手軽にフルボディトラッキングが行えるモバイルモーションキャプチャー「mocopi(モコピ)」。ソニーは9月10日(木)、mocopiのモーションデータを3ds Max上でリアルタイムに同期し、標準搭載されているキャラクターリグのBiped(.bip)ファイルに直接変換できる「mocopi Receiver plugin for 3ds Max」をリリースした。

本プラグインは、ソニーとアニメ制作会社であるanimation studio42(株式会社スタジオフォートゥー。以下、studio42)の密接な連携によって開発された。studio42が手がける『勇者パーティを追い出された器用貧乏』2期での本格的な活用を見据え、現場で期待される導入効果や開発の裏側について、両社のキーマンに話を聞いた。(※冒頭の画像は『勇者パーティを追い出された器用貧乏』主人公オルン・ドゥーラの3DCGモデル)

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    Information

    TVアニメ『勇者パーティを追い出された器用貧乏』2期も鋭意制作中!
    シリーズ累計発行部数640万部を突破した大逆転の異世界王道ファンタジー。都神樹による原作小説は講談社Kラノベブックスから刊行中で、ニコニコ漫画「水曜日のシリウス」にてコミカライズが好評連載中

    イベントでのひと言からはじまった、数ヶ月のプロトタイプ開発

    アニメ制作関連のとあるイベントでのやり取りが、今回のプラグイン開発のきっかけとなった。会場で展示されていたmocopiを目にしたstudio42の室薗勇輝氏は、ソニーの開発陣へ「3ds Maxでも直接動かせるようになると嬉しい」と伝えたという。当時の状況について室薗氏は、「ダメ元で伝えたひと言から、まさか数ヶ月でプロトタイプを持ってきてくれるとは思ってもみませんでした」と振り返る。

    室薗勇輝氏
    株式会社スタジオフォートゥー 執行役員/3DCG部ディレクター

    当時、ソニーの開発チーム内には3ds Maxの利用経験があるメンバーはおらず、手探りでのスタートとなった。開発を担当した川島嵩之氏は、「3ds Maxの社内ユーザーはいませんでしたが、アニメ業界で広く使われているツールへの対応は不可欠だと感じました」と振り返る。室薗氏の要望を受け、チームは即座に制作へ踏み切った。

    川島嵩之氏
    ソニー株式会社 ニューコンテンツクリエイション事業部 XR事業部門 空間コンテンツ制作ソリューション部

    「3ds Maxとはどんなものか」、「どのリグに対応すべきか」といった基礎的なヒアリングからはじめて、段々と仕様を検討していった。こうしてイベントでの出会いから間もなく、3ds Max上でリアルタイムにキャラクターが連動するプロトタイプが提供され、実用化に向けた検証が本格的にスタートした。

    3Dレイアウトから基礎モーションの効率化

    アニメーションの作成において、キャラクターの配置や大まかな演技をつける初期工程は、アニメ特有の空間演出や身体表現のノウハウが求められるため、経験の浅いCGアニメーターにとっては作業が滞りやすいポイントだった。

    しかし、mocopiを活用してベースのアニメーションを作成できれば、このようなCGアニメーターでも後続の作業に対応しやすくなり、制作全体の最適化につながる。

    ▲12点のセンサーを用いた「mocopi Proキット」

    また、ゆくゆくは各CGアニメーターが、自身でmocopiを使ってアニメーションを収録することで、演出的なところまで踏み込んだ提案ができるようになることも期待される。

    中間ソフトを介さず、直接mocopiから3ds Maxへ

    室薗氏が最も要望していた機能でもあるのが、「Biped(.bip)ファイルへのダイレクト変換機能」だ。従来、モーションキャプチャで取得したデータを、Bipedに読み込ませるには、外部の中間ソフトを経由し、手動で骨格の紐付けやデータコンバートを行う必要があった。

    今回のプラグインでは、直接「.bip」形式へ変換できる仕組みを実装し、中間ソフトを経由しないシンプルなワークフローを構築した。これにより、データ移行に伴う設定作業や工数が削減され、すぐにアニメーション素材として活用できるようになる。

    また、3ds Maxのビューポート上で3Dモデルがアクターの演技とリアルタイムに同期する機能も備えている。ポーズの確認やモデルめり込みなどをその場でチェック・調整することが可能だ。

    ▲アクターとmocopi、3ds Maxがリアルタイムに連動する様子

    モブキャラの効率化と、若手アニメーターへの「教育」での活用

    今後、mocopiと本プラグインの活用が期待される領域として、室薗氏は「モブキャラのアニメーション」と「人材育成」の2点を挙げた。

    近年のアニメ作品では、群衆が登場するシーンや大規模な戦闘など、多数のキャラクターを配置・動作させる演出が多く見られる。これらをすべて手付けで制作するのは膨大な工数がかかるため、モブキャラの動きが制限されることも多かった。mocopiを活用して多様な基礎モーションをあらかじめ蓄積しておけば、モブキャラへ手軽に自然な動きをつけられる。見せ場となるカットには手付けのスキルが高いCGアニメーターを集中させ、遠景はキャプチャデータで効率的に補うといった役割分担が可能になる。

    さらに、人材育成に役立つことも期待される。経験の浅い若手は、自ら動いたデータを反映させることで、身体の連動や重心移動の感覚を理解しやすくなる。加えて、キャプチャしたデータから「どのキーフレームを削ればアニメらしいメリハリのある動きになるか」を習得する教材としての活用も考えられており、作業の効率化だけでなく、スキルアップになることも期待されている。

    現場と開発のフィードバックから生まれるツール改善

    今回のプラグイン制作は、ソニーとstudio42が直接意見を交わしながら進められた取り組みである。3ds Maxの深い知見を持つstudio42からのフィードバックと、それに応じるソニー側の迅速な開発対応によって、現場の声を反映した機能が整えられてきた。

    ソニー側は今後もユーザーの要望を取り入れたアップデートを継続していく方針であり、studio42側も表現の幅を広げるツールとして『勇者パーティを追い出された器用貧乏』2期の制作で運用を本格化しようと進めている。制作現場の負荷を減らし、よりクオリティの高いアニメーション表現を支えるツールとして、今後の展開に期待が集まる。

    ©都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会

    「mocopi Receiver Plugin for 3ds Max」
    ダウンロードはこちら

    PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota
    TEXT_CGWORLD
    EDIT_高橋拓也/Takuya Takahashi(CGWORLD)