>   >  フォトリアリスティックな恐竜たちを8Kで描く、BSプレミアム『これが恐竜王国ニッポンだ!』
フォトリアリスティックな恐竜たちを8Kで描く、BSプレミアム『これが恐竜王国ニッポンだ!』

フォトリアリスティックな恐竜たちを8Kで描く、BSプレミアム『これが恐竜王国ニッポンだ!』

NHKスペシャル『生命大躍進』(2015)を皮切りに、フォトリアルな動物VFXをコンスタントに手がけるNHKのVFXチームが8Kプロジェクトに挑戦。表現としてのクオリティを高めつつ、フルHDの約16倍という圧倒的なデータ負荷をどのように克服したのか。その取り組みを追った。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 241(2018年9月号)からの転載となります。

TEXT_大河原浩一(ビットプランクス
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

NHK BSプレミアム『これが恐竜王国ニッポンだ!』
8月29日(水)午後9:00
※4Kと8Kでも放送予定(放送日は未定)
REDのHELIUMで8K撮影。大島での水中撮影や、山口・千葉でのRONINやドローンを使った撮影で太古の恐竜世界を再現。
www6.nhk.or.jp
© NHK

4Kの約4倍、フルHDの約16倍
圧倒的な高解像度、大容量への挑戦

NHKスペシャル『生命大躍進』(2015)やスーパープレミアム スペシャル時代劇『荒神』(2018)など、ドキュメンタリーやドラマ作品を通じてフォトリアルな生物表現にチャレンジしてきた松永孝治VFXスーパーバイザーを中心としたNHKのVFXチームが、8月29日(水)放送予定のBSプレミアム『これが恐竜王国ニッポンだ!』で再び太古の恐竜世界のリアルな再現に挑戦している。

■ 前列:左から、浅山文秋氏、田中朝幸氏、石川善一郎氏、松永孝治VFXスーパーバイザー、日髙公平氏、舟山美稀氏、古川泰行氏/■ 後列:左から、加藤晴規氏、北川茂臣氏、安藤隼也氏、加藤久典氏、早坂 渉氏、中島中也氏、渡部辰宏氏。以上、NHK

BSプレミアムでの放送はフルHD解像度だが、実は年末から始まる「4K・8Kスーパーハイビジョン」本放送への試金石として、一連の制作が8Kベースで行われた意欲作だ。8K(W7,680×4,320)は、4Kの約4倍、フルHDの約16倍という、圧倒的な高解像の情報量なのは衆知のとおり。「4KベースのVFXはいくつも手がけていますが、8Kベースは初めて。世界的にも類を見ないので、絶好の機会だとチャレンジしました。ただし、フォトリアルな画づくりを実践する上では、レンダリングコストを厳密に管理することも徹底しました」と、松永氏はふり返る。中核スタッフの多くが、今年2月17日に放送された『荒神』プロジェクトからシームレスに携わっている。これまでと同様に、キャラクターモデルの制作やアニメーションは外部パートナーの協力を得つつ、NHK内では全体のディレクションとVFXカット制作を手がけるという体制が構築された。8KベースのVFX制作では、想定外の課題も多く発生したという。その典型が、8KサイズのDPXファイルは大容量のため、NUKE上でのプレビューに時間がかかることや、レンダーサーバでレンダリングを回した際、ネットワークの負荷が高くなり、他プロジェクトにも影響を与えるなどという問題だ。最終的に4Kにダウンコンバートした上で再生しながらブラッシュアップを重ねるというワークフローが採られた。「本作でも、画づくりでは"目の前に存在するものを撮影している感じ"を追求しました。8Kになると臨場感が格段に増すのが確かな魅力ですね」(松永氏)。

Topic 1
モササウルス、アンモナイトたちが暮らす海中世界

1枚のレンダリングに最大2時間フィッシュボール(魚群)

本作で制作されたVFXショットは、モササウルスやアンモナイトが棲息する海中世界と、むかわ竜などが棲息する陸上世界に大別される。まずは、海中世界の表現でも見どころとなる最大で体長11mに達すると言われる巨大海棲爬虫類モササウルス、最大で14.6万匹の魚で構成されるフィッシュボール(魚群)の表現を中心に紹介したい。今回実写素材と最終コンポジットは8Kだが、3DCG素材についてはレンダリングコストを考えて4K解像度で作成されている。登場する恐竜たちのモデルは、2017年10月頃から制作を開始(一部のキャラクターは、過去プロジェクトのアセットをそのまま流用することができたという)。

筆者が特に感心させられたのが最大で15万匹近い数の魚で表現されたフィッシュボールだ。プランニングの段階では、実際のフィッシュボールを撮影してCGを合わせるということも検討したそうだが、実写の魚群と、モササウルスをはじめとするCGキャラクターとのインタラクションが難しいという結論に達し、3DCGが選ばれたという。フィッシュボールのエフェクトは、ターゲット(魚群のリーダー)となる数匹の魚のアニメーションを森江康太氏が率いるMORIEが作成し、そのアニメーションデータをHoudiniでパーティクル化してシミュレーションしたものをHoudini ENGINEで出荷。そのデータをMayaに読み込みParticle Instancerで展開し、レンダリングするというワークフローが採られた。このフィッシュボールのエフェクトをリードしたのが、北川茂臣氏だ。「ご覧いただければおわかりのとおり非常にチャレンジングな表現なので、北川くんにはプロジェクトが正式にスタートする前からR&Dに着手してもらっていました。まずは数百匹規模でシミュレーションさせてみたところ、手応えを得たので、それをベースに本制作を進めていきました」(松永氏)。このフィッシュボールのレンダリングには、レンダレイヤーだけで1フレーム2時間程度も要したそうだ。

そのほかにも、水中感をどのように表現するのかという点もポイントとなったという。モササウルスに落ちるコースティクスの表現やマリンスノーのエフェクトも作成されており、画づくりに多くの素材作成が必要になったが、海中のシーンでは接地の調整やマスク処理などがなかったため、8K解像度でのコンポジットでも予想していたほどの作業ストレスはなかったとコンポジターの加藤晴規氏は語る。

最大で約15万匹のフィッシュボール(魚群)

プロジェクト開始前に行なったフィッシュボールのテスト。球状のものと、移動する魚群を作成(画像は球状)。パーティクルをベースに、図では約10万匹の魚群で構成されている

Houdiniによる魚群のシミュレーション例。10匹程度リーダーになる魚を決め(リーダーとなる魚の動きはMORIEが作成)、あらかじめ動きをシミュレーションしている。他の魚は近くにいるリーダーを追いかけるシミュレーション結果をポイント情報として出力し、アセット化。Mayaへのデータの受け渡しにはHoudini ENGINEが利用された。単にデータを受け渡すだけではなく、シミュレーションのバージョン管理やカットごとの細かな調整等も、アセット内で行えたので重宝したという


ブレイクダウン



  • Maya上でHoudiniから書き出したパーティクルのキャッシュを取った状態。ポイントの位置に魚が配置される



  • MayaのParticle Instancerで魚を配置。表示が重いため、バウンディングボックスとして表示



  • 全てのキャラクターのレイヤーがレイアウトされた状態



  • コンポジットでカラーコレクション、CGのレイを足した状態

最終のレンダリングイメージ

アニメーションテクスチャによる、コースティクスの表現

水面から差し込むライトシャフトやキャラクター表面のコースティクス効果は、Mayaで作成した各種AOVをコンポジットワークで加工・調整している



  • 一連のコンポジット処理を施した完成形



  • 【左画像】から、水中表現のライトシャフトとコースティクスを外した状態



  • コースティクス素材



  • ライトシャフト素材


水中表現の素材には、aiGoboを適用したスポットライトを使用。ライトシャフトは、aiAtmosphereVolumeにスポットライトを当てて作成している

Mayaのパースビューでスポットライトを見た状態

aiGoboで使用している連番テクスチャ素材の例。「連番テクスチャは、アニメーションしている水面のようなテクスチャです。連番テクスチャには動きのスピードを変えたもの3パターンを、RGBの各チャンネルに入れることで、1つの素材で3種類のスピードを出力し、コンポジット工程でプレートの水面のスピードに合わせて選ぶようにしました」(加藤氏)

次ページ:
Topic 2 むかわ竜やティラノサウルスが暮らす陸上世界

特集