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デジタルで彩る コスチュームのセカイ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』セガ篇

デジタルで彩る コスチュームのセカイ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』セガ篇

世界観を表現し、着る者の魅力を際立たせ、コミュニケーションの媒介となるコスチューム。『CGWORLD + digital video』vol. 277では、デジタルにより日々進化するコスチュームのセカイを大特集した。CGWORLD.jpでは全46ページの特集の中から約12ページを抜粋し、全4回に分けて転載する。以降では、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以降、『プロセカ』)におけるセガの制作事例を紹介しよう。

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TEXT_神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO)
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota


月産8着。こだわりのデザインを3Dで再現する


  • 佐藤 亘氏(リードデザイナー)
  • ピアプロキャラクターズの6人と5ユニットの20人、総勢26人のキャラクターを彩るこだわりのデザインのコスチューム。それを3Dで再現するのが、セガと協力会社から成る3Dチームだ。月産8着という驚異的なペースを支えるワークフローや技術仕様について、佐藤 亘氏(リードデザイナー)に聞いた。


  • プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
    開発:セガ、Colorful Palette
    発売:セガ
    価格:基本プレイ無料(一部有料コンテンツあり)
    対応OS:iOS、Android
    ジャンル:リズム&アドベンチャー
    キャラクターデザイン:Colorful Palette、iXima(協力)
    pjsekai.sega.jp


ゲーム業界で約15年のキャリアを培い、近年は3Dキャラクター制作を専門にしてきた佐藤氏。『プロセカ』に参加したのは、サービス開始を半年後に控えた2020年4月のことだった。「自分が参加したときには、ワークフローや仕様が決まっており、すでに量産体制に入っていました。当時は月産4着くらいの規模感だったので、モデリングからセットアップまでの工程のほとんどを自分ひとりで担っていました」(佐藤氏)。ワークフローや仕様は当時から変わっていないが、現在は実作業の多くをディッジなどの協力会社に依頼しており、8ライン、月産8着の制作体制に拡充している。1着あたりの制作期間は約20日で、監修対応と実装に約10日を要する。

佐藤氏の役割は、制作進行とクオリティの管理、クリプトン・フューチャー・メディアColorful Paletteへの対応などだ。「Colorful Paletteさんからは、2週間に4着ずつのペースでデザイン画をいただきます。ただ、デザイン画の監修が終わっていない場合もあって、できるところから進めつつ、逆算していつまでにデザインが確定すれば問題ないか、小まめにやりとりしながら調整していったりもします」(佐藤氏)。

多くのポリゴンを要する、揺れものが多く拡張ボーンも多くなる、などの理由で仕様を超過しそうなデザインの場合は、作業着手の前に懸念点を伝え、簡略化を相談したりもするという。「本作は参加している会社が特に多いので、自分には思いつかない提案、ご指摘をいただく機会が多く、デザイナーとして勉強になる環境です」(佐藤氏)。一方で、多くの会社が参加するからこそ、前述のような小まめなやりとりが不可欠のようだ。『プロセカ』のコスチュームはデザインのこだわりが強いため、数多くの技術的課題の解決も必要となる。「自分の場合は、"MVで映えるように" という点を特に意識しています。動いたときのシルエットだったり、色味だったり、揺れものの具合だったりを丁寧に仕上げることで、MVを魅力的に演出することにひと役買えるんじゃないかなと思ってます」(佐藤氏)。

初音ミクの3Dモデル制作

▲【左】iXima氏による初音ミクのデザイン画。基本的には2007年のオリジナルのデザインを踏襲しているが、近代的でさわやかな印象になるよう整えている/【右】ミクのコスチュームは従来から袖口が大きいデザインで、3D化の度に手や身体との干渉が課題になってきた。本作でもデザイン画とまったく同じにした場合、手首を上方向に90度曲げると貫通し、ウェイトで回避すると下方向に回転させた場合に不自然な変形になるといった課題があった。袖口を広げる、手首の可動域を抑えるなどの対策も検討されたが、最終的には、デザイン画の袖のシルエットを維持しつつ、袖丈を少し短くすることで干渉を避ける対応がとられた


▲ミクの3Dモデル。顔や、襟のパイピングなど、上半身には特に多くのポリゴンが割かれている。ミクの3Dモデルが、ほかのキャラクターやコスチュームを3D化するときのひな形となった

デザイン画のシルエットや大きなシワの再現を重視

本作のコスチュームはモデリング、テクスチャ作成、セットアップ、差分作成の順序で進められ、各工程に5日、合計20日の工数が見積もられている。差分作成では、カラーバリエーションや、女性の胸差分に応じた調整が行われる。モデリングにはMaya、実装にはUnityを使用している。本作ではセル画調のフラットなルックを採用しており、制限の多いスマホ向けゲームということもあって、ZBrushやMarvelous Designerなどは使っていない。協力会社の数が多く、各社が使い慣れたツールで統一する必要もあったとのこと。

本作には26人のキャラクターが登場するが、コスチュームは共通の素体(男性1体・女性4体)に着せた状態で作成し、身長差はUnityへのインポート後に調整している。衣装のポリゴン数の上限は7,000、髪飾りを含めた頭部の上限は5,000で、髪飾り単体での上限は1,000となっている。モデリングの際には、三面図のうち正面からの見た目の再現を最優先にしている。ユニークなのは、スマホ向けゲームにも関わらず、板ポリの使用は極力避けており、小さな装飾品であっても立体的に仕上げている点だ。「本作では、実機でのアウトラインシェーダ適用時に、ベースメッシュの押し出し方式を採用しています。板ポリだと、角度によってはアウトラインがほぼ見えなくなってしまうので、厚みを付けています。アウトラインがなくても問題ないような小さなパーツや、テクスチャに描いたラインで代用可能なものは板ポリを使っています」(佐藤氏)。

▲Unityにインポートしたミクの3Dモデル。素体のボーンの総数は63本で、このうちスカート用のボーンは24本(3本×8列を円形に配置)となっている。拡張できるボーンは、身体が30本、頭部(髪と髪飾り用)が26本


また、本作ではデザイン画で描かれているシルエットやボリューム、大きなシワの表現が重視されており、ポリゴンで立体的に再現するよう努めている。ただし大きなシワなどは動きを付けると不自然に見える場合もあり、後日の調整が必要になることもある。「例えば「Vivid BAD SQUAD」はだぼっとした服が多いので、腕まわりのめり込みが発生しやすいです。「MORE MORE JUMP!」の場合は広がったスカートが多いので、手と干渉しやすいですね」(佐藤氏)。

5つのセカイの初音ミクの3Dモデル

▲「教室のセカイ」のミク。制服をベースにしており、クラシックとカジュアルをミックスしたデザイン


▲「ステージのセカイ」のミク。アイドルらしい可愛さと、ミクらしいさわやかさをミックスしたデザイン


▲「ストリートのセカイ」のミク。モード系に、スポーツ要素をミックスしたデザイン


▲「ワンダーランドのセカイ」のミク。テーマパークのステージ衣装をベースにした、プリティ・カジュアルなデザイン。猫耳がカワイイ


▲「誰もいないセカイ」のミク。フェミニンなドレスとハーネスの組み合わせや、片方だけの靴下が、メランコリックなムードを醸し出している


info.

  • 月刊CGWORLD + digital video vol.277(2021年9月号)
    特集:デジタルで彩るコスチュームのセカイ
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2021年8月10日
    cgworld.jp/magazine/cgw277.html