2024年7月にリリースされる『ファイナルファンタジーXIV』の最新拡張パッケージ『黄金のレガシー』のティザートレーラーが公開され、新たな冒険へといざなうハイスペックなビジュアル表現が大きな話題を呼んだ。メイキング第1回は、先端のデジタルヒューマン技術やエイジング表現が盛り込まれているキャラクター篇をお届け!

記事の目次

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 307(2024年3月号)からの転載となります。記事内容は2023年12月の取材を基に構成しています

    Information

    「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」予約受付中
    発売日:2024年7月2日(火)
    予約特典:インゲームアイテム「ミニオン ジタン」「アクセサリ アーゼマイヤリング」、アーリーアクセス権
    アーリーアクセス開始日:2024年6月28日(金)18:00(予定)
    © SQUARE ENIX

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    www.jp.square-enix.com/store/ff14/dawntrail/

    シーンの環境を合わせて見た目の印象を揃える

    本作では実際の人物を社内スタジオで撮影してリファレンスにし、CGシーンの中で実写と同じライティングのスタジオを構築することでキャラクターの質感がアップデートされた。テクスチャは毛穴やシワなどが描き足されてディテールアップされ、より高精細になっている。特に光の戦士は長い船旅を経ていることから、日焼けや皮のむけ方なども詳細に検討され、髪も長旅で傷んだ感じを出しつつ、汚らしく見えないよう上品にまとめられている。さらに、顔の表面の皮膚だけではなく、目や口の中の歯、舌もディテールアップが施された。

    衣装はそれぞれの部分ごとにMayaMarvelousDesignerZBrushを適材適所で使い分け、テクスチャはSubstance 3D Painterで統一されている。衣装のテーマはエイジングで、レザーの傷やシワ、擦れはもちろん、シャツの襟には毛玉まで加えられ、これによりCGっぽさを消すことをねらったという。

    また、キャラクターの見え方に統一感を出すため、本作ではゲームモデルをムービーの環境に持ち込み、比較しながらムービー用のモデルが制作された。目の虹彩などゲームエンジンでないと表現できない特殊なシェーダは、Mayaのシェーダで再現。特にまつ毛は板ポリからHairに変更されているため、印象を合わせるのに一番時間がかかった部分だという。

    • 宮尾周司氏/リードキャラクターモデリングアーティスト
    • 高瀬庄治氏/キャラクターモデリングアーティスト

    「今までもゲームのデータを提供してもらってムービーを制作していましたが、ここまでこだわったのは初めてでした。今回は全キャラで環境を合わせて比較しながら制作しています」(リードキャラクターモデリングアーティスト・宮尾周司氏)。

    巨大モンスターは、リグを参考に関節位置に注意しながら骨格を作成した後、その上に筋肉がモデリングされている。「主の表面の隆起を見つつ、自分の解剖学の知識やトカゲや恐竜の骨格を参考にしました。空想上の生物なので、想像した筋肉も入れています」(キャラクターモデリングアーティスト・高瀬庄治氏)。

    光の戦士のR&D

    質感のアップデート

    新旧の顔の比較(左が旧、右が新)。ひと目見て顔のテカリが強くなっていることに気がつくが、実写のリファレンスと比較した結果だ
    新旧のテクスチャの比較(左が旧、右が新)。旧テクスチャをベースにディテールアップされているのがわかる
    口内の比較(上が旧、下が新)。皮膚と同様、テカリ感が増えて、よりリアルだ
    瞳の比較(左が旧、右が新)。虹彩や瞳は大きく修正され、より深みが増している。また瞳のハイライトに凸凹感があるのがわかる

    日焼けした肌の検証

    日焼け肌の検証。本作では長い航海で日焼けしたというような物語を追加するという目的があったため、画像のように日焼け、汗ばみ、汚れ、皮のむけ方で多くのバリエーションが出され検討されている。

    新しい髪型への変更

    アートチームから提供された新しい髪型の設定画。3Dレンダリングの頭部の上にペイントするかたちで描かれている。設定画は三面図で提供されたが、モデリングがやりやすかったという
    • 新しい髪のレンダリングイメージ。前髪の垂れ方まで設定画に合わせているというこだわりだ。髪は船の長旅で傷んでいるが、汚らしくならないように注意して制作されている
    • なお頭部の膨らみは、塊にならないよう空気を含んだような感じをねらったという。「とてもカッコ良く仕上げられたと自負しています」(宮尾氏)

    新ジョブ・ヴァイパーの衣装

    SIMを意識した衣装モデル

    • 衣装の設定画
    • モデリングはツールを使い分けて作業されている(青:Maya、赤:スキャンモデル、緑:Marvelous Designer、黄:ZBrush)。最短距離でゴールできるようなツールの選択だったという
    衣装のメッシュ。シミュレーションが適正に行われるように、正方形に近い格子状のメッシュによるトポロジーで丁寧にモデリングされている
    格子状メッシュを拡大したもの。服のシワに沿ってモデリングされているのがわかる

    テクスチャによる経年劣化表現

    Substance 3D Painerにおける経年劣化テクスチャのレイヤー構成。青い部分がベースで、それに緑色部分のエイジングするためのレイヤーを乗せる構成となっている
    ベース質感の制作過程。レザーにスペキュラを乗せてムラを出している
    エイジング質感の制作過程。シワ、色落ち、レザーのエッジのハゲ、表面に細かい傷などを付けている
    最終的な質感。布や皮だけでなく、金属部分もエイジング処理が施されている

    巨大モンスターの3Dモデル

    筋肉SIM用のつくり込み

    • モンスターの外形とボーンの形状をZBrushにインポート。ボーンをメッシュとしてインポートして関節のアタリにしている
    • モンスターの骨格をZBrushでモデリング。爬虫類や恐竜の骨格を参考にしてモデリングしている
    筋肉モデル。ZBrushのDynameshで作成した後にZRemsherでリトポロジーを行い、骨格モデルに乗せるように筋肉を加えている

    ゲームモデルとの整合

    エレンヴィル

    • ゲームモデルをMayaの環境にインポートした状態。瞳などのゲームエンジンの特殊シェーダは完璧には再現できないため、色だけ合わせている
    • ムービーモデル
    メッシュ表示で比較したもの。ポリゴン数や髪の表現方法にちがいがあるものの、輪郭や形状はほぼ同じだ
    • 最終レンダリング。枠内はゲームモデル。キャラクターから受ける印象がかなり近いところまで合わせられている
    • なお、Ornatrixで作成されたムービーモデルのまつ毛を、ゲームモデルの板ポリまつ毛の印象に合わせるのに苦労したそうだ

    ナッツイーター

    ゲームモデル。かなりローポリでできているのがわかる
    ムービーモデル。印象はそのままに、指が追加されたり毛がモフモフになっている。目はゲームのようにひし形だと眼球が回転しないため、ムービーでは眼球の周りの毛の模様でひし形が表現されている。また、ムービーではカメラが寄るのはわかっていたので、毛のボリュームを増やしてシミュレーションで揺らしている。ちなみに体の全面と尻尾に大量の毛が生えているためデータが重くなり、レンダリングには1フレーム5日かかったカットもあったそうだ

    マムージャ族

    ムービーでは、ゲームモデルを参考にしつつクオリティアップが施された。装飾品の留め方など、より本物に見えるようなディテールも追加されており、説得力を増すことにつながっている。

    • ゲームモデル
    • ゲームモデル
    ムービーモデル。皮膚の質感や経年劣化表現により、大幅にクオリティアップしているのがわかる。胸部の飾りをワイヤーでつないだり、頭部から垂れ下がる飾りを紐で結んだりと、物理的なリアリティにこだわっている

    「『ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー』ティザートレーラー 第2回アニメーション篇」につづく。

    CGWORLD 2024年3月号 vol.307

    特集:『ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー』ティザートレーラー
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2024年2月9日
    価格:1,540 円(税込)

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    TEXT _石井勇夫(ねぎデ)
    EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada