ビューポートの回転なども非常にストレスになりました。また、排熱の関係でMayaも一度はクラッシュしてしまうなど、次世代を考えた場合はスペック的に不足していると痛感しました。一方、検証機の場合は、5,000万ポリゴンを超えても余裕で動いており、第12世代であればインテル® Core™ i7 プロセッサーでもインテル® Core™ i9 プロセッサーでも 、いずれも問題なく実戦投入できると感じました。
CGW:Arnoldでのレンダリング時間を教えてください。
河野氏:GPUの性能を確認するためにArnoldでGPUレンダリングを試みました。結果は現行機が約1分、RTX3070搭載のモデルAが25秒、RTX3090搭載のモデルBが20秒と、概ね予想通りの結果となりました。RTX3070とRTX3090で生じた5秒の差をどう捉えるか次第ですが、私たちの場合はRTX3070でも充分な性能ではないかと判断しています。それと、メインメモリに関しても、当然多ければ多いほど良いですね。近年の開発ではどうしてもポリゴン数が増えがちで、シーン全体も重くなるので、CPUやGPUだけでなく総合的なスペックも重要になると感じました。
ーその他、このマシンで検証した内容があれば教えてください。
河野氏:検証というほどではないですが、要求スペックの非常に高いUnreal Engine 5の「古代の谷」サンプルプロジェクトの展開も行いました。ここまで快適に動くとは、と驚きましたね。コスト的な部分との兼ね合いではありますが、最新ツールを使うならマシンのスペックもある程度新しい状態に保つ必要があると思いました。
CGW:今回の検証機含め、エプソンダイレクトのPCは構成するデバイスを厳選するのはもちろん、それらを組み合わせたシステム全体としての動作を謳っています。そのために、製品設計段階でクリエイターなどのヘビーユーザーを想定した、長期間の高負荷テストや低温・高温環境下での不安定な動作を未然に防止するためのさまざまな試験を行っているのが特徴です。
「フル性能を引き出した上で長時間安定して使える」というのが特徴になっていますが、安定性や排熱や静音性についてはいかがでしたか。
河野氏:確かに、作業中はCPU、GPUともにほぼ100%使い切る状況もありましたが、動作自体はかなり快適でした。さすがにZBrushでモデル全体を表示すると排熱音は多少気になりましたが、うるさいという感じはまったくありませんでした。
CGW:現在、新しい静音クーラーのオプション追加を準備中とのことで、排熱に関しては更に快適になるはずです。その他、筐体に関しての感想をお聞かせください。
河野氏:フロントアクセスが非常に便利でした。ゲーム会社ですと、プロジェクトのスタートやスタッフ異動のタイミングで必ずマシン内のデータを移行する必要がありますが、現状は外付HDDなどを貸し出してデータを吸い出している状況です。
案件が変わるごとにマシンを開けてHDDを取り出すというのも非現実的ですし、そもそもリモートワークが主体の場合は「情シスが近くにいないため、PCに詳しくないスタッフはHDDを取り出すこと自体ができない」という状況になります。その点、Endeavor MR8400は誰でも簡単にHDD取り出しができますし、交換も簡単です。これはすごく楽だな、と感じました。
CGW:ゲーム開発は大規模化が続いていますし、必然的にデータ総量も増えていますので、データ移行に関する利便性は重要ですね。
河野氏:データに関して言えば、今回はストレージがM.2 SSD 1TBでしたので、読み書きのスピードはもちろんのこと、Mayaなどの立ち上がりは極めて速かったです。
河野氏:また、コンパクトな筐体もメリットですね。デスクトップPCだと、リモートワーク時に「置く場所に悩む」スタッフが発生します。また、オフィスにおいても、人によってはデュアルディスプレイ、トリプルディスプレイなどで作業をする方がいる中で、決められたスペースの中でマシンをどう置くかは課題になりがちです。物理的な部屋の広さは変わらないので、マシンがコンパクトになることはありがたいことですね。
CGW:ありがとうございました。エプソンダイレクトでは国内拠点の強みを活かしたサポートの充実や、今回のようにカスタムした内容での検証機貸し出しも行っておりますので、是非ご検討ください。
POINT01:インテル 第12世代CPUの登場で次世代機への準備が整う
新たなコンシューマ機の登場によるアセットの大容量化やDCCツールのアップデートによる要求スペックの向上など、開発規模が拡大の一途を辿るゲーム開発領域では従来に増して求められるPCスペックが高性能化している。Endeavor MR8400では新たなアーキテクチャを採用したインテル第12世代CPU「Alder lake-S」を採用。
⾼性能コア(Performanceコア)と⾼効率コア(Efficientコア)の2種類を組み合わせたハイブリッドアーキテクチャで、消費電⼒を抑えつつ⾼い処理性能を発揮する。ゲーム開発やリアルタイム3DCGにおいてはGPU性能が注目されることが多いが、効率的にビルドやレンダリング、あるいはシミュレーション等を行うためには総合的な能力が必要。
POINT02:ゲーム開発に最適化されたEndeavor MR8400
オフィスでも自宅でも、どんな環境にもフィットするコンパクトな筐体に、次世代機開発に耐えうるスペックを搭載したEndeavor MR8400。一斉にデータ移行を行う機会が多いゲーム業界では、フロントアクセスによるHDD換装の簡単さも大きなメリットになる。また、一般的にスペックと筐体サイズを優先すると排熱面や安定性がトレードオフになるケースが多いが、Endeavor MR8400は室温35度の環境でフル稼働を行っても問題がないよう設計・テストされているため、重いシーンファイルの展開やリアルタイム3DCG制作においても安心して作業を行うことができる。静音性に関しても、2022年8~9月を目処にAlder lake用の最新CPUクーラーが登場予定で、従来モデルと比較してCPU最大負荷時に5dBほど低減される見込みとなる。
TEXT_神山大輝(NINE GATES STUDIO)
EDIT_池田大樹(CGWORLD)