先端のリアルタイムコンテンツ制作でも真価を発揮!東映ツークン研究所のディレクターによるサイコムのデュアル水冷ワークステーション「Lepton Hydro WSTRX50A」レビュー
最新技術を活かしたコンテンツ制作を担う東映ツークン研究所が、AMD Ryzen Threadripper 7970X&サイコム独自の水冷NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPERを搭載した最高峰のワークステーション「Lepton Hydro WSTRX50A」をレビュー。XR領域を中心に活動する同社ディレクター/テクニカルアーティストの大谷泰斗氏が、実務上で用いるツールでの検証や印象評価まで本機の魅力を深掘りしていく。
最新技術の実戦投入を目指すツークン研究所
映像制作を軸として多角的な経営を続ける国内屈指のコンテンツ制作会社の東映において、特に先進的な役割を担うのが「ツークン研究所」だ。研究所内では独自開発のフェイシャルキャプチャシステムやバーチャルプロダクションに関するR&Dなどの開発業務だけでなく、研究に留まらない最新技術を活用したデジタルコンテンツ制作も活発に行われている。
「ツークン研究所では『湯沢ILLUMIMANIA(イルミマニア)』など音と光を連動させたプロジェクションマッピングや、採炭現場を再現した『The万田坑VR』など、一般的な東映のイメージとは逸脱したデジタルコンテンツを多く取り扱っています。最新技術のユースケースを増やし、ここで得た知見をIP作品の制作などでも活用できるように、技術的な下地をつくる仕事を行なっています」と語るのは、ディレクター/テクニカルアーティストの大谷氏だ。
大谷泰斗氏
東映 ツークン研究所 ディレクター/テクニカルアーティスト
日頃から使用するツールは、UnityやUnreal Engine 5(以下、UE5)を中心に、BlenderやAfter EffectsなどのDCCツールやTouchDesigner、Max/MSPなど多種多様。業務内容も企画立案から3DCGワーク、インタラクティブコンテンツ制作、場合によってはリアル空間の設備設計など多岐にわたる。
「複数のツールをまたいで作業することが多いため、メモリは多ければ多いほど良いですね。コンテンツの制作とデバッグを並行して行うケースも多く、GPUのスペックも余裕をもたせたいです」(大谷氏)。
圧倒的な静音性とスペックを兼ね揃える最新モデルに驚愕
今回の検証機「Lepton Hydro WSTRX50A」は、Ryzen Threadripper 7970X(32コア/64スレッド)、サイコムオリジナル 水冷GeForce RTX 4080 SUPERを搭載し、メモリは256GBという破格のスペックを誇る1台。使用した際のファーストインプレッションは、その静音性だった。
「UE5起動時のシェーダコンパイルやBlenderのリアルタイムプレビューなど、現在使っているマシンではファンがブンブン回るようなケースでも非常に静かだったことが印象的です。各ツールの起ち上がりも速く、負荷をかけても静かなまま。シュッとしたデザインも相まって非常に洗練されたマシンだと感じました」(大谷氏)。
“Hydro”の名前が示す通り、ASETEK社製ビデオカード水冷ユニット「Hybrid GFX 240mmLCS」よる冷却に加えてラジエータをNoctua製12cmファン2基の組み合わせでGPUの熱問題を解決。GPUの温度を一定以下に保つことで、各ツールのビューポート上でのフレームレートも稼ぎやすくなるとのこと。
また、XR領域での活動が多い大谷氏はヘッドマウントディスプレイをPC接続して使用するケースが多いため、フロント部にUSB-3.2 GEN 2端子が1系統ある筐体も非常に有益だったという。
ゲームエンジンを使用するクリエイターにオススメ
今回はBlender CyclesでのCPU/GPUレンダリング速度検証と、UE5のムービーレンダーキューを使った高解像度レンダリングの検証に加え、UE5やTouchDesignerなど複数ツールを起ち上げた際の動作検証という3種類のテストを実施。詳細な検証結果は後述のグラフを参照いただきたいが、いずれも各パーツの性能差を反映した結果が得られた。
大谷氏によれば、今回の検証機はリアルタイムレンダリングを中心とするゲームエンジンユーザーにマッチするという。
「UE5もUnityも、現在はゲーム開発だけでなく映像制作ツールのひとつとして用いられるケースも多いと思います。また、ゲームではないインタラクティブコンテンツ開発事例も増えています。アニメーターでもモデラーでも、とにかくゲームエンジンを中心としたワークフローで制作を行うクリエイターであれば、水冷によるフレームレートの安定という恩恵を受けやすいのではないかと感じています」(大谷氏)。
ツークン研究所のような先端的なスタジオだけにとどまらず、静音性とスペック、そして安定的な動作を提供するサイコムのPCはあらゆる現場での一線級の活躍が期待できそうだ。
Lepton Hydro WSTRX50Aカスタマイズモデル(検証PC)
- CPU
AMD Ryzen Threadripper 7970X
- GPU
サイコムオリジナル水冷 NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER
- メモリ
DDR5-4800 256GB(64GB×4)
- SSD
Crucial T700 CT1000T700SSD3 M.2 PCI-E Gen5 SSD 1TB
- OS
Windows 11 Pro
大谷氏の社用PC
- CPU
AMD Ryzen 9 7950X(16コア32スレッド)
- GPU
NVIDIA GeForce RTX 4070Ti 12GB
- メモリ
Samsung M323R4GABB0-CQKOL 128GB( 32GB×4)
- SSD
Seagate FireCuda 530 ZP1000GM30013 M.2 PCI-E Gen4 SSD 1TB
- OS
Windows 10 Pro 64bit
TOPIC1:Blender Cyclesレンダリング速度比較
Blender Cyclesにて、Sampleサイズ:32/NoiseThreshold:0.01の設定でCPU/GPUそれぞれレンダリング検証を実施。GPUレンダリングは普段の業務機が1分50秒、検証機が1分10秒と大幅に短縮されており、順当に性能差が示されたかたちだ。
一方のCPUレンダリングでは、1分28秒から1分8秒と約20秒の短縮となっている。2023年発売のハイエンドCPU Ryzen Threadripper 7970Xと2020年発売のCore i7-10700Kの性能差は大きく、特にCinebench 2024 マルチコアテストでは約6倍の開きがあるが、今回の検証においては性能差ほどのレンダリング時間の差異は確認できていない。ただし、Cyclesもマルチコア対応のレンダラであるため、シーンの複雑性が増した際は大きな差として数字に現れる可能性もある。
TOPIC2:UE5 ムービーレンダーキュー処理時間の比較
プロジェクションマッピングで使用した「町を駆け抜けるシーン」を7,680×2,160pxでレンダリング(設定はjpeg 8bit/ディファードレンダリング)。
24fpsで240フレームをレンダリングした際の処理時間は、普段の業務PCが14分17秒のところ検証機では9分3秒と大幅に短縮されている。GeForce RTX 3080とGeForce RTX 4080 SUPERはアーキテクチャがAmpereからAda Lovelaceに変化した点も含め、ベンチマーク上では37%ほどの差異が見て取れるが、制作に大きく関わる要素としてVRAMが10GBから16GBに増強される点も見逃せない。
また、サイコムが独自に組み込んだHybrid GFX 240mm LCSによる水冷効果で長期に安定したパフォーマンスが期待できることから、さらに巨大なシーンでも問題なくレンダリングが行えるはずだ。
TOPIC3:複数ツールを起動した状態での高負荷処理に関する印象評価
TouchDesigner、Max/MSP、UE5、Visual Studio Codeを起動した状態での作業を行なった結果は「全体的にサクサク動いていた」と好印象。特に大谷氏が言及したのは「アプリの起ち上げが速い」、「UE5のロードやTouchDesignerのシーンロードが速い」、「TouchDesignerでノードをつなげた際のフレームレート低下が改善した」といった部分だ。
CPU、GPUいずれも高性能なパーツを搭載している点、メモリ256GBと複数ツールを起ち上げても余力が大きく残されている点が全体の快適性を担保しており、シーンの読み込み速度に関しては超高速のM.2 PCI-E Gen5 SSD 1TBが大きく寄与しているものと考えられる。
また、Max/MSPからオーディオを送信、TouchDesignerでリアルタイムのリキッドシミュレーションを回し、さらにUE5でもレンダリングをするような高負荷なレンダリング状態を1時間以上続けてフレームレートの低下が見られなかったことからも、GPU冷却性能の高さが示されていた。
ご購入に関するお問い合わせ
株式会社サイコム
TEL:048-994-6070/Mail:pc-order@sycom.co.jp
平日10時~12時、13時~17時(土日祝祭日はお休み)
www.sycom.co.jp
TEXT_神山大輝(NINE GATES STUDIO)
PHOTO_弘田 充/ Mitsuru Hirota
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、Mana Okubo(CGWORLD)