100万再生を超えるヰ世界情緒『ARCADIA』MV制作のshigu氏が、23万円を切るクリエイター向けPC「raytrek(レイトレック)」を検証!(前編:Cinema 4D)
フォトリアルな質感と二次元的な立体造形の混ざったような、独特のハイクオリティ映像を手掛ける、新進気鋭のCGクリエイター大澤曉人氏。その大澤氏が、20万強というコスト感でバランスの取れたスペックを提供するサードウェーブのPC「raytrek 4CXF」を制作環境として検証する。はたして、映像制作において最も重要なスペックとはどのようなものか? そのマシン構成の妙、どこを据え置き、どこを強化するか。判断するポイントを教えてもらった。
少数精鋭で独自の世界観を生み出す
――まずは大澤さんのクリエイター歴について教えてください。
大澤曉人氏(以下、大澤氏):大澤です。映像制作会社での勤務を経て独立し、以降フリーランスで活動して2年ほどになるでしょうか。のべ4~5年ほど、映像制作を続けてきています。
――映像制作に携わるきっかけは? 学校で学ばれていたのでしょうか。
大澤氏:実はCGや映像を学ぶような学校には行っていないんです。18の頃に制作会社に入ってから本格的にやり始めたという感じで。CGビジュアルも映像もどちらも扱い、何でもやるという社風の会社だったので、そこで色々と学んできたことは大きいかもしれません。CGビジュアルを用意して、コンポジットでフォトリアル調の2.5次元的表現に落とし込んでいく基本的なフローは、その経験から来ていますね。
――これまでどんな作品を手がけられてきたのでしょうか?
大澤氏:ミュージックビデオ(MV)では、CGWORLD290号「新世代クリエイター」特集でも取り上げてもらった、ヰ世界情緒『ARCADIA』のMVが、最新作です。詳しくは本誌記事をぜひご覧ください、ということで!(笑)。
――大澤さんの作品はリアルとスタイライズが交錯した独特な画づくりが魅力です。ご自身はどのようなスタイルのクリエイターだと思いますか?
大澤氏:3Dフィギュアがリアルに動いているようなとか、リアルと3D造形の融合的な、といったことはよく言われるのですが、表現の方向性としては、特にそこ(2.5次元的表現)にこだわりはないんですよ。特にいまは、もっと二次元調に、もっとセルアニメに寄せていくような方向に気持ちとしては向かっていて、スタイルが変わりつつあります。
また、見た目だけでなくアウトプットの手法としても、映像作品だけでなくUnity等ゲームエンジンを用いたリアルタイム案件なども時流として増えていますし、また今後もいろいろとやりたいこと、やっていくことは変わってくるのではないでしょうか。
――普段の映像制作のワークフローについて教えてください。
大澤氏:MVについては一人で請けることもありますが、基本的にすべての作業を一人で完結して仕上げる、ということは少ないですね。仕事の半分以上は2人以上でやっていると思います。仕事場もよく組む2人で借りていますし、それ以外にTwitterで知り合った人と組むこともよくあります。
自分はモーショングラフィックスやコンポジットといった最終的な映像に仕上げるところが得意で、それ以外の領域を組む人にお願いする感じ。たとえばモデリングなら、背景のプロップなんかは自分で作りますが、キャラクター造形は得意な人に任せたほうが絶対に良いなと。リアルタイム関連だと、Unityのテクニカルな部分なんかも専門の人に任せたりしますね。そして自分は得意な領域に注力する、と。
――使用ツールについては?
大澤氏:CG制作ではCINEMA 4Dを、コンポジットではAfter Effectsをメインツールとしています。そのほかでは、AfterEffectsが苦手な処理を補完するべく、スポット的にDavinci Resolveを使います。本当は、After Effectsひとつで済めばベストなのですが、どうしてもソフトによる得手不得手があるので。
それと最近は、今後の移行もふまえてBlenderを触り始めています。安定性やアップデートの頻度、UIの触りやすさ、それにリアルタイム3Dとの親和性など総合的に考えると、将来的にはBlender&AE体制も模索しておきたいと考えています。
――CMやMVなどジャンルごとのおおまかな制作期間はどれくらいですか?
大澤氏:それこそ、ものによるところは大きいですが……。広告案件だと2週間とか1カ月程度、主にはWebCMやTVのCGカットシーンなんかですね。全体ではなく、スポットで請けることもよくあります。基本的に自分たちは少人数体制ですし、短納期であることがほとんどなのでスケジュール的には大変ですね。
そこが出たら、あとはどうスムーズに運用していくかという感じ。ただ2人でオフィスを借りていることもあり面と向かってコミュニケーションをとりながら進められるので、そこはやりやすいですね。ミュージックビデオの制作は、それよりは長くて2~3カ月くらい。尺は長いですけどね。
「raytrek 4CXF」でCinema 4Dを検証
――現在の制作環境についてお聞かせください。 また特に重視するスペックはどの部分ですか?
大澤氏:今の環境は、自宅にメインPCを置いて、そこにリモートでつないで作業を行なっています。映像制作用にがっつり組んだPCなので、かなりハイスペック仕様になっています。
CPUがRyzen 9 5950X、メインメモリは32GB×4で128GB(!)、GPUにはGeForce RTX 3090。自分は詳しくないので、友人に組んでもらいました。
総額70万くらいはするモンスタースペックですね!
大澤氏:そうですね。やっぱり個人または少数で映像制作をしていくとなると、徐々にスペックは上げていきたくなり最終的にこんなになってしまいました(笑)
――今回の検証で「raytrek 4CXF」を使用してみた印象はいかがですか?
大澤氏:自分の作業マシンとは、そもそも掛けるコスト感が異なる比較になってしまうので、まず「raytrek 4CXF」第一印象からですね。Core i7-13700FにGeForce RTX 4070、この構成が23万円を切るかたちで提供されているというのは、かなりコストパフォーマンス的にも良いと思います。
それに、これくらいスペックのものがセットアップされた状態で届くのは、PCに詳しくない人にとってはありがたい。僕はたまたま詳しい友人がいたのでなんとかなりましたが、自分で組むとなるとイチから覚える必要もあり、保証の部分でも不安です。BTOなので自分好みにカスタマイズできる点をとっても、経験者はもちろん、これからCGを始められる方にもおすすめですね。
――なるほど、Cinema 4Dを使った検証についてはいかがでしたか?
大澤氏:ベンチマーク等の基本的なスピードや、『ARCADIA』MVのシーンを読み込んでのオペレーション時の動作速度を見ると、優秀な結果を出していました。それこそモデリング、テクスチャの取り扱い、アニメーションなどの作業はいつもと変わらず作業できました。各アセットの読み込みについても、ストレージ性能(NVMe Gen3 SSD)は十分。GPUレンダラーのプレビューの調子もよく、安定して使えていました。正直、これでできない作業は無かったです。
――「raytrek 4CXF」のメモリは最大128GBまで追加できるので用途に合った構成が可能ですね。
大澤氏:メモリ32GBでしたらプラス 14,000円(※2023年6月時点)から選択できるそうなので、いくつもツールを同時起動しながら制作するスタイルの場合や大規模なシミュレーションが必要な場合は気軽に追加できるのもBTOである「raytrek」ならではでしょう。自分のようにOctaneRenderなどののGPUレンダラーメインで使用する場合は当然GPUの性能が重視されます。RTX4070の性能は十分ですのでこれでできない表現はありません。
一方でCinema 4D標準の機能はCPUの性能が重要なことも多く、「raytrek 4CXF」に載っているCore i7-13700Fは(16コア/24スレッド 、クロック周波数 5.20 GHz ※ターボブースト利用時)は第一線級のスペックだと思いますので、Cinema 4Dメインで作業される方はかなりおすすめの構成となりますね。
――同じツールでも、目指す表現やよく使う機能で重要なスペックが変わってくるのですね。
後編では、After Effectsを用いた検証その他、映像制作に必要な環境全般についての大澤氏の知見をお届けできればと思う。
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TEXT_髙木貞武
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EDIT_藤井紀明(CGWORLD)