3月6日(水)、一般社団法人VFX-JAPANによる日本の優れたCG・VFX作品を顕彰する「VFX-JAPANアワード2019表彰式」が東京・秋葉原UDXシアターにて開催された。会場では、2017年11月〜2018年10月末までに公開されたCG・VFX作品から推薦により選出された優秀賞26作品と、各部門の最優秀賞7作品が発表された。各部門の優秀賞作品と、最優秀賞受賞者のコメントをレポートする。

TEXT_峯沢琢也 / Takuya Minezawa
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充/ Mitsuru Hirota

先導的視覚効果部門:最優秀賞『チコちゃんに叱られる!』

先導的視覚効果部門の最優秀賞にはNHKのTV番組『チコちゃんに叱られる!』が選出され、代表として林 伸彦氏(株式会社NHKアート 総合美術センター デジタルデザイン部 CG映像担当部長)、中野大亮氏(同部所属)が登壇した。優秀賞には『REAL 3DMAP TOKYO 夜景』『IGT-VR』『Sony Immersive Space Entertainment / KLEIN』が輝いた。

■最優秀賞
チコちゃんに叱られる!

■優秀賞
REAL 3DMAP TOKYO 夜景
IGT-VR
Sony Immersive Space Entertainment / KLEIN

林 伸彦氏(株式会社NHKアート 総合美術センター デジタルデザイン部 CG映像担当部長)

「本日はこのような栄誉ある賞に選んでいただき感謝します。『チコちゃんに叱られる!』は最近いくつかの賞をいただきましたけれども、CG・VFXを生業にしております皆さんの投票によって選ばれた賞を本当に楽しみにしておりました。スタッフ一同本当に喜んでおります。『チコちゃん』は特番を始めるときには本当に「無謀なんじゃないか?」と心配されておりました。そしてレギュラーシーズンが始まるときには1年間本当にやりとげられるのか? と自分たちでも心配しておりました。ですが幸いにも多くの方々のご支援をいただきながらなんとかやりとげまして本当に多くの人の支持を得ることができました。その支持を糧にスタッフの皆も1年間頑張ってきたと思っています。『チコちゃん』はまだまだ続きます。これからもますます『チコちゃん』の魅力を引き出せるようスタッフ一同頑張っていきたいと思います、今後とも応援をよろしくお願い致します。本日はどうもありがとうございました」(林氏)


  • 中野大亮氏(株式会社NHKアート 総合美術センター デジタルデザイン部)

「自分たちが最優秀賞を取ると思っていなかったので、何の準備もしていないんですが(笑)。『チコちゃん』を初めて制作したのは2年前、当時はまだ30分の特番で、それが終わった後に「まずは番組がレギュラー化したら良いね」、その次に「紅白に出たいね」、さらには「ボーっと生きてんじゃねーよ!」が刺激的なワードですので「流行語大賞とか取れたら良いね」と、飲みの席で冗談で言っていましたら、本当に全部叶ってしまいました」(中野氏)。

CM・プロモーションビデオ部門:最優秀賞『カップヌードルCM 「HUNGRY DAYS 最終回 篇」』

CM・プロモーションビデオ部門の最優秀賞は『カップヌードルCM 「HUNGRY DAYS 最終回 篇」』。代表として背景CGの制作を担当した山内 太氏(Slanted ディレクター)が登壇した。優秀賞には『GINZA SIX スペシャルムービー「メインストリート」篇』『マクセル コーポレートムービー「未来のカケラ、この手の中に。」』『WELL DONE SABOTAGE 「NEW ORDER」ミュージックビデオ』が選出された。

■最優秀賞
カップヌードルCM 「HUNGRY DAYS 最終回 篇」

■優秀賞
GINZA SIX スペシャルムービー「メインストリート」篇
マクセル コーポレートムービー「未来のカケラ、この手の中に。」
WELL DONE SABOTAGE 「NEW ORDER」ミュージックビデオ


  • 山内 太氏(Slanted ディレクター)

「素晴らしい賞をいただきありがとうございます。今回の作品はネタが良かったのかなと思います。クライアントも監督も好きにやって良いよ、ということで結構楽しんで好き勝手やりまして。20秒ぐらいの尺ですがスケジュールも2ヶ月弱あっていろいろ試すことができ、こういう賞もいただけまして本当に良かったと思います」(山内氏)。

ゲーム映像部門:最優秀賞『Project Awakening』

ゲーム映像部門の最優秀賞には、Cygamesが現在開発中の『Project Awakening』が選出され、代表として細谷宜史氏(株式会社Cygames 3DCGアーティストチーム)が登壇。優秀賞には『モンスターハンター:ワールド』『STREET FIGHTER V ARCADE EDITION』と、いずれもカプコンのタイトルが選ばれている。

■最優秀賞
Project Awakening

■優秀賞
モンスターハンター:ワールド
STREET FIGHTER V ARCADE EDITION

『Project Awakening』PlayStation® LineUp Tour(日本語音声)


  • 細谷宜史氏(株式会社Cygames 3DCGアーティストチーム)

「この度はゲーム部門で最優秀賞をいただき誠にありがとうございます。そして『Project Awakening』を制作している優秀なスタッフたちに感謝したいと思います。『Project Awakening』は現在鋭意製作中なのですが内容や映像のクオリティともに皆様のご期待を簡単に超えてくるようなとんでもないモノが生まれようとしています。私自身も日々ワクワクしながら制作を進めておりますので、引き続き『Project Awakening』にご期待下さい」(細谷氏)。

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テレビ番組アニメCG部門:最優秀賞『新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION』

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テレビ番組アニメCG部門:最優秀賞『新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION』

テレビ番組アニメCG部門の最優秀賞には、昨年1月から放送中の『新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION』が選出。代表として安田兼盛氏(株式会社小学館ミュージックアンドデジタルエンタテインメント 映像制作事業部)、山野井 創氏(同部所属)が登壇した。優秀賞には『刻刻』『ひそねとまそたん』が輝いた。

■最優秀賞
新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION

■優秀賞
刻刻
ひそねとまそたん

【夏休み特別総集編】アニメ 新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION 『団らん!! 速杉家とシンカリオン』


  • 安田兼盛氏(株式会社小学館ミュージックアンドデジタルエンタテインメント 映像制作事業部)

「CGディレクターの安田です、『新幹線変形ロボシンカリオン』自体は2014年からPVというかたちでWeb上で展開させていただいたモノで、2018年1月からTVアニメシリーズとして放送させていただいています。弊社はその作品のCG部門を担当しておりまして今も放送は続いておりますので、実際これから職場に帰ってカットの制作をしないといけないという...(笑)。この気持ちにどう決着を付けて仕事に戻るか今から考えております(笑)。ありがとうございました」(安田氏)。


  • 山野井 創氏(株式会社小学館ミュージックアンドデジタルエンタテインメント 映像制作事業部)

「『シンカリオン』ではCGというより全体の統括をするポジションで仕事をしておりますが、実は私自身がCGソフトを使えない人間なんですね......CGが使えない人間なりにどうやってCGを毎週放送して、かれこれ1年以上続けていますがさらにそれをやり続けられるのかどうか? というのが制作側の使命だと思ってやらせていただいています。これからも引き続き観ていただければと思います」(山野井氏)。

テレビ番組VFX部門:最優秀賞『NHK スペシャル 「人類誕生」』

テレビ番組VFX部門の最優秀賞には『NHK スペシャル 「人類誕生」』が輝き、綿森 勇氏(株式会社Luminous Productions CGディレクター)、本 崇臣氏(株式会社スクウェア・エニックス CGデベロップメントマネージャー)が登壇した。優秀賞には『スペシャルドラマ「荒神」』『これが恐竜王国ニッポンだ!』と、いずれもNHKの番組が選出される結果となった。

■最優秀賞
NHK スペシャル 「人類誕生」

■優秀賞
スペシャルドラマ「荒神」
これが恐竜王国ニッポンだ!

【人類誕生CG】440万年前の人類は愛妻家でイクメンだった!?【NHKスペシャル×NHK1.5ch】

右から 綿森 勇氏(株式会社Luminous Productions CGディレクター)、本 崇臣氏(株式会社スクウェア・エニックス CGデベロップメントマネージャー)

「この度は素晴らしい賞をいただきまして、誠にありがとうございます。私たちはこの番組の中の10個のエピソードについて、ひとつひとつショートストーリーとして物語を提供させていただきました。そのおかげで世界中から反響がありまして、特に子供たちからからいろいろなコメントをいただき、世界中に伝わって良かったなと思っております。それに加えて、技術の面でもこのような名誉ある賞をいただき、このプロジェクトに関わってくれた多くのスタッフと現地で知り合った多くの友人たちに心から感謝するとともに、代表でこういった賞をいただけることをこの場を借りて御礼申し上げます」(綿森氏)。

「今回のプロジェクトはスクウェア・エニックスとしては今まで取り組んだことのない新しいプロジェクトで、やり方などなかなか難しい問題もありました。それを全てクリアして放映されたということだけでなく、このような素敵な賞までいただいて本当に光栄であります」(本氏)。

劇場公開アニメーション映画部門:最優秀賞『ニンジャバットマン』

劇場公開アニメーション映画部門にて最優秀賞に選ばれたのは『ニンジャバットマン』。代表として水野貴信氏(有限会社神風動画 CGI監督)、澤田覚史氏(株式会社YAMATOWORKS)が登壇した。優秀賞には『スターシップ・トゥルーパーズ レッドプラネット』『GODZILLA 決戦機動増殖都市』『ペンギン・ハイウェイ』『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』が選ばれた。

■最優秀賞
ニンジャバットマン

■優秀賞
スターシップ・トゥルーパーズ レッドプラネット
GODZILLA 決戦機動増殖都市
ペンギン・ハイウェイ
映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ

映画『ニンジャバットマン』 日本用トレーラー<公開日追加ver>【2018年6月15日劇場公開】


  • 水野貴信氏(有限会社神風動画 CGI監督)

「本日は素晴らしい賞をいただきありがとうございました。神風動画は『短くて濃い映像』を得意とするスタジオで15年間、短篇映像をつくり続けてきました。今回ニンジャバットマンのお話をいただいて、その濃さのまま長い作品がつくれるのか?という大きな課題がありまして。そこでYAMATOWORKSさんやその他大勢の方にご協力いただき何とかつくり上げることができたと思っております」(水野氏)。


  • 澤田覚史氏(株式会社YAMATOWORKS)

「ニンジャバットマンは神風動画さんからお話をいただいて、神風動画さんの得意とするルックのまま長編をつくるということで、僕らからは長編のノウハウを、神風動画さんからは神風動画さんらしいテイストを合わせ、本当にいろいろな会社さんやスタッフの方に手伝っていただいて何とか何とかできたという感じの作品で、このような素晴らしい賞をいただけて大変嬉しいです」(澤田氏)。

劇場公開実写映画部門:最優秀賞『DESTINY 鎌倉ものがたり』

劇場公開実写映画部門では、『DESTINY 鎌倉ものがたり』が最優秀賞に輝いた。代表として渋谷 紀世子氏(株式会社白組 調布スタジオ VFXディレクター)が登壇。優秀賞は『いぬやしき』『北の桜守』『ホーンテッドテンプル 顔のない男の記録』という結果となった。

■最優秀賞
DESTINY 鎌倉ものがたり

■優秀賞
いぬやしき
北の桜守
ホーンテッドテンプル 顔のない男の記録

「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告2


  • 渋谷 紀世子氏(株式会社白組 調布スタジオ VFXディレクター)

「ちょっと受賞するとは本当に思っていなかったので(笑)、あまり何も考えていなかったのですが。この賞は私の後ろにいっぱいいるスタッフが総力を挙げて頑張ってくれたおかげで取れた賞だと思っています。今回この作品は日本ではなかなか馴染みがない、本当に純粋なファンタジーを映像化するということで、どういった表現をしていくと面白いだろうか? 魅力のある画になるか? というのを皆でいろいろと検討しながらつくっていった作品です。そういう意味ではこちらの賞をいただけてすごく嬉しいです。どうもありがとうございました」(渋谷氏)。

2013年に第1回が開催されてから7回目となる本年のVFX-JAPANアワード。優秀賞にはCGという分野を超え広く映像として世の中に発信され評価されている錚々たる作品群が並び、年々CG・VFXが映像産業に不可欠なものになっていると実感させる内容となった。2016年の先導的視覚効果部門や2018年のテレビ番組アニメCG部門など、時流に合わせて新設される表彰部門が、その進化を物語っている。今後はVRやAR分野のノミネートも増えてくるかもしれない。来年の授賞式が今から楽しみだ。



■開催概要

VFX-JAPAN アワード 2019 表彰式
日時:2019年3月6日(水)18:00~20:00
会場:秋葉原UDXシアター(4F)
vfx-japan.jp