Blender Foundationは2月5日(木)、公式Webサイトのユーザーストーリーにおいて、Blenderで制作されたイタリア発の大人向けアニメシリーズ『Il Baracchino』のブレイクダウン記事を公開した。本作は、イタリアのMegadragoスタジオが制作したAmazon Prime Videoオリジナル作品(日本のAmazon Prime Videoからは視聴不可)。記事では、Blenderの機能を駆使し、少人数チームで高品質なアニメーションを制作するための技術的な工夫や、効率的な制作進行のノウハウを紹介している。

▲イタリアのAmazon Prime Video YouTubeチャンネルで公開されている『Il Baracchino』エピソード1。本作は日本のAmazon Prime Videoでは提供されていない

『Il Baracchino』は、3Dアニメーションやコマ撮りの人形劇など、多様なスタイルを混在させたミクストメディア作品として企画された。コメディとドラマが共存する、暗く様式化された「ノワール(Noir)」の美学を軸としつつ、全てのアニメーションの原則を統一することで、複数の技法が入り混じる画面においてもビジュアルの一貫性を保つことに成功している。


キャラクターのリギングにおいては、テクスチャの表示位置を変化させるUVワープ(UV Warp)モディファイアーを採用。これにより、3D空間内にありながら紙の切り抜きのような質感を持つ“2.5D”のキャラクター表現を実現している。特にレオナルド・ダ・ヴィンチのキャラクターにおいては、単純なボックス型のジオメトリに5つの画像を貼り合わせることで、独特のビジュアル効果を生み出した。

  • ▲UVワープモディファイアー
  • ▲UVワープモディファイアーを用いて2.5Dキャラクター表現を実現(図はレオナルド・ダ・ヴィンチ)

主人公クラウディアのフェイシャルアニメーションには、シェイプキーをベースとしたハイブリッドシステムが開発された。これにより、アニメーターは直感的に表情を組み合わせつつ、細かい微調整も行うことが可能になった。

▲主人公クラウディアのフェイシャルアニメーションには、シェイプキーベースのハイブリッドシステムを採用

また、アニメーションの動きは2Dの原則に基づいている。スプラインアニメーションを用いた、コンピューターによる滑らかな動きの補間をあえて排除し、カクカクとしたコマ送りのようなステップモードの動きを採用することで、力強く魅力的なポーズを強調している。

レンダリングにはリアルタイムエンジンのEEVEEを採用し、2Dキャラクターが描かれた平面パネルなどもすべて3D空間内に配置して同時に処理するリアルタイムコンポジットのワークフローを構築した。これにより、異なる手法でつくられたキャラクター同士の光や影を統一し、ビネット効果などを用いて、ノワール特有の重厚な空気感を効率的につくり出している。

▲レンダリングエンジンにEEVEEを採用することでリアルタイムコンポジットを実現

約20人の小規模チームで長尺映像を完成させるため、制作チームはBlender Studioが公開しているパイプラインを全面的に採用。進捗管理ツールの「Blender Kitsu」や、大量の書き出し作業を管理する「Flamenco」、ファイルの変更履歴を管理する「Blender SVN(Subversion)」、制作の進捗状況を直感的に視覚化する「Watchtower」などを導入した。

▲Watchtowerにより1エピソードの全容を可視化

■Creating “Il Baracchino”: Italy’s First Adult Animated Series Made with Blender(Blender公式サイト)
https://www.blender.org/user-stories/creating-il-baracchino-italys-first-adult-animated-series-made-with-blender/

CGWORLD関連情報

●オープンソースのBlender用AIエージェント「VIGA」リリース! 入力画像を解析し、Blender上で再現可能な実行コードへと変換し実行、物理シミュ&ライティング込みのシーンを構築

カリフォルニア大学バークレー校、カーネギーメロン大学、マックス・プランク知能システム研究所、Impossible Inc.からなる研究チームが、画像から3Dシーンをコードベースで構築・編集できるAIエージェント「VIGA(Vision-as-Inverse-Graphics Agent via Interleaved Multimodal Reasoning)」を発表。VIGAは、入力された画像を分析し、それを再現するためのBlender用Pythonコードを生成・実行、物理シミュレーションやライティング条件を含んだ3Dシーンを再現する。オープンソース(MITライセンス)ソフトウェアとしてGitHubでソースが公開され、Hugging Faceでは評価用データセット(ベンチマーク)が公開されている。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202602-VIGA.html

●Blenderアドオン「Quad Filler 1.0」リリース! 異なるエッジ数のオープンエッジ間を綺麗なクワッドで穴埋めし、メッシュを効率的にクリーンアップ

Casey SheepがBlenderアドオン「Quad Filler 1.0」をSuperhiveでリリース。Quad Fillerは、開いたエッジ同士の接続を、最小限の操作で理想的な四角形ポリゴンへと変換することに特化したツール。価格は8ドル(約1,250円)、ライセンスはGPL、対応するBlenderのバージョンは3.4~5.0。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202601-QuadFiller.html

●オープンソースのBlenderアドオン「Mio3 Flex」リリース! 選択したエッジループをカーブで滑らかに整形&変形

mioがメッシュの頂点を曲線に沿って滑らかに変形させるBlenderアドオン「Mio3 Flex」をBlender ExtensionsとGitHubで公開。本作は、以前公開されていた多機能ツール群「Mio3MeshTools」から曲線変形機能のみを抽出し、最新のBlender環境に合わせてリビルドしたもの。対応するBlenderのバージョンは4.2 LTS以降、ライセンスはGPL-3.0。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202601-Mio3Flex.html