100万再生を超えるヰ世界情緒『ARCADIA』MV制作のshigu氏が、23万円を切るクリエイター向けPC「raytrek(レイトレック)」を検証!(後編:After Effects 編)
フォトリアルな質感と二次元的な立体造形の混ざったような、独特のハイクオリティ映像を手掛ける、シグワークスの大澤曉人氏。昨年末の紅白歌合戦でも氏の手掛けるモーションビジュアルがお茶の間を彩った、新進気鋭のCGクリエイターだ。その大澤氏が、20万強というコスト感でバランスの取れたスペックを提供するサードウェーブのPC「raytrek 4CXF」を制作環境として検証する。はたして、映像制作において最も重要なスペックとはどのようなものか? そのマシン構成の妙、どこを据え置き、どこを強化するか。判断するポイントを教えてもらった。
「raytrek 4CXF」でAfter Effectsを徹底検証
――前篇に続き、今度はAfter Effectsを使った検証についてはいかがでしたか?
大澤氏:20レイヤー程度で構成されている『ARCADIA』MVのAfter Effectsのプロジェクトをそのまま読み込んで検証してみましたが、オペレーションに関してはほぼ問題が無かったです。読み込みも操作も、キビキビと動きます。
基本的に自分の制作スタイルは、コンポジットで画をつくっていくタイプなので、ワークフロー上ここが最も重要。CPUにはCore i7-13700F(16コア24スレッド)とパフォーマンスの高いものが、グラフィックスにも標準以上のGeForce RTX4070が搭載されているので、ここは期待通りですね。
自分の制作環境( CPU 16コア32スレッド/RTX3090)と比較しても、オペレーションに関しては遜色ありません。もちろん、プレビューを掛けたりレンダリングをすると、掛けているコストに応じた時間の差はできます。しかし、70万以上掛けた自分のマシンと比べて、20万強で手に入るこの「raytrek 4CXF」のコストパフォーマンスは素晴らしいですね。レンダリング周りで工夫をすれば自分と同じ映像がつくれる性能です。
――実際の重たい作業経験からくる要求スペック、非常に参考になります。
大澤氏:AfterEffectsはCPU、メモリ、ストレージの性能が作業効率に影響します。標準構成の「raytrek 4CXF」で『ARCADIA』MVのAEプロジェクトを読み込んだ時、操作はスムーズに行えていました。
クリエイター向けとしてバランスの良い「raytrek 4CXF」
――スペック面での総合的な評価をお聞かせください。
大澤氏:これまでも語ってきましたが、基本スペックとしては十分です。コストパフォーマンスを意識するならかなりおすすめの構成と言えます。特にGPUで言えば、超ハイエンドクラスは性能は高いですが、3倍のお金を使って3倍速いわけではないですからね。RTX4070は、非常にコストパフォーマンスの高いチョイスだと思います。
――筐体デザインや取り回し、排熱性や静音性などについて、実際に使ってみた印象はどうでしたか?
大澤氏:シルバーが基調の落ち着いた印象で珍しい筐体ですね。黒くてLEDがビカビカなのが多いなかで、シンプルなデザインでいいと思います。自分は掃除なりメンテナンスなりで結構筐体を開けるほうなんですけど、マグネット式だったりして工具無しでやれるのはありがたいなと。排熱や音に関しても、特に気にならなかったです。
――初級中級クリエイター向けにPC選びのアドバイスをするなら、どんなところがポイントになりますか?
大澤氏:スペックに関しては、やりたいことが明確なら増強すべきポイントを増強すればいいと思います。リアルタイム処理重視ならGPUだし、映像制作ならメモリ、品質重視のCPUレンダリングならCPU、といった感じです。
もし、まだそういった専門性が明確でないなら、まずは「raytrek 4CXF」のようなマシンを購入すると長く使えると思います。最初からウルトラハイエンドを導入する必要があるとは思えません。使いこなせない可能性が高く、コスパで考えてしまうと正直悪いです。
数十万するハイエンドパーツ群は、コスパ度外視で速度を求める必要がある人が選べばよくて、手間とコスパで考えればこうしたBTOマシンは安心感とカスタマイズ性を備える優れた選択肢ではないでしょうか。
――最後に大澤さんの今後の抱負についてお聞かせください。
大澤氏:そうですね……。自戒も込めてといった感じなのですが、最近は根を詰めて映像制作に集中してしまっていると、かっこよさとかルックにばかり、こだわりすぎてしまうことがあるなと思うようになりました。
改めて映像というものの本質を振り返ると、ただそれは“伝えるための媒体に過ぎない”はずなんですよね。その本質を見逃して、ただルックばかりを追い求めてしまうと、どんどん変な方向に行ってしまいかねない。“必要なことを伝えるために視覚的に訴えかける”ことが重要なのであって、かっこよさが本質なのではないんですよね。
なので、いまは“伝えるべきことがきちんと伝わる視覚表現”を徹底していくのが目標であり、今後も目指すべきところだなと考えています。
―― ありがとうございました!
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TEXT_髙木貞武
編集_藤井紀明(CGWORLD)
PHOTO_Tomohiro Takeshita