2016年11月6日(日)に開催された「CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」の模様を紹介する個別レポート第三弾。第二弾につづき本稿ではセガゲームスによるセッション「『龍が如く6 命の詩。』におけるリアルタイムレンダリングムービーについて」をレポートする。
TEXT_真狩祐志 / Makari Yushi
PHOTO_真狩祐志 & 弘田 充 / Makari Yushi & Mitsuru Hirota
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada
<1>物理ベースレンダリングにより、現実世界をゲームに持ち込む
豪華出演陣をゲーム内にフォトリアルに再現してきたセガゲームスの『龍が如く』シリーズ。その第6弾が12月8日(木)、Playstation 4用ソフト『龍が如く6 命の詩。』としてリリースされる。
登壇したのは、デザイン統括・三嶽信明氏、イベントシーン制作チーフ・深川大輔氏、イベントシーン制作・竹内智彦氏の3氏(いずれもセガゲームス 第一CSスタジオ)。セッションの冒頭、三嶽氏は「今日のセッションでは、フェイシャルのキャプチャも行なっていない、よりリアルタイム性の高いイベントシーンを中心にお話させていただきます」と挨拶。それから「今回、物理ベースレンダリングを採用しております。それぞれのマテリアルとライトが物理ベースとなっておりまして、まずマテリアルから説明させていただきます」と話を進めた。
マテリアルについては「金属、木材、コンクリートなど、それぞれの材質が持つ反射特性などを表現できるようにしています」との一方で、テクスチャは「マテリアルが物理ベースになっているので、テクスチャもそれに対応するためアルベドのテクスチャ、ライティングやオクルージョンなどの影情報や素材の色が表現されたテクスチャが必要でした」と言う。
素材を撮影するために「テクスチャの素材撮影時にカラーチェッカーパスポートなどを用いて、なるべく正しく撮影できるようにしています。こうすることでマテリアルやテクスチャにリアル性を持たせました」と言い、ライトについても32×32のタイルベースでリストが用意されたと言う。三嶽氏は「これによって大量の光源を扱えるようになりました。今まではひとつのモデルに対して3灯程度までが限界でしたが、今作ではひとつのタイルにつき大体80灯など表現が可能になり、ライトの数の制限が緩和されました」と明かした。
なおライトの明るさについては「ルーメンなど、実際の光の単位に準じてます。ろうそくや白熱灯は何カンデラなのか、実際の値がゲーム開発においても入力できるようになっています」とのこと。そのほかにも「現実世界で立て看板などの照度を測っておいて、ゲーム内でも照度を測れる仕組みをつくり、現実とゲーム内の照度をあわせる試みも行いました」と三嶽氏。現実に近いライトとそれを受けるマテリアル。これにより一層リアルに近いものができるようになったそうだ。
またキャラクターのモデルについては「シリーズを通して3Dスキャンを行なっています。これまではレーザーによる3Dスキャンを行なっていたのですが、今作からは写真ベースのものとレーザーによる3Dスキャンを併用し、より精度を高めています」と語った。これらを受けて三嶽氏は「現実のものをゲーム内に持ち込むためには物理ベースレンダリングが相性がよく、クオリティーの向上に役立ちました」とまとめた。
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<2>動的なフェイシャルアニメーション&現実に則したライティング
<2>動的なフェイシャルアニメーション&現実に則したライティング
フェイシャルアニメーションの紹介では、深川氏が「フェイシャルアニメーションはキャラクターの感情を表すために、喜怒哀楽を表現しなくてはいけません。キャプチャしてしまえば表現できるんですが、これから説明させていただくものに関してはキャプチャデータは使用していません。各キャラクターごとにフェイスターゲットを指定して、リップシンクしています」と話を始めた。『龍が如く』シリーズは1年に1作のペースで開発していることから、リップシンクについてもイベントシーンでフェイシャルキャプチャを使ったデータなど、大量のストックがある。
また「いかにして大量のシーンを短い期間でつくり上げるかということを目指し、ボイスデータから自動でリップシンクを生成するシステムや、表情のゆらぎを音声から認識して生成するシステムなどを採用しています」と深川氏。そして「カメラビューからのアングルでも表情を調節できます。ここにエレメントがあるんですがこの時点では何も変化は起きてません。セリフに対して口の変化が小さいと思ったら、スケールというところを例えば3倍にすると3倍の大きさで口を動かすことができます」と説明しながら、実演してみせた。
「精度が良くない場合はここにカーブがありまして、ポイントで制御することも可能です。例えばア~オの母音に対応してる場所を選択して動かすと、リアルタイムで選択した過程が反映されます」と深川氏。あわせて「この状態だと口は動いてるんですが、感情を表す部分は動いていません。そこで、ボイスデータをプログラムが自動解析して表情のブレンド値の推移としてカーブに反映させるものもあります」と補足した。
そこから深川氏は、キャラクターの表情の細部を調整してみせた。「(画面に映し出されたキャラクターを見ながら)表情のエレメントには何も指定されてなくて、デフォルトの表情にデフォルトの表情を足している状態です。ここに怒りのパラメーターとデフォルトの表情のブレンド値を加えると、ゆらぎの動きが自動で生成されます。また、痛みの表情になってはいるけど動きが足りないと思った時には、スケールの値を変化させます」。人の顔は話していない時でもどこかが動いているため、こうしてセリフに合わせて微妙に動かすことで生きてる感じが出てくるのだと言う。
「さらにここから細かい表情をつける場合は、また新たなエレメントを加えていくことになります。この時点で大まかな感情表現はできているんですが、"笑う"にしても"泣きながら笑う"とか、目の開閉や動きなど、エレメントを加算していくことができます」と深川氏は語った。
最後は、竹内氏がライティングについて解説。ライトが点いていない状態から「最初に調節するのは露出のレベルです。シャッタースピード、IOS感度、絞りのF値といったカメラの設定で明るさを調節します」と、実演を交えて紹介した。
まずはスポットライトについて。「画面のコーン型のものがスポットライトでして、光をあてたい対象に対して角度を調節します。画面の右下にカラーサークルがありますが、こちらで現実と同じようにカンテラやケルビンの値を設定します」と竹内氏。なお光の減衰感を表現するには、コーンの影響範囲を指定するのだとか。
続いてはチューブライトについて。「見た目にはスポットライトと似てるんですが、最初は球状になっている光源の形を、長さを変えることで面状に変えることが可能です」と竹内氏。
その後、竹内氏は点光源や平行光源についても触れた。「ライトの制限がなくなってきてはいるんですが、キャラクターを照らすキーライト、レフ光源で当てたフィルライト、境界線を際立たせるリムライトの3点光源にはこだわっています」。このほかにダークライト、瞳のハイライト、口の明るさなどを設定し、キャラクターがベストに見える状態に持っていくのだと語った。
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「CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」
参加費:無料 ※事前登録制
開催日:2016年11月6日(日)
場所:文京学院大学 本郷キャンパス(東京都文京区向丘1-19-1)
主催:ボーンデジタル、文京学院大学 コンテンツ多言語知財化センター
協力:文京学院大学、ASIAGRAPH CGアートギャラリー
cgworld.jp/special/cgwcc2016