人気ゲームや有名アニメを手掛けるSpooky graphicが作品づくりのポイントやリモートワークのコツを伝授!
人気ゲームや子供向けアニメを手掛けるだけにとどまらず、オリジナル作品の制作にもチャレンジしているSpooky graphic。幅広いコンテンツを生み出すうえで、PCのスペックや利便性にはどんなものが求められるのか。手掛けてきた作品の概要やこだわり、さらには働き方などを聞くとともに、導入しているマウスコンピューター製デスクトップPCの魅力や印象を語ってもらった。
ハヤシヒロミ氏
設立メンバーの1人でSpooky graphicの代表。プロデューサー兼ディレクターを務めるほか、CGクリエイターとしても活動する。
人気タイトルを数多く手掛けながらオリジナルキャラの制作に挑んだ時期も
CGWORLD(以下、CGW):来年でスタジオ設立20周年となりますが、これまでに手掛けてきた作品などについて教えてください。
ハヤシヒロミ氏(以下、ハヤシ):古くは2006年に、KONAMIの人気ゲーム『METAL GEAR SOLID』シリーズのアメコミ版を映像に落とし込んだ『METAL GEAR SOLID BANDE DESSINÉE』で映像の監督とアニメーション制作を担当。これを機に、その後の『METAL GEAR SOLID』
また、2008年にはNHKの語学番組『リトル・チャロ』で監督やデザイン、映像制作を担ったほか、任天堂から発売されたニンテンドー3DS用ゲーム『ガールズモード』シリーズのOP映像では企画からモーショングラフィックスを多用したムービーの制作までを担当するなど、作風がカワイイ系の作品にも参加。近年では、アニメ『モンスターストライク』のコンセプトアートとアートディレクションを4年ほど手掛け、直近ではAppleArcade用ゲーム『アメージング ボンバーマン』のゲーム内ミュージックビデオやUIのコンセプトであったり、MIXIのオリジナルショートアニメ『XPICE』のアートワークなどを担当しています。
CGW:作風や媒体などにこだわることなく、多彩な作品でさまざまな役割りを担ってきたことがわかります。これらの他にも、何か特別な取り組みなどはありますか?
ハヤシ:リトル・チャロを手掛けたことで自社の知名度が少なからず上がったので、これを機にオリジナルのキャラクターで収益を見込む方向性に若干シフトした時期がありました。そこで生まれたのがPILOTの『アヒル隊長』シリーズのリデザインや、モノコムサなどともコラボした『キャンディベア』などになります。
ただ、こういったキャラクターで商業的に成功することは簡単ではなく、狙ってヒットさせることも非常に難しいと痛感しました。そのため、現在はこういった取り組みはやめているのですが、かといってアニメーション関連の受託仕事だけをこなしていくというのも本意ではない。そこで最近は、従来の受託仕事をこなしながら、商業的な成功はあまり考えないでオリジナルアニメーションの制作にチャレンジしているところです。
CGW:20年の間でさまざまな紆余曲折があったことを感じさせますが、そんな貴社の特徴や強みはどんなところだと考えますか?
ハヤシ:単純にCGアニメーションなどを制作するだけでなく、企画やコンセプトアート、デザイン、絵コンテなどにも対応できる点でしょうか。これについては、既存のCGプロダクションなどにはなかなかない大きな特徴だと思います。
Chase the Cutie!! from Spooky graphic on Vimeo.
議論を重ねてキャラクターを形作るため最終形は最初の原案から大きく変わる
CGW:作品のデザインを手掛ける際には、どのような進め方をするのでしょうか?
ハヤシ:受託案件でデザインなどをゼロから考える場合は、過去のカラーはあまり前面に押し出さず、まずは資料の情報を良く理解した上で、昨今の流行なども取り入れながら進めるようにしています。キャラクターだけでなく全体の世界観や設定などもゼロから考えることも多いので、キーワードを踏まえつつ自分なりの方向性を固めていき、それをみんなで議論しながら進めていく流れが多いですね。
例えば『XPICE』の場合、主人公2人のモチーフは赤が「トウガラシ」、緑が「ワサビ」になっており、「トウガラシに合うキャラクター像はどのような感じか」など、いろいろな発想を取り入れながら何度も議論を重ねてキャラクターを形作っていきました。そのため、最初の原案と比べると、最終形は頭身も見た目もかなり変わりました。
一方で、『モンスターストライク』はすでにキャラクターが決まっていたので、背景や世界観のみを担当しました。ただ、描かなければならない場面が多く、コンセプトアートもかなりの数も描く必要があったため、定例会議ごとに複数枚のコンセプトアートを提出していた感じでした。
CGW:なるほど、デザインだけ見ても、さまざまな進め方や意識しているポイントがあるのですね。では、アニメーションの制作ではどのようなDCCツールを使用していますか?
ハヤシ:案件によっても異なりますが、最近はMayaが多いです。さらに、ゲームのイベントムービーなどでモーションキャプチャーを修正する際にはMotionBuilderを利用しています。アニメ案件では3ds Max、オリジナル作品ではBlender、コンポジットではAfter Effects、ゲーム関連のムービーではUnityなども使用していますね。
CGW:携わるコンテンツが幅広いので使用するソフトも多彩ですが、何か作業効率や生産性を上げるための取り組みなどはありますか?
ハヤシ:コロナ禍の影響もあり、ここ数年は出来る限りリモートワークを活用するようにしています。CG業界は、会議などがなければ基本的に個人作業となるため、通勤時間をなくすだけでもメリットは大きいでしょう。さらにいえば、この業界は少し内向的な人が多いようにも感じているので (笑)、その点を踏まえてもリモートワークの導入は良かったと実感しています。
CGW:リモートワークの導入にあたっては、どのような環境を構築したのでしょうか?
ハヤシ:まず、リモートデスクトップのために「Parsec」というソフトを使用。自宅からのリモート接続で会社のPCを使っても遅延がほぼなく、ローカルでの作業と遜色ないレスポンスの良さなので、アニメーションの作業もしっかりこなせる点は助かっています。また、コミュニケーション用としてZoomやSlackを活用しています。
これに加えてハード面では、自宅でもデュアルディスプレイで作業してもらうために、会社のPCのディスプレイポートに「仮想ディスプレイアダプタ」を取り付けています。このアダプタは数千円程度で購入でき、これを使えば会社のPCに2台のディスプレイを接続していなくても、自宅でデュアルディスプレイを実現できるという優れモノ。コスト面でとても重宝しています。
CGW:リモートワークは便利な一方で、社員とのコミュニケーションや人材育成などに難しさがあると思います。何か特別な取り組みなどは行っていますか?
ハヤシ:1つは、毎週月曜日に行っている全スタッフ参加の朝会で、「面白かった映画」や「地元の食べ物」といったテーマを、週替わりでスタッフから持ち寄ってもらい、語りあうようにしています。さらに、月~金の朝10時からの30分間、育成を目的とした朝練を実施。そこでさまざまなスキルにチャレンジしてもらい、その成果を金曜日のレクチャー会で披露しあうことで、スキルの共有とコミュニケーションの活性化をはかっています。
複数のソフトを立ち上げるのでメモリは64GB、マウスコンピューターを選んだ理由は「サポート体制」
CGW:CG制作ではさまざまなDCCツールを使用していますが、PC構成で重視するスペックは何でしょうか?
ハヤシ:1番は「メモリ」ですね。After Effectsはメモリをかなり使用しますし、複数のソフトを同時に起動して作業することも多いので、最近はほぼ64GBを搭載するようにしています。また、CPUやGPUは購入時に選べる最新世代のモデルを購入するようにしていますが、必ずしも最上位クラスである必要はなく、コストパフォーマンスを踏まえて選んでいます。
CGW:メモリを最優先する点は、多彩なDCCツールを活用するSpooky graphicの特色が表れていると感じます。そのような背景にあって、作業用のPCに「DAIV」や「MousePro」、「G-Tune」といったマウスコンピューター製のデスクトップPCを数多く導入している理由は何でしょうか。
ハヤシ:まず挙げられるのは、充実した「サポート体制」です。弊社にはPCを管理するシステムエンジニアのようなスタッフがいないため、技術者が来訪して不具合のある部品等を交換してくれる「オンサイト修理」を選べる点はとても魅力的です。また同じ意味合いで、長く使っていてもなかなか故障しない「品質の高さ」も見逃せません。
さらに、「価格」も重要なポイントでした。以前は別メーカーのPCを使っていたのですが、ストレージをHDDからSSDに切り替えるにあたってPCをリプレイスした際、1TBのSSDの価格がとてもリーズナブルだった点も、大きな理由となりました。そのほか、注文の際のカスタマイズにも柔軟に対応してもらえている点はとても助かっています。
Spooky graphicが導入したデスクトップPCの概要
Spooky graphicではメモリのスペックを重視しており、大半のPCで64GBを搭載している点が特徴だ。またCPUやGPUは購入時に選択できる最新世代を選んでいるが最上位モデルではなく、コストパフォーマンスを踏まえた上位モデルを選んでいる点もポイントとなる。ちなみに、スタッフが出社していたコロナ禍前は、スペースの問題から「コンパクトサイズのPC筐体を選んでいた」(ハヤシ氏)というが、リモートワークに移行した昨今はスペースを心配する必要がないため、筐体サイズを気にせず選んでいるそうだ。
DAIV-DQZ500H2(現行機)
- 価格
30万6,288円(税込)
- CPU
インテル Core i7-6700 プロセッサー (8M キャッシュ、最大 4 GHz)
- GPU
Quadro P4000
- メモリ
32GB
- ストレージ
480GB/SSD
- OS
Windows10 Pro
問い合わせ
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6636-4323(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6636-4321(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
TEXT_近藤寿成(スプール)