『ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミアILLEGALS-』（2）鳴羽田の街並篇〜非合法ヒーローたちの迫力のアクションシーンに迫る！

4月より放送が開始されたTVアニメ『ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミアILLEGALS-』。本作は堀越耕平氏の漫画『僕のヒーローアカデミア』の公式スピンオフ作品として制作された、古橋秀之氏脚本、別天荒人氏作画による漫画のアニメ化である。ボンズフィルムが制作し、3DCGも同社が担当。本作では主にダイナミックなカメラワークでのキャラクター表現や、背景の街並などに3DCGが活用されている。今回は全3回にわたり、CGパートの制作を解説する。

記事の目次

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 322（2025年6月号）に一部、加筆修正を加えた転載となります。

Information

『ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』
毎週月曜 23:00～ TOKYO MX・BS日テレ、25:59～読売テレビ
原作：「ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミアILLEGALS-」（集英社ジャンプコミックス刊）古橋秀之、別天荒人、堀越耕平／監督：鈴木健一／アニメーション制作：ボンズフィルム
vigilante-anime.com
©古橋秀之・別天荒人・堀越耕平／集英社・ヴィジランテ製作委員会

ヴィジランテたちが活躍する鳴羽田の街並の再現

航一たちが暮らす鳴羽田の街並は、3Dカメラワークが必要なショットが多いためCG背景が用意された。3パターンの街並が作成され、建物のテクスチャや看板を組み合わせることで、航一たちが疾走するシーンでもリピート感が出ないように工夫されている。

「鈴木監督からの要望で、鳴羽田の繁華街通りはビジネスビルや店舗が並ぶディテールのある街にしたいが、都会すぎないような雰囲気にしたいということだったので、Googleマップでそうした街並みを確認しながら制作を進めていきました。街にある看板の数も非常に多く、物量をこなすのが大変でした」と細川氏。

▲左より、3DCG監督・佐々木瑞生氏、リードモデラー・細川大輔氏（以上、ボンズフィルム）

看板のテクスチャは美術スタッフが作成し、3D側で貼り込んでいる。ビル自体は全部で10棟程モデリングされており、看板の差し替えや壁のテクスチャ替えなどでバリエーションを増やしているという。ビルの配置は一部コントローラで制御しているが、基本的には手作業で配置。非常にディテールのある街並なのでレンダリングコストがかかるのだが、レンダーパスを工夫することで極力レンダリング回数が少なくなるように工夫しているという。

ディテールのある鳴羽田の街並み

背景の作成工程の例。まず美術設定が作成され、美術設定を基に背景のイメージボードが作成される。3D側では、Googleマップを使ってイメージに近い街のビルの構造や配置を調べ、作成するビルを10棟程度に絞ってモデリングが行われた。各ビルのテクスチャは美術スタッフにより描かれ、アニメの背景として違和感がない状態に仕上げられている。

▲美術が作成した鳴羽田の街にある大通りの美術設定
▲同じく、美術設定

▲美術設定を基に作成されたイメージボードの一例
▲イメージボードが3D背景のルックの指標になっている

▲夜の鳴羽田の街のイメージボード
▲同じく、夜のイメージボード

▲3ds Maxで制作された街並み
▲同じく、3ds Maxで制作された街並み

▲完成した3D背景。遠方の霞み具合や空のグラデーションなどが丁寧につくり込まれており、非常に奥行き感のある背景に仕上げられている。生活感や街並の雑多な印象を出すために、立て看板などの小物を配置するなど、細かい部分にもこだわって作成された

▲同じく完成した3D背景で、夜の状態。看板や街灯の明かりが雰囲気を出している

レンダリングを軽くするための素材の工夫

背景の撮影に使用されたレンダーパスの例。レンダラはスキャンラインを使用し、スーパーサンプリングを設定してチラ付きを抑えている。背景はレンダリングコストが非常に高いので、なるべく少ないレンダリング回数で必要な素材が出力されるように、面影用の素材とアンビエントオクルージョン以外は1回のレンダリングで出力されるようにしたという。

また、レンダリング作業はヒューマンエラーが起きやすいため、レンダリング用のスクリプトを作成し、説明ドキュメントを用意して間違いが起こらないように対応したとのこと。