M1 Max搭載 MacBook Proの実力をベテランエディターが17のテーマで気合の検証!(After Effects、Blender、Flame、DaVinci Resolve他)
ずば抜けたパフォーマンスと電力効率を併せ持つM1 Maxプロセッサを搭載する新型MacBook Proは、映像業界にどういった変革をもたらすのか。ベンチマークだけでなく、制作現場でいかにワークフローの高速化に寄与できるかが”Pro”向けマシンの真価が問われる部分でもある。
今回は、2020年に設立されたXOR Inc. (エクソア)代表であり、millennium parade『Bon Dance』(CGWORLD283号掲載)やKingGnu『飛行艇』などのMVやCMをはじめ、映画、ドラマ、大型映像など数多くの映像作品にVFXスーパーバイザー/オンラインエディターとして参加してきた堀江友則氏が検証にトライ。
オンラインエディター・コンポジターの観点から、After Effects、Media Encorder、DaVinci Resolve、Flame、Blenderなど7つのアプリケーションを横断した17テーマに及ぶ”気合い”の検証を行っていただいた。
堀江氏自身が所有している、MacBook Proモデル(2019)、iMac Pro(Late 2017,10core)、Windows機(CPU:インテル core i9-10920X、GPU:NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti )との比較検証を行っているので、特に映像分野の読者には役に立つはずだ。
1作品4エディター!? Blenderも駆使する、XORの新たなエディットスタイル
XOR(エクソア)とは?
ーまずは自己紹介をお願いします。
堀江:XOR代表の堀江と申します。前職は株式会社オムニバス・ジャパンで、オンラインエディターを経てVFXスーパーバイザーとして17年間勤務しました。2020年10月にXORT Inc.を立ち上げ、現在は4名でオンラインエディットやコンポジット業務を行っています。
ーXORの制作スタイルの特徴を教えて下さい。
堀江:弊社には「案件に応じた柔軟なツール選択とワークフロー構築」と、「所属エディター全員が1組で一作品に取り組む」という特徴があります。一口に映像制作と言っても、ジャンルや媒体によって最適なワークフローは異なります。CM案件や映画、ドラマ、MVや大型映像など、それぞれスケジュールや予算、制作体制、クライアントのチェックフローが違うため、ひとつの方法論に縛られることなく個別に最適なワークフローを選択する必要があるということです。
そのために、MacやWindowsなどのOSから、FlameやAdobe製品、DaVinci Resolve、Blenderなどのソフトウェアに至るまで、あらゆるツールを選択肢として使える状態にしておくというのが弊社の方針です。また、従来は1案件に1オンラインエディターが一般的でしたが、我々はどんな案件でも4名編成で取り組んでいます。統括として自分がスーパーバイザーとして立ちつつ、それぞれ得意分野の違うエディターが複数の視点・考え方で案件を見ることで「よりよい映像作品」に近付けられると考えていますし、誰か一人だけに作業ボリュームを集中させないことで、作品の品質は保持しつつも無理のない働き方を実現しています。
ー柔軟なワークフローを選択するために、あらゆるハード・ソフトを取り入れるとのことですが、具体的にはどのような使い分けを行っているのでしょうか。
堀江:例えば、巨大なスクリーンに投影するイベント用映像では25Kに及ぶ解像度が求められることもありました。Flameは仕様上大解像度での作業が向いているとは限らず、巨大な映像案件はワークフローを精査しつつDaVinci ResolveやPremiereで行うなど、媒体ごとに最適なツールの使い分けが発生します。そのほかにも、最初から大量のVFX作業が見込まれる場合はFlameベースで構築しますし、CGコンポジットを盛り込むならNukeを併用したり、カットバイでAfter Effectsを使うこともあります。
個の力は求められますが、ワークフローを「選択して使い分ける」ためには、あらゆるツールを使いこなせた上でチームとして連携できなければいけません。「自分たちはFlameしか使えないから、Flameに向いてない案件は受託できない…」というのはこれからの時代難しいので、幅広いツールを選択肢として持つようにしています。ただ、これはもちろん、特定分野のスペシャリストを否定するものではなく、あくまで出来る限りの選択肢を提供したいという理念です。
ーBlenderも話題が上がりましたが、3DCGまで自分たちで制作することもあるということでしょうか?
堀江:そうですね。もちろん大掛かりな3DCGは難しいのですが、従来は2Dのレイヤーで制作していたような紙吹雪の演出や、ちょっとしたオブジェクトの一部を、外部パートナーに依頼せずに自分たちで3DCGで制作する事に挑戦する事が増えてきました。
「どこまでCGで作業をすればいいのか」、「コンポジットで巻き取れる範疇の作業なのか」、オンラインエディットを担当する弊社側が、クオリティを考えながら作業ウェイトをコントロールできるのがいいですね。また、他のセグメントの業務を一部担当することで、ワークフローへの理解が深まり、相手方に適切な依頼ができるようになったことも大きいです。
XORの選ぶ、作業環境
ーこうしたXORのスタイルを実現する制作環境について、まずは現在メインで使っているマシンを教えて下さい。
堀江:オンラインエディットにおいては、iMac Pro(2017モデル)をメインに使っています。
FlameはMacかLinuxで動作するため、ハードを行き来せず複数ツール使えるApple製品を活用しています。コロナ禍におけるリモートワークにおいては、MacBook Proがメイン機です。一部、3DCGが絡むものはWindowsマシンを併用していますが、先ほど申し上げた通り柔軟なワークフローを選択するためには「OSによる選択肢を狭めない」ことも重要であり、社内にはどちらも使える環境を用意しています。
ー使用ソフトウェアの都合でMacをお使いになっているとのことですが、他にも理由はありますか。MacOSの使いやすさやコンポーネントの品質など、複数の利点があるかと思いますが、対応ソフトウェア以外に重視している点はどの辺りでしょうか。
堀江:第一に安定性です。MacはWindowsと違ってパーツの変更は難しいのですが、そのぶん安定性が非常に高いです。もちろん、どちらが優れているかではなく適材適所ですので、Blenderなどは現状Windowsでの動作が快適なので併用しますし、Windowsにしか無いアプリなどもありますので、あくまで「両方持つ」ということの価値はあります。ただ、弊社の場合はPremiereやDavinci Resolve、FlameやNukeなどを、一台でラウンドトリップ(複数ツールをまたいで作業を行うこと)が完結できるMac環境がメインになっています。
M1 Max搭載MacBook Proを17のテーマで検証
ハードウェア評価(バッテリー・放熱設計・キーボード)
ーここからは、M1 Maxチップ搭載のMacBook Proによる検証結果をお聞かせいただきます。実際に1ヶ月ほどお使いいただきましたが、検証結果の前に全体的な使用感を教えて頂けますか。
堀江:オンラインエディターというポジションからリアルな使用感を伝えるのが誠意だろうと思い、普段の業務の観点から様々なポイントで評価してみました。
ハードウェアの特徴への評価としては、M1 Maxの省電力性、そしてバッテリーの持続が第一に挙げられます。このインタビュー中も電源コードを外した状態でいろいろとDCCツールを触ってお見せしていますが、まだバッテリーはほとんど減っておりません。本機であれば出先でも、電源無しでも躊躇なく作業が可能なのは素晴らしいですね。
次に、放熱性にとても優れている点を評価したいです。編集作業中に発生するPCの熱は実はかなりの大敵で、パフォーマンスを落とすだけでなく、レンダリングにエラーが発生する場合もあります。旧MacBook Proで負荷の高い作業を行う際には、マシンが高温になり放熱性において不安になることも少なくありませんでしたが、新型においては後述の各アプリケーションの検証でも、涼しい顔で走り続ける感じで、レンダリングミスでノイズが乗るなどのエラーも起きませんでした。
個人的に、ハードウェア筐体設計について気に入ったのは 作業中に多用するファンクションキーが物理キーに戻ってくれた点。そして、これは賛否両論かも知れませんが、HDMI端子がついてくれたことが映像制作の業務においては大きなメリットになっていると考えます。
筐体デザインは多少厚みを増し、前モデルよりも多少無骨な印象がありますが、総合的にプロユースの実用性に富んだハードウェア設計に思われ、そちらにステータスを振った印象を受けます。
ーたしかに、編集作業をする上で一台完結を目指した設計にも見て取れます。
堀江:それで言うと、ディスプレイがHDRに対応していることも非常に将来性を感じます。今回の検証では試せませんでしたが、HDR作業をMacBook Pro単体で完結できるとしたら、これは驚くべきことだと思います。
旧世代Apple製品との違いは?
ー現在は1世代前のMacBook Pro(2019モデル)もご使用頂いているそうですが、そちらと比較した際のパフォーマンスについてはいかがでしょうか。
堀江:ベンチマークをGeekBenchで検証すると、2019年製Macbook Proに比べて平均で2倍近いスコアが出ていました。CPUのシングルコア性能は1.3倍程度、マルチでは1.7倍程度になっています。GPUに関しては2.4倍になっており、Radeon Pro Vega 64X搭載のiMac Pro(Late 2017,10core)とも互角か少し上という結果になっていて、これは正直かなり驚きました。もちろん、CPU性能もiMac Proの1.5倍程度のパフォーマンスとなっています。ベンチマークの単純な数値だけで物事を測ることはできませんが、それでも数字としては興味深いものになりました。
ー前世代を大きく凌駕する数字になっていますね。ここからは、実際のツールでの使用感について教えて下さい。
堀江:最初はMediaEncoderで、5分程度の4K ProRes動画をmp4にエンコードする時間を計測しました。オンライン編集業務においてチェック用データをつくる目的で頻出する操作ですが、ソフトウェアレンダリングだと以前のMacBook Proに比べて1.3倍のパフォーマンスが出ていました。
また、より差が大きかったのはGPUを用いるハードウェアレンダリングで、こちらは4倍近い数値が出ています。その逆で、mp4形式をProResにアップコンバートした場合も、ハードウェアアクセラレーションを活用した際には非常に大きな差が出ていました。ということで、今回の検証におけるエンコード周りについては大まかに2-3倍程度のパフォーマンスが期待できると思います。
ーたしかに、レンダリング等の処理を安定稼働させるためには効率的な排熱が重要になります。また、GPU性能が重視される機能において大幅に速度向上した点も、ベンチマークを反映しているように思います。続いて、After Effectsではどういった作業を試されましたか?
堀江:主にレンダリングと、よく行う比較的負荷の高い作業としてアップスケールとタイムワープを試しました。
アップスケールはどの方法論においてもそれなりにCPU負荷が高いのですが、ディスクキャッシュが無効の状態でも旧MacBook Proより2.39倍とかなりの速度向上が見られました。触っていて気づいたのは、通常After Effectsはフル解像度だとジョグでタイムラインをシークした時にブロックノイズが表示され、その後徐々に絵が見えてくるような形になるのですが、今回の検証においてM1 Max搭載マシンではリアルタイムにプレビューが可能だった点です。4Kでもさくさく動きますし、ここは数値では見えないストレス軽減の要素だと思いました。最適化が上手くいっているのかな?という気がしますね。
ーキャッシュのない状態でも、リアルタイムにプレビュー可能なのは良いですね。他にはどういったツールで検証を行いましたか。
堀江:DaVinci Resolveでは、何をやっても2倍以上の動作は担保できている気がします。レイヤーが大量に重なった場合は結果が異なる可能性もありますが、今のところタイムワープなどの処理を行った際にも2倍以上の速度にはなっています。CPUにインテル i9-10920X(3.50GHz)、GPUにNVIDIA RTX2080Ti搭載のWindows機とも比較を行いましたが、書き出しなど各種レンダリング周りの速度は比べ物にならないほど速いですね。
ーその他のツールについてはいかがでしょうか。
堀江:いい結果が得られた部分については、Nukeではシークが非常に速い印象を覚えました。一方、Blenderについては、前世代MacBook Proと比較しても今回の検証においてCyclesでのレンダリングがほぼ同一の計測時間となり、期待とは少し違う結果になりました。リアルタイムレンダリングであるEeVeeは2.71倍とパフォーマンスが出ていますが、最適化はまだ進んでいないように思われました。
また、Flameが本検証を行った2022年1月にタイムリーにM1 Maxに対応したので、急遽ですが検証してみました。結果としては、旧MacBook Proに比較して大幅なパフォーマンスアップは見受けられませんでしたが、それでもまず「対応した」ということは評価すべきですし、今後の最適化に期待が持てます。
ーありがとうございます。最後に、今回の検証を振り返って総括をお願いします。
堀江:まず、先ほどのBlenderに関してですが、Appleの資本が入ることによって一気に最適化が進むのではないかと大いに期待をしています。従来は3DCG制作において、Appleはやや不利な状況にあったと思いますが、アップデートの速いBlenderを起点に逆転が起きるのではないかという期待もあります。
また、自分は不易流行という言葉が好きで、変わってはいけないもの、変わっていくべきもの、それぞれを上手く合わせるのが技術の鉄則だと考えています。例えばトンネルを掘るとして、きっと古くからあるツルハシも削岩機も存在している訳で、テクノロジーを使って削岩機で一気に掘る方が良い場面もあれば、細かい部分でツルハシを使う場面もあると思っております。絵にだけは真摯に、嘘をつかずに向き合うという本質的なメンタリティはそのままに、テクノロジーの取捨選択を自由に行えることは、これからの制作においては非常に重要だと思います。
エディター目線で見たとき、MacBook Proにはプロダクトが想起させるクリエイティブに対するユーザビリティの良さがあります。今後もXORは「良い絵をつくること」に徹底してフォーカスしていきたいと考えています。
各アプリ検証結果詳細
検証:MediaEncorder
MediaEncorderでは、ProRes HQ素材(3840x2080/23.976fps/5m19s/ProRes HQ)をmp4(UHD3840x2160/23.976fps/5m19s/H264)へエンコードする際の時間を計測した。
エンコード設定をマルチパスにした場合はソフトウェアエンコードとなるため、速度はM1 MaxのMacBook Proが10分41秒、1世代前のMacBook Proが13分44秒、iMac Proが13分11秒と1.2~1.3倍程度の速度向上となっていた。
一方で、シングルパスでハードウェアエンコードを行った場合はなんと3倍以上の高速化が実現した。ハードウェア性能を活かせる設計のエンコーダー・レンダラーにおいては、M1 Max搭載機が特に有効という結果が示されている。
検証:After Effects
After Effectsではプレーン状態でのレンダリングと、高負荷な機能を使用した際における所要時間を計測。M1 Max搭載機が1世代前のMacBook Proの2.85倍のパフォーマンスを発揮し、インテル core i9-10920X、NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti 搭載のWindowsマシンの3.78倍となるなど有意な結果を示した。エフェクトの項目では、1920x1080/ProRes 4444素材をUHD3840x2160/ProRes 4444にアップコンバートを行う作業と、既存の素材を約3倍にタイムワープ(尺伸ばし)を行う作業を検証。いずれもM1 Max搭載機が優れた値を示しており、1世代前のMacBook Proと比較すると2倍程度の速度で完了している。また、AIを用いてビデオから不要なオブジェクトを削除する「コンテンツに応じた塗りつぶしの解析」では、21秒の動画を処理するのにM1 Max搭載機は28秒、1世代前のMacBook Proは46秒、Windowsマシンは38秒と、こちらも有意な差を示している。
After Effectsテーマ01:プレーン状態で書き出し
After Effectsテーマ02:エフェクト アップスケールでアップコンバート
After Effectsテーマ03:エフェクト タイムワープ(尺伸ばし)
After Effectsテーマ04:コンテンツに応じた塗りつぶしの解析
検証:DaVinci Resolve
Davinci Resolveでは、2つの異なる素材を用いてARRIRAW非圧縮映像の書き出しに掛かる時間を検証した。DPX/ProRes 4444形式どちらもM1 Max搭載機、iMac Pro、1世代前のMacBook Pro、Windowsマシンの順に並んでおり、最大で4.5倍の差が現れている。また、SuperScaleによって1920x1080/ProRes 4444素材をUHD3840x2160/ProRes HQにアップスケールした際に掛かった時間はM1 Max搭載MacBook Proが5分48秒のところ、1世代前のMacBook Proでは16分21秒と、大きな開きが見られた。
Davinci Resolveでの検証でも概ね良好な結果が得られているが、GPU性能に依存する機能の一部ではNVIDIA RTX2080Ti搭載のWindowsマシンに軍配が上がるケースも見られた。
DaVinci Resolveテーマ01:ARRIRAW_4k_to_DPX
DaVinci Resolveテーマ02:ARRIRAW_4.5k_to_DPX
DaVinci Resolveテーマ03:SuperScale 出力
DaVinci Resolveテーマ04:AI-TW 出力
検証:Flame
Autodesk Flameもver 2022.3UpdateでM1に対応したとの事で、早速検証を行った。
比較対象として旧MacBook Proを使用したが、こちらのFlameのバージョンは現在弊社やポスプロ他社でも多く使われている傾向がある、ver2020.3.1Updateを敢えて使用した。
パフォーマンスを比較するため、batchにて複数ノードを接続してレンダリングすると言う負荷をかけて、検証とした。
一つ目は、ColuorSource→Regrain→Denoise(Median Filtering、Radius5)→Render 100f
と言う構成。こちらのデータにてレンダリング時間を計測した。
結果としては、下記のように、M1 Maxが1分50秒に対して旧MacBook Proが1分18秒と、意外にも旧MacBook Proに軍配があがった。微差とは言い難い差が出てしまっている。
そこで、二つ目
ColuorSource→Regrain→MatchBoxのMedianFilter(Amount10)→Render 100f
と、ノード構成を一部変えて再計測を行なった。
こちらの検証では、M1 Max搭載MacBook Pro が52秒、旧MacBook Proが1分9秒と今度はM1 Maxが良好な結果となった。
なお、レンダリング中にリソースモニターを見てみると、一つ目のレンダリング中はCPU使用比率が大きくなり、二つ目のレンダリング中はGPU使用比率が大きくなっていたことから推測するに、ノード構成によってはGPU支援が得られる事で、M1 Maxの意義が大きくなるのかもしれない。
ユーザビリティについては、新MacBook Proについては上部ベゼル部のカメラホール部分が凸になっている事により、FlameのDesktop部の上段を侵食してしまっていた。どこかに回避する設定が用意されているかもしれないがもし回避する手段が用意されていない場合は、作業に多少の支障が出る(Desktop最上段の使用を控えるか我慢する)可能性がある。
今回は、新旧MacBook Pro比較においてFlameのバージョンを敢えて変えた為に、必ずしも同条件であるとは言えないが、現在主力で使っているマシンとバージョンとの比較によって体感的な所感も伝えられると思い、敢えて今回の選択とした。通常使用においては両者に大きな差を感じる事は無く、大きな問題は今の所感じなかったし、何よりFlameユーザーにとって今までのM1非対応の状況は大きな不安材料であった為、様々なアプリをラウンドトリップする傾向がある自分にとっては特に大きな購入動機となりそうだ。将来的にFlameもM1により最適化して行くことで、今後更にパフォーマンスが上がって行く予感がした。
検証:Blender
リアルタイムレンダリングであるEeVeeによるレンダリングは良好な結果が得られたものの、CPUとGPUを組み合わせて用いることが可能なCyclesでのレンダリングではWindowsマシンと大きな開きがあることから、2022年1月時点では最適化が進んでいない印象を受ける。ただ、2021年10月にはBlenderの開発資金である「Blender Development Fund」にAppleがPatronとして参画したことが発表されており、今後のアップデートへの期待は極めて大きい。M1 Maxの持つポテンシャルを3DCG制作でも有効に活かせるようになれば、ワークフローが大きく変革することになるだろう。
検証:Video Enhance AIおよびGigaPixel AI
最先端の機械学習のためのNeural Engineの検証として、AIを活用したアプリケーションであるTopaz Video Enhance AIおよびGigaPixel AIによるアップコンバート時間を計測した。Video Enhance AIでは自動車走行のムービー2種類をアップコンバートし、694フレームの1920x1080/mp4形式の素材をUHD3840x2160/ProRes HQへアップコンバートした際はM1 Maxが7分57秒と、Macbook ProやiMac Proよりも2~3倍の速度となっていた。
ただし、現時点ではいずれの機種よりもWindowsマシンのほうが高速に処理できている。また、GigaPixel AIによる静止画書き出しにおいても概ね同様の結果が得られた。
Topaz VideoEnhanceAIテーマ01:アップコンバート
Topaz VideoEnhanceAIテーマ02:アップコンバート
Gigapixel AIテーマ:アップコンバート
TEXT_神山大輝
EDIT_池田大樹(CGWORLD)
PHOTO_弘田充