2025年11月8日(土)・9日(日)の両日にわたり、ベルサール新宿グランドにて「Tokyo Anim Unite 2025」が開催された。イベントはアートイベントホールで行われる参加型の催しと、シアタールームで行われるアーティスト講演の大きく2つで構成。本稿ではアートイベントホールの各所の様子と、講演のひとつ「アクションアニメーションに効く実践テクニック:Ver.2」についてレポートする。
イベント概要
Tokyo Anim Unite 2025
日時: 2025年11月8日(土)10:00〜19:00/11月9日(日)9:30〜19:00
会場:ベルサール新宿グランドコンファレンスセンター 5F
チケット:アートイベントホールパス(2日券:7,370 円/学割:2,000 円)、アートイベントホール+レクチャーパス(1日券:15,290 円、2日券:27,280円/学割20%オフ)
共催:Tokyo Anim Unite 企画委員会(合同会社Anitoon/株式会社ワコム/CG-ARTS(公益財団 法人画像情報教育振興協会))
主幹: 株式会社ワコム
問い合わせ先:Tokyo Anim Unite企画委員会事務局(株式会社ワコム内)
animunite.jp
様々なアーティストとスタジオを繋ぐロサンゼルスのイベントを東京でも
このイベントはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオで『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』(2022)や『ウィッシュ』(2023)などを手がけたアニメーターのヨーヘイ(小池洋平)氏が、「世代や国境、立場を超えてアーティストがつながり合える機会をつくりたい」という想いから2024年に立ち上げた念願のイベントだ。2年目となる今年はCGを学んでいる学生の参加者が多く見受けられた。
イベントはアートイベントホールで行われる参加型の催しと、シアタールームで行われるアーティスト講演の大きく2つで構成されている。
ヨーヘイ氏がこのイベントを開催する上でお手本としたのは、ロサンゼルスで開催されている「CTN Animation Expo」や「LightBox Expo」。ここはファンだけでなく、映像業界やゲーム業界で活躍する現役のアーティストやビジネス関係者が一堂に会し、それぞれに交流を深めたり著名なアーティストの講演を聞いて技術を磨いたりするイベントだ。実際にヨーヘイ氏自身も、Blizzard Entertainmentのブースにデモリールをもち込んだことをきっかけに、キャリアを切り拓いていった経験をもっている。
アートイベントホールはプロのアーティストによるポートフォリオレビュー、ライブアートパフォーマンス、フィギュアドローイングセッションなどのクリエイティブな内容から、スタジオプレゼンテーション、クリエイター・コネクトブースなど、アーティスト側と企業側を結びつける場も設けられていた。
このほか、フィギュアアーティストによる作品展示や、ワコムの最新タブレットの試用展示なども用意されており、多くの人々で賑わっていた。また細かなところでは来場者に向けたフリードリンクのサービスもあり、このあたりも海外のイベントを参照した空気感を出すのにひと役買っていた。
▲造形作家の中西宏彰氏と蔦本大樹氏のフィギュア展示。キャラクターやクリーチャーなど個性豊かな造形が並ぶ
フィギュアドローイングセッション
コンテンポラリーダンサーのMIDORI氏がモデルを務め、ポーズを取る1分間のうちに参加者がデッサンを仕上げるトレーニング。ジェスチャードローイングとも呼ばれるこの手法は、デッサン力を鍛える効果があるとされ各所で採り入れられている。フィギュアではなく目の前でモデルがポージングしてくれる貴重な機会で、参加者は真剣な眼差しでクロッキー帳に鉛筆を走らせていた。また、ゲストとしてストーリーボードアーティストの栗田 唯氏も参加した。
ポートフォリオレビュー
シアタールームで講演した第一線で活躍するアーティストに自身のポートフォリオを見せ、直接レビューやフィードバックを受けられる。ジョン・アオシマ氏には通訳が付き、学生にアドバイスを与えていた。
クリエイター・コネクトブース
株式会社アニマ、CafeGroup株式会社、株式会社白組、株式会社StudioNocoらがブースを出し、学生やアーティストからの就業相談を受けていた。単純に会社説明を受けるだけでなく、ポートフォリオを見せ、採用担当や現役のアーティストから応募者個々人に合ったアドバイスを受けられることもこのブースの魅力だ。
デイビッド・ハン氏による実践的なアニメーションテクニック講演
講演は両日とも3講演ずつが組まれた。『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)のアニメーターであるデイビッド・ハン氏、『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』(2019)の東條あずさ氏、『リロ&スティッチ』(2022)の島田竜幸氏、『知る・見る・描くの美術解剖学ドリル』などの著作がある加藤公太氏、『Ultraman: Rising』(2024)の共同監督であるジョン・アオシマ氏、Netflix Animation『BLUE EYE SAMURAI/ブルーアイ・サムライ』(2023)の冨ヶ原美菜子氏らが登壇。講演時間中は参加者のほとんどがシアタールームに移動し、熱心に聴き入る様子が印象的だった。
ここからはシアタールームで行われた講演のうち、デイビッド・ハン氏の「Favorite Practices for Action Animation: Version 2(アクションアニメーションに効く実践テクニック:Ver.2)」についてレポートする。
ハン氏は『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023)、『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』(2023)、Riot Gamesの『2XKO』(2025)などのプロジェクトに携わったアーティストで、昨年に引き続いての講演となる。そのため、講演内容も昨年のものをブラッシュアップした「Version 2」となった。主なトピックは5つ。リール上映の後、それぞれのトピックについて背景にある考え方を交えながら語られた。
1つ目のトピックは、観客の注目を誘導し、シームレスなカットを成立させるためのカメラワークについて。
アクションシーンにおいて、観客がどこに注目するか、どのように映像を受け取るかを意識することの重要性が語られた。特にカットが切り替わる場面では、観客の体験を途切れさせないための考え方が紹介され、アクション表現におけるカメラワークの役割についてあらためて考えさせられる内容となった。
2つ目は、アニメーションに生命感を与えるためのリズムづくりについて。
ハン氏はリズムを「見えない土台」と表現し、動きの印象やエネルギー感を大きく左右する要素であると説明した。リズムの選択によって、キャラクターの性格や感情、シーン全体のトーンまでもが変化することが示され、アクションに限らず幅広い表現に通じるテーマとして紹介された。
また視聴者にインパクトを与える演出については、複数の要素に分けて解説された。
アクションの瞬間をより強く印象づけるための考え方が紹介され、どの要素を、どのタイミングで用いるかが重要であることが語られた。すべてを強調するのではなく、最も効果的な瞬間を見極めることの大切さが強調されたのも印象的だった。
さらに3Dのアニメーションを2Dのように感じさせる技術「スクリーンスペース・アニメーション」についても言及。 画面上のシルエットや動きの美しさを重視することで、観客にとって直感的に理解しやすいアクション表現につながるという考え方が示され、ハン氏のアニメーション哲学の一端が垣間見える内容となった。
最後のトピックは、映画などから着想を得たダブルアクション(ダブルカット)について。
アクションシーンにおけるカット構成の工夫として、観客の体感や印象をより強めるための考え方が語られた。映像をどのように受け取るかという観点から構成を考える姿勢が、全体を通して一貫していた点も印象的だ。
講演の最後にはボーナストラックとして、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の主人公マイルズ・モラレスのアニメーションについても触れられた。キャラクターの個性や成長をどのように動きとして表現するかという思想が紹介され、作品づくりに対する深い洞察が感じられる内容だった。
講演の締めくくりには短いQ&Aの時間が設けられ、現役のアーティストや学生など、幅広い参加者から質問が寄せられた。実践の現場に立つ人々の関心の高さを窺わせるやり取りが続き、会場は最後まで熱気に包まれていた。
TEXT&PHOTO_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)