ロボットに変形する家で暮らす人々の姿をコミカルに描いた、中国電力株式会社の会員制Webサイト「ぐっとずっと。クラブ」WebCM。街を活歩する家ロボットや家庭にあるアイテムで家ロボットを操縦する住人の姿がVFXを用いて表現された。本CMの企画から制作までを詳しく紹介しよう。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 319（2025年3月号）からの転載となります。

Information

家ロボットの制作

デザイン・動作の検討とBlenderによるCG制作

本作における3DCGの見どころはやはり家ロボットだ。この家ロボットを3DCGで制作するにあたり、多くの検討がされたという。作品には、住人に合わせて新築の家ロボットと既築の家ロボットが登場するが、ロボット化した際の手足のパーツのデザインにもこだわりが感じられる。

「既築の家ロボットは丸みのあるパーツで古めかしい風合いを意識しています。材質としても鉛や銅をイメージしました。一方で、新築の家ロボットのパーツはエッジのたった流線的なデザインで、素材もアルミニウムのような軽量素材に見えるように意識しました」（福田氏）。なお、プロポーション自体は同一となっているが、歩く際の動きのバランスや立ち姿のキャッチーさを重視して、脚は長めに調整された。

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家がロボットであるという設定を冒頭から伝えるために、オープニングでは家がロボットに変形する様子が描かれている。「ここには作品として大きなこだわりがあって、日常感あるロボットとして、変形に関しても構造を考慮した現実的な変形であることを第一に考えました」（福田氏）。

扉の立て付けによる動きの不均衡さなど、ちょっとしたノイズを加えることで現実感を与え、さらにパイプなどのパーツに細かい動きを加えることで、見映えのする変形モーションを実現している。「特にこだわったのは脚などのパーツが家屋の一階に格納されている点です。変形シーンなどで一階の窓が映りますが、部屋の中には脚が折り畳まれているのが見えます」（福田氏）。

なお、CG制作はEmberGenによる一部のエフェクト以外はBlenderにて行われている。福田氏は、以前は別のソフトウェアを使用しており、Blenderは使用し始めてから4ヶ月ほど。「直感的にモデリングしやすく、アセット制作から各種作業で、今ではとても重宝しています」とのことだ。

新築の家ロボットと既築の家ロボット

作品には親子が住む既築の家ロボットと若い夫婦が住む新築の家ロボットの2つが登場する。幅広い層の電気を使う生活におけるエピソードを描くため、複数のターゲット層の人物が登場し、それに合わせた家に住むという設定となっている。ただし、どちらの家に関しても田舎の風景に馴染むデザインが重視された。

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デザインと動きの検討

田舎にあるごく一般的な一軒家がモデルとなり、ロボット化を想定したデザインやプロポーションの検討が行われた。家の構造としては共に二階建てで、大きすぎない一軒家。変形して手足がついた際のバランス、プロポーションは特に吟味されている。脚が短く重心の低いロボットの方が現実的だが、設定がわかりやすいようキャッチーな長めの脚へと変更された。

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Blenderによる家ロボット制作

既築の家ロボットと新築の家ロボットは、大枠のプロポーションは同一だが、手足のデザインはそれぞれ異なるものへ変更されている。既築の家ロボットは丸みを帯びたパーツで、新築の家ロボットはエッジのあるパーツで構成された。モデルはBlenderにて作成され、キットバッシュは用いずイチから細かくデザインが起こされている。なお、リグに関しては基本的に歩くことのみが求められたためシンプルなものとなっているが、ボックスモデルを使ってパーツの干渉が起こらないように設定したのち、本モデルで微調整が加えられた。

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現実感を演出するアセット

変形した家ロボットの形状に目が行きがちだが、建物自体の現実感も作品の中では重要な要素。家自体、瓦やパイプなど細かいところまで再現され、現実的な機能をしっかりと考慮したデザインがなされている。その上で、生活感のあるアセットを散りばめリアルな一軒家をつくり上げた。

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変形シーンを描いたオープニング

家の変形を描いたオープニングは、作品の設定を見せ惹きつける素晴らしい出来映え。重視されたのはご都合主義の変形ではなく、家の構造や特性に合った現実的な変形であった。家の扉の立て付けを考慮した動きや、パーツを活かした演出的な動きを加えて、現実感がありながらも見映えのする変形モーションが実現された。

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HDRIの撮影と活用

撮影についてはスタッフ総出で臨み、各スタッフが必要素材を撮影時に収集して回ったとのこと。

EmberGenによるボリュームエフェクト

家の屋根から出るビームや、切り裂かれる雲の様子、家ロボットのジェット噴射は流体シミュレーションツールであるEmberGenを活用。「レスポンス重視で採用しまして、プレビューが速く、ねらった動きを再現するのに重宝しました。ジェット噴射ではエミッタから滝のようにスモークを発生させているのですが、こうしたものは非常に重い処理となります。噴射のストロークも長く困難なシミュレーションですが、コントロールもしやすかったですね」（福田氏）。

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