設立12年目を迎えるコラットが、昨年から精力的に海外に視野を広げている。4ヶ国語話者の海外担当や、海外作品での経験豊富なアートディレクターもジョイン。パイプライン開発力やオリジナル企画制作力も備え、攻めの姿勢を崩さない。
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株式会社コラット
実写VFXからフルCG、ゲーム、VR、アニメにいたるまで、幅広いメディアに対応する3DCGスタジオ。アート部門の設立により、プリプロからポスポロまでワンストップでカバーし、海外展開に向けて積極的にチャレンジしている。
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3DCG技術とパイプライン開発力で、時代の要請に応じた映像をつくる
2012年に設立されたコラットは、「変化を恐れず、『良質』を追求する」を企業理念に掲げ、フォトリアルな実写VFXからCM、MV、スタイライズされたアニメーション映像まで、多岐にわたる3DCGを手がけるプロダクション。社内のアーティストのスタッフ構成はシニアクラスが6割以上で、そのうちCG歴10年以上のスーパーバイザークラスが約3割在籍する。
代表の米山和利氏は「ここ数年で、世間的にも目立つ仕事を受注できるようになった」と話す。そのきっかけは7年前にプロデューサーの山元太陽氏がジョインしたことだ。「『可能な限り、時代の最先端を追いかける』というスタンスで、受注に際しては、その仕事を請けることでどんなプラスアルファが得られるかを重視しています。ビジネスとしての利益率以外のメリットがあるチャレンジングな仕事や、新たな手法が求められる案件を請けることが多いです」と山元氏。今ではコラットの経営面はほぼ山元氏が仕切り、米山氏は海外営業に注力しているという。
コラットの大きな武器のひとつに、自社でのパイプライン開発力がある。コラット創業メンバーのひとり、中野善夫氏はプログラミングもできるCGデザイナーとしてパイプライン開発に携わり、現在はテクニカルディレクターとしてワークフローの効率化に専念している。
「米山たちと一緒にフリーランス集団としてCG制作をしていた頃からパイプラインを使ったワークフローを経験していて、その重要性がわかっていました」(中野氏)。
現在は仕様策定をパイプラインディレクターの鎌田友樹氏が、Pythonによる実装を中野氏がという分業体制でツール開発を行なっている。「ランチャーやファイル管理ツール、アニメーションデータのパブリッシュツール、アセットマネージャー、ショットビルドツールなどを開発・運用しています。現在は、外部の協力会社さんとのデータ共有を効率化するデータのパッケージツールの開発を進めています」と鎌田氏。
TOPIC1:充実した内製パイプラインツール
中規模スタジオながら、内製ツールによって効率的な作業を可能にするパイプラインが敷かれている。
代表自らがアポを取り対面営業 地道ゆえに効果的な海外戦略
海外に目を向けるようになったきっかけは、米山氏が昨年ポーランドのCGプロダクションを訪問したことや、海外の友人からの「どうして日本だけでやっているの? 仕事は海外にもたくさんあるでしょう?」という素朴なひと言、昨今の円安による景気の悪化などが重なった結果だという。「何より、コラットはVFXにしろ、フルCGアニメーションにしろ、もう海外のお仕事を請けても大丈夫なくらいのクオリティが出せているという自負がありました」(米山氏)。
思い立ったが吉日、米山氏はフェイスtoフェイスでの営業を前提に、多数の海外スタジオにアポイントメントをとる。返事をもらえた会社に足を運び、すでに15社ほど訪れた。複数回訪問した会社も数社あるという。
米山氏は「現状は見積りの段階ですが、感触としては悪くありません。これからですね」と気概を見せる。こうした米山氏の活動を山元氏は業界内で発信していたが、実はそれがきっかけで思わぬ成果を得た。「海外営業の間接的な成果ですが、うちの活動を聞きつけて、周りがインドネシアの制作会社につないでくれたのです。おかげさまで現在、インドネシアの映画制作に携わっています」(山元氏)。
今年に入ってからは、海外担当としてクァドリンガル(4ヶ国語話者)の菊池妙子氏や、海外作品でのアート制作経験が豊富な今井紀久氏がジョインし、コラット社内には海外に向けた新風が吹いている。菊池氏は東京・浜松町で開催されたコンテンツマーケット「TIFFCOM 2024」で多数の海外ブースを訪問した。「日本と海外ではコミュニケーションのプロセスにもちがいがあります。海外ではストレートに見積もりを尋ねられるケースも多いのです。ただ、つながりと信頼関係がどこまでも大事なのは万国共通です」(菊池氏)。
イベントの翌日には2社がコラットに来社したということで、結果もしっかり伴っている。
TOPIC2:国際的なイベントへの積極参加
国内外の様々なイベントに参加し、海外のコンテンツホルダーなどの出展者と接点がもてるような活動を積極的に行なっている。
オリジナルコンテンツ制作で 世界にアプローチする
現在、今井氏が陣頭指揮を執り、“ゼロイチ”でオリジナルコンテンツの制作を進めている。ターゲットはもちろん “世界” だ。「例えば、キャラクターの頭部はあえて表情を表現できないヘルメット状のデザインにしています。これは全世界の視聴者に向けて、言葉や表情に依らず、万国共通の動きや演出で伝えるためです」と今井氏は話す。
キャラクターデザインからコンセプトアート、絵コンテ、モデリング、セットアップ、アニメーション、そしてUnreal Engineによるレンダリングまでを社内で完結するというチャレンジングなプロジェクト。ショートムービーの公開がマイルストーンとなる予定で、今後の進展が楽しみだ。
TOPIC3:海外展開をねらうオリジナルプロジェクト『KOP』
ゼロから起ち上げられたオリジナルプロジェクト『KOP』。今井氏の海外経験を活かし、アートスタイルや制作手法も含め、海外展開を視野に入れたものになっている。コラットの各SNSで日々進捗がアップデートされているので、ぜひご覧いただきたい。
アジアの優れたコンテンツ制作力を協業により倍加させるために
海外進出への意欲を見せるコラット、米山氏はコンテンツ産業でめざましい発展を続ける韓国に対しても協業の道を模索している。
「私は韓国のホラー映画『グエムル-漢江の怪物-』(2006)を観たときに正直、日本のVFXは負けていると思いました。あれから18年、われわれもそれなりに力をつけてきてはいますが、日本にいると、やはり韓国にはエンターテインメントが伸びる素養があるということを痛感します。いまや日本と韓国は “近くて遠い国”ではないですし、お互いの強みを活かしあって、北米・欧州の作品とはまたちがった魅力のある作品をつくっていきませんか。そう思っています」(米山氏)。
お問い合わせ
株式会社コラット
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TEXT_kagaya(ハリんち)harinchi.com
EDIT_藤井紀明/Noriaki Fujii(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota