『楽園追放』の公開から12年。正統続編となる『楽園追放 心のレゾナンス』が、2026年11月13日(金)に劇場公開される。公開に先駆け、5つのティザーPVを手がかりに、東映アニメーションの新チーム・NOISEによる画づくりを前後編で紹介。前編では、PVの制作背景と、巨大メカの変形に迫力を生む工夫に迫る。

記事の目次
    ※本記事は月刊 『CGWORLD + digital video』vol.339(2026年11月号)掲載の「『楽園追放 心のレゾナンス』ティザーPV」を再編集したものです。

    INFORMATION

    ▲『楽園追放 心のレゾナンス』本予告|11月13日劇場公開

    『楽園追放 心のレゾナンス』 ティザーPV

    2026年11月13日(金)劇場公開
    監督:水島精二
    脚本:虚淵 玄(ニトロプラス)
    企画・製作:東映アニメーション
    rakuen-tsuiho-r.com

    STAFF

    ▲左から、ラインプロデューサー・大江嵐丸氏、モデリングスーパーバイザー・久目健人氏、アニメーションスーパーバイザー・荻田直樹氏、プロデューサー・野口光一氏

    5つのPVで伝える作品世界と、その舞台裏で進む本編の画づくり

    CGWORLD(以下、CGW):まずは、第1弾から第5弾までのティザーPVの制作背景についてお聞かせください。


    野口光一氏(以下、野口):PVでは一貫して、『楽園追放 心のレゾナンス』への期待を高めていただくことを目指してきました。第一弾は、新しい主人公のガブリエルが、猛吹雪の雪山を1人孤独に歩いているのみ。まずは彼女と、今回の世界観を見せるところから始まりました。


    久目健人氏(以下、久目):私はモデリングスーパーバイザーとして、モデルの制作や品質管理を担当しています。第一弾は、作品の方向性を確認する試作に近い映像でした。第二弾から、本番仕様でのモデルやルック、レンダリングなどの本格的な検証を進めました。

    第一弾ティザーPV

    ▲2024年1月27日公開。雪山を歩くガブリエルのシーンは、北八ヶ岳の実写撮影素材と3D素材を組み合わせて表現。第一弾は本番制作に先立つ試作映像で、モデルやルック、アニメーションの方向性を確認した

    CGW:第二弾は、アーハンをはじめとするメカのアクションが盛りだくさんでした。


    荻田直樹氏(以下、荻田):私はアニメーションスーパーバイザーとして、カットの制作とディレクションを担当しています。第二弾の頃は本番用モデルが揃いきっておらず、絵コンテが完成しているパートも少なかったので、PVで見せることを前提に制作カットを選び、足りないものは自分で補いながら進めました。


    CGW:ガブリエルのお尻を映したカットには、前作ファンに対するサービス精神を感じました。

    野口:あれは、サービスしすぎたかなと(笑)


    荻田:あのカットも、ちゃんと絵コンテに描いてあったんですよ(笑)。第二弾公開後は、そこだけ突出して再生数が伸びていましたね。

    第二弾ティザーPV

    ▲2024年11月16日公開。戦闘飛行中、アーハンが人型から球体へ変形し、再び人型へ戻るシーン。絵コンテにはなかった動きだが、前作にない見せ場をつくるため荻田氏が加えた。アーハンのモデルは完全変形しないので、球体から少し各パーツを動かせるモデルと、完全な人型モデルの2種類を併用。人型側の手脚を限界まで畳み、途中でモデルを差し替えることで、戦闘の勢いを保ちつつ自然な変形を巧みに成立させている

    CGW:第三弾ではアルマ、ダネル、ラグエルも登場し、メインキャラクターが揃いましたね。


    久目:第二弾の公開を目指して実際にカットをつくる中で、モデルへの修正要望がいろいろ出てきました。それを少しずつ反映していき、第三弾ではかなり仕上がった状態の本番用モデルを見せられるようになりました。


    大江嵐丸氏(以下、大江):第三弾の時点では、まとめてお見せできる映像が縦穴のシークエンスのみだったんです。PV用の編集は宣伝部が担当していて、制作側はその時点で出せる本編のカットを選んで渡しています。


    CGW:PVの公開をマイルストーンにして、本編の制作を進めているわけではないのですね。


    大江:基本的には、絵コンテが完成しているところから制作しています。PVで見せたいカットがあっても、まだ出せないこともあるので、毎回、どこを切り取るか悩みます。

    第三弾ティザーPV

    ▲2025年11月22日公開。縦穴内で、リビルダーから逃れるアーハン。リビルダーディベロプメントリードの多家正樹氏がMayaのBifrostで制作し、形を変えながら高速でうごめく姿を表現した

    CGW:第四弾は、アバンが中心だそうですね。


    大江:その時点でお見せできる映像の中から選んだ結果、大泉スタジオが担当するアバンパートのカットが8割以上になりました。

    第四弾ティザーPV

    ▲2026年3月29日公開。手前にガブリエル、奥にペネムを配したアバンパートのカット。NOISEのメインツールは3ds Maxだが、アバンは東映アニメーションの大泉スタジオがMayaで制作している

    CGW:第五弾では、ペネムを含めた5人の関係性も見えてきて、期待が膨らみました。


    野口:第五弾は、5人の物語であることが伝わる構成を意識しています。それ以前のPVでお見せしたメカやアクション、世界観に加え、彼女たちがどんな物語をくり広げるのか、楽しみにしていただきたいですね。

    第五弾ティザーPV

    ▲2026年7月22日公開。仮面を付けたフォールンが映る、第五弾PVの最終カット。第五弾は5人のメインキャラクターを登場させ、それぞれの個性と物語を伝えながら、本編への期待を高める構成となっている

    ワンカットで魅せる、巨大メカの変形とスケール感

    CGW:第2弾のメカフォールン大型が変形する長尺カットは見応えがありました。


    野口:荻田さんが3ヶ月がかりで仕上げた力作です。もともとの絵コンテではカットを割って変形を見せる想定でしたが、見事なワンカットへと再構成してくれました。


    荻田:途中で別の作業もしているので、3ヶ月間、ずっとこのカットだけをつくっていたわけではないんです。それなのに、野口さんがいろいろなところで「3ヶ月かかった力作!」と紹介してくださる(笑)。本カットは、自分にどういう立ち回りができるのか、初めてご一緒する野口さんや水島精二監督に知っていただく機会でもありました。まだモデルが揃いきっていない中でも、先行して着手でき、今後の品質の目安にもなるカットだと思ったので、「自分だったらこう見せる」というアイデアも積極的に盛り込んで提示しました。


    CGW:そのアイデアというのは?


    荻田:当初は絵コンテに描かれた変形をそのままつなげようとしたのですが、ワンカットとして見たときに、掴みが弱かった。そこで、カット頭に大量のフォールンドロイドが動き回る場面を入れ、そこから画面奥の巨大な構造物へカメラを寄せる構成にしました。「何が起こるんだろう」と観客の関心を引いたところで、構造物に光の筋が走り、変形が始まる。いきなり変形を見せるのではなく、建物だと思っていたものが動き出す驚きをつくりたかったんです。


    大江:外装以外の内側のパーツは、ほとんど荻田さんが本カット用に足したものなんです。


    荻田:元のモデルも変形できる構造にはなっていましたが、変形中に外装の隙間から見える内部機構の多くは、元のモデルにはないものです。実際に動かしながら、ここに部品があれば密度が出る、ここでも何か動けば格好良くなると思ったパーツや動きを、アドリブで足していきました。機構としての整合性よりも、変形していく画の格好良さを優先しています。


    CGW:アーハンの変形とはちがう面白さですね。


    荻田:同じことをしても新鮮味がありませんし、サイズもちがいます。メカフォールン大型の場合は、細かな機構が大量に動くところを、比較的しっかり見せることで、重量や迫力、スケールを感じられるようにしています。

    [第二弾ティザーPV]メカフォールン大型の変形を、16秒のワンカットで描き切る

    ▲変形シーンの絵コンテ。引きと寄りの画を切り替え、メカフォールン大型の脚や頭部が展開する様子を複数カットで見せる構成だった。しかし「アーハンのように、変形をつなげて見せられないか?」という野口氏の提案を受け、荻田氏は約16秒のワンカットへと再構成した
    ▲完成映像。カメラは小・中型フォールンドロイドが動き回る空間から画面奥の構造物へ接近
    ▲光の筋を合図に変形が始まる
    ▲展開する脚の下を抜けてカメラが右側から背面、左側、正面へと回り込む
    ▲最後は複数の目が赤く光る。変形途中で逃げるドロイドや、別の個体が脚に踏み潰される小ネタも追加。元モデルにない内部機構は、各パーツを複製して補完。トゲやヒンジ、開閉・伸縮する部品を隙間に配し、リグや動きまで足している

    第二弾ティザーPVの制作後に再構成された、本番用のレーダーアレイ群廃墟

    レーダーアレイ群廃墟は、第二弾ティザーPVでメカフォールン大型が変形したカットの舞台だが、第二弾の制作時点では本番用モデルが未完成だった。広い空間を自在に移動するカメラワークを成立させるため、荻田氏は周囲の山々や、中央部の平地と建造物を備えたカット専用の仮モデルを制作した。最初期に用意された絵コンテ用の参考モデルは空間が狭く、キャラクターやメカを移動させたとしても、すぐに端まで到達してしまう規模だったため、荻田氏が大きく拡張。本番用モデルに必要な広さを検証した上で、地形と空間構成を全面的に設計し直した。

    ▲調整後の仮モデルから書き出した画像を基に、草薙が制作した美術設定
    ▲同じく草薙による美術ボード
    ▲美術設定を基に、協力会社が制作したレイアウトモデル
    ▲美術ボードを基に、マテリアルやテクスチャを調整した完成モデル。早い段階で完成に近い品質に達しており、水島監督や、美術監督の小倉一男氏、伊藤大樹氏の確認を経て、全体の色味、遠景の山や地平線の見え方、空間のスケール感などが詰められた。本番用モデルも、カメラを自由に動かせる完全な3D背景として仕上げられている
    ▲第五弾ティザーPV用のカット。本番用モデルを用いて、レーダーアレイ群廃墟を偵察するガブリエルとダネルを背後から撮っている
    『楽園追放 心のレゾナンス』ティザーPV制作の舞台裏【後編】は、6日(金)公開です。
    ©東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ2

    INFORMATION

    月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.339(2026年11月号)

    特集:ゲームグラフィックス 2026
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:144
    発売日:2026年10月9日

    詳細・ご購入はこちら

    TEXT&EDIT_尾形美幸/Miyuki Ogata(CGWORLD)
    文字起こし_大上陽一郎/Yoichiro Oue
    PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota