Houdini公式YouTubeは4月23日(木)、OFFF HIVE 2026イベントでのArtur Gadzhiev氏の講演動画「Designed Chaos | Artur Gadzhiev | OFFF HIVE 2026」を公開した。ラスベガスの巨大球体施設「Sphere」で開催されたAnymaのライブショーにおいて、超高解像度かつ特殊な球体スクリーン向けに、プロシージャルなVFXをどのように構築したかを解説している。
巨大スクリーン向けクロスシミュレーションの構築と最適化
講演冒頭のトピックとして、巨大なドレスの帯がなびくような布の動きを計算するクロスシミュレーションの手法を解説。Gadzhiev氏は、最初からポリゴンモデリングを行うのではなく、ガイドとなるCurveを描画して断面形状を押し出すSweepを行った後に、Remeshによって詳細なシミュレーション用のトポロジーを生成するアプローチを採用した。Vellum Clothの初期設定に対して、Rest Length Scaleをわずかに上げて布の余力となる物理的なシワを生み出し、同時にBend Stiffnessを下げることで自由度の高い動きを実現。
さらに、計算コストの高い再シミュレーションを避けるための実務的な工夫として、シミュレーション後にRetimeを用いて再生速度を落とすことで巨大な布の重量感を表現した。また、Soft Transformによる滑らかなシルエットの微調整や、Attribute Blurで不要な細かいノイズを平滑化するなど、ポストプロセスでの効率的なルック調整術を紹介している。
Vellumを活用した有機的なクリーチャーの生成システム
次に、Sphereの球体スクリーン表面を歩き回り、触れた場所から植物を発生させる有機的なエイリアンの制作プロセスを解説。ベースとなる平面グリッドにポイントを散布し、VEXを用いて近接するポイント間に距離や方向に基づいた曲線を生成することで、複雑な骨組みを自動的に構築している。
頭部の脈打つようなアニメーションには、Mountainによるノイズ変形に加え、VellumによるSoftピンを活用したセカンダリモーションを追加。その際、重い計算を避けるためにシミュレーション全体を原点付近の簡略化された形状で行い、Point Deformを用いてその動きを元の複雑なメッシュや内部構造に転写する。さらに、内部をながれる血液のような表現は、時間経過と共にUV座標をシフトさせるだけのシンプルな処理で実装している。
平面グリッドから完全な球体へのシームレスな変換アプローチ
平面上で構築されたクリーチャーの歩行システムを、破綻なくSphereの球体表面に沿わせる手法についても解説された。複雑なシステムを球体スクリーン向けに最初から再構築するのではなく、平面のグリッドで完成したセットアップの最後に、2つのBendノードを追加するという極めてシンプルなアプローチだ。1つ目のBendで1つの軸に対して180°曲げ、2つ目のBendで直交するもう1つの軸に対しても180°曲げることで、プロシージャルな構造を維持したまま、平面グリッドを完璧な球体に変換している。
「Human Now」MVにおける多次元空間の構築
講演終盤には、8K解像度で約6,000フレームに及ぶ大規模シーケンス「Human Now」MVについても紹介。人類とテクノロジーの平行世界をテーマにした本作品では、3つの異なるチームが協働し、1台のカメラが途切れることなく複数の世界をシームレスに通り抜けるという非常に難易度の高い構成となっている。
無限の反射が続く「Mirror Room」の空間や、キャラクターがクリスタルのような外殻から有機的な姿へ変容するシーンでは、マスクによるジオメトリのブレンドと成長の制御が行われている。複雑に多次元空間が崩壊していくような最終シーンの演出においても、内部の仕組みは単なるボックスのスケール操作と、Redshiftレンダラによる反射と屈折の技術の組み合わせによって成り立っていると明かした。
■Designed Chaos | Artur Gadzhiev | OFFF HIVE 2026(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=biXKFHpzNVc
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