『楽園追放』の公開から12年。正統続編となる『楽園追放 心のレゾナンス』が、2026年11月13日(金)に劇場公開される。公開に先駆け、5つのティザーPVを手がかりに、東映アニメーションの新チーム・NOISEによる画づくりを前後編で紹介。前編では、PVの制作背景と、巨大メカの変形に迫力を生む工夫に迫る。
INFORMATION
『楽園追放 心のレゾナンス』 ティザーPV
2026年11月13日(金)劇場公開
監督:水島精二
脚本:虚淵 玄(ニトロプラス)
企画・製作:東映アニメーション
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STAFF
5つのPVで伝える作品世界と、その舞台裏で進む本編の画づくり
CGWORLD(以下、CGW):まずは、第1弾から第5弾までのティザーPVの制作背景についてお聞かせください。
野口光一氏(以下、野口):PVでは一貫して、『楽園追放 心のレゾナンス』への期待を高めていただくことを目指してきました。第一弾は、新しい主人公のガブリエルが、猛吹雪の雪山を1人孤独に歩いているのみ。まずは彼女と、今回の世界観を見せるところから始まりました。
久目健人氏(以下、久目):私はモデリングスーパーバイザーとして、モデルの制作や品質管理を担当しています。第一弾は、作品の方向性を確認する試作に近い映像でした。第二弾から、本番仕様でのモデルやルック、レンダリングなどの本格的な検証を進めました。
第一弾ティザーPV
CGW:第二弾は、アーハンをはじめとするメカのアクションが盛りだくさんでした。
荻田直樹氏(以下、荻田):私はアニメーションスーパーバイザーとして、カットの制作とディレクションを担当しています。第二弾の頃は本番用モデルが揃いきっておらず、絵コンテが完成しているパートも少なかったので、PVで見せることを前提に制作カットを選び、足りないものは自分で補いながら進めました。
CGW:ガブリエルのお尻を映したカットには、前作ファンに対するサービス精神を感じました。
野口:あれは、サービスしすぎたかなと(笑)
荻田:あのカットも、ちゃんと絵コンテに描いてあったんですよ(笑)。第二弾公開後は、そこだけ突出して再生数が伸びていましたね。
第二弾ティザーPV
CGW:第三弾ではアルマ、ダネル、ラグエルも登場し、メインキャラクターが揃いましたね。
久目:第二弾の公開を目指して実際にカットをつくる中で、モデルへの修正要望がいろいろ出てきました。それを少しずつ反映していき、第三弾ではかなり仕上がった状態の本番用モデルを見せられるようになりました。
大江嵐丸氏(以下、大江):第三弾の時点では、まとめてお見せできる映像が縦穴のシークエンスのみだったんです。PV用の編集は宣伝部が担当していて、制作側はその時点で出せる本編のカットを選んで渡しています。
CGW:PVの公開をマイルストーンにして、本編の制作を進めているわけではないのですね。
大江:基本的には、絵コンテが完成しているところから制作しています。PVで見せたいカットがあっても、まだ出せないこともあるので、毎回、どこを切り取るか悩みます。
第三弾ティザーPV
CGW:第四弾は、アバンが中心だそうですね。
大江:その時点でお見せできる映像の中から選んだ結果、大泉スタジオが担当するアバンパートのカットが8割以上になりました。
第四弾ティザーPV
CGW:第五弾では、ペネムを含めた5人の関係性も見えてきて、期待が膨らみました。
野口:第五弾は、5人の物語であることが伝わる構成を意識しています。それ以前のPVでお見せしたメカやアクション、世界観に加え、彼女たちがどんな物語をくり広げるのか、楽しみにしていただきたいですね。
第五弾ティザーPV
ワンカットで魅せる、巨大メカの変形とスケール感
CGW:第2弾のメカフォールン大型が変形する長尺カットは見応えがありました。
野口:荻田さんが3ヶ月がかりで仕上げた力作です。もともとの絵コンテではカットを割って変形を見せる想定でしたが、見事なワンカットへと再構成してくれました。
荻田:途中で別の作業もしているので、3ヶ月間、ずっとこのカットだけをつくっていたわけではないんです。それなのに、野口さんがいろいろなところで「3ヶ月かかった力作!」と紹介してくださる(笑)。本カットは、自分にどういう立ち回りができるのか、初めてご一緒する野口さんや水島精二監督に知っていただく機会でもありました。まだモデルが揃いきっていない中でも、先行して着手でき、今後の品質の目安にもなるカットだと思ったので、「自分だったらこう見せる」というアイデアも積極的に盛り込んで提示しました。
CGW:そのアイデアというのは?
荻田:当初は絵コンテに描かれた変形をそのままつなげようとしたのですが、ワンカットとして見たときに、掴みが弱かった。そこで、カット頭に大量のフォールンドロイドが動き回る場面を入れ、そこから画面奥の巨大な構造物へカメラを寄せる構成にしました。「何が起こるんだろう」と観客の関心を引いたところで、構造物に光の筋が走り、変形が始まる。いきなり変形を見せるのではなく、建物だと思っていたものが動き出す驚きをつくりたかったんです。
大江:外装以外の内側のパーツは、ほとんど荻田さんが本カット用に足したものなんです。
荻田:元のモデルも変形できる構造にはなっていましたが、変形中に外装の隙間から見える内部機構の多くは、元のモデルにはないものです。実際に動かしながら、ここに部品があれば密度が出る、ここでも何か動けば格好良くなると思ったパーツや動きを、アドリブで足していきました。機構としての整合性よりも、変形していく画の格好良さを優先しています。
CGW:アーハンの変形とはちがう面白さですね。
荻田:同じことをしても新鮮味がありませんし、サイズもちがいます。メカフォールン大型の場合は、細かな機構が大量に動くところを、比較的しっかり見せることで、重量や迫力、スケールを感じられるようにしています。
[第二弾ティザーPV]メカフォールン大型の変形を、16秒のワンカットで描き切る
第二弾ティザーPVの制作後に再構成された、本番用のレーダーアレイ群廃墟
レーダーアレイ群廃墟は、第二弾ティザーPVでメカフォールン大型が変形したカットの舞台だが、第二弾の制作時点では本番用モデルが未完成だった。広い空間を自在に移動するカメラワークを成立させるため、荻田氏は周囲の山々や、中央部の平地と建造物を備えたカット専用の仮モデルを制作した。最初期に用意された絵コンテ用の参考モデルは空間が狭く、キャラクターやメカを移動させたとしても、すぐに端まで到達してしまう規模だったため、荻田氏が大きく拡張。本番用モデルに必要な広さを検証した上で、地形と空間構成を全面的に設計し直した。
INFORMATION
月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.339(2026年11月号)
特集:ゲームグラフィックス 2026
定価:1,540円(税込)
判型:A4ワイド
総ページ数:144
発売日:2026年10月9日
TEXT&EDIT_尾形美幸/Miyuki Ogata(CGWORLD)
文字起こし_大上陽一郎/Yoichiro Oue
PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota