Houdini公式YouTubeは4月10日(日)、イベント「Gnomon HIVE 2026」におけるフリーランスのCGジェネラリスト・Nick Scarcella氏の公演「COPius Amounts of Fun | Nick Scarcella | Gnomon HIVE 2026」の動画を公開した。Houdiniの2Dおよび3D画像処理フレームワークであるCopernicus(COP)を活用し、レンダリングパスとプロシージャルノードを駆使した多彩なルックデヴや、AIによるカスタムツールの構築などといった高度なワークフローを解説している。
レンダーパスをマスクとしたUVのブラーと歪み
SOPからの直接出力や、レンダリングから得たオブジェクトポジションパス(3D空間の座標情報を持つ画像)などの各種レンダーパスをマスクとして活用し、COP内で画像のBlurやDistortノードを適用するアプローチを解説。動画内では、靴のレンダリング画像からデプスマップを生成してブラーの適用範囲を制御したり、パスを用いて靴紐のような細部に至るまで正確にエフェクトを追従させる手法を紹介している。
さらに、UVマップの座標情報に対してブラーや歪みをかけ、それをPatternノードなどのジェネレータにながし込むことで、独自の模様や歪んだテクスチャを再帰的に生成するHoudiniならではの高度なプロシージャル制御も披露。これらのアプローチは、Copernicusの強みを活かし、3Dレンダリングと2Dコンポジットの境界をなくすことで、ルックデヴにおける試行錯誤を高速化する。
カラーパレット生成とSDFによるグリフ作成
ルックデヴにおける反復作業を効率化する手段として、Random RGBノードを活用したカラーパレットの自動生成テクニックを紹介。特定のリファレンスカラーに対して色相値を制限したうえで、シード値を変更し続けるだけで、デザイン的に破綻のないカラーパレットを無数に作成できる。
また、SDF Shapeノード群を使用して独自のグリフ(図形記号)を生成し、SDF特有のスムージングやブレンド機能を組み合わせることで、Webデザインなどで見られるローディング画面のアニメーションをプロシージャルに構築する手法も解説。さらに、輝度マスクを用いてStamp Pointsノードの配置を制御し、単純な図形の反転やアウトラインの有無といった細かな調整をライブプレビューしながら行うことで、押下されたボタンのような立体的で説得力のあるUI的表現もHoudini内で完結して制作できる。
Flow Solverを用いたUVマップ上のシミュレーション
実写映像からオプティカルフローを用いて抽出したモーションベクトルや、SOP内で作成したグリッドのベロシティ(速度)情報を、Houdini 21のCopernicusで実装されたFlow Solverの入力として活用する高度なシミュレーション手法を実演。このソルバによってUVマップを流体的に変形させ、そこにテクスチャをサンプリングすることで複雑なディテールを生み出している。動画後半の作例では、足踏みをする靴のプロキシモデルから取得したアトリビュートを起点としてソルバを駆動(Advect)させ、ダイナミックな塗料の飛沫表現を構築するプロセスも公開している。
ClaudeとMPCを活用したカスタムツールの開発
作業の技術的な摩擦を減らすため、LLMのClaudeとMCPを組み合わせ、Houdini内で直接動作するカスタムノードをAIにコーディングさせるアプローチを紹介。AIによる画像生成はコントロールが難しく意図しない結果になることも多いが、コード記述用のアシスタントとして利用すれば、Houdiniが持つプロシージャルな制御性を損なうことなくパイプラインの拡張が可能になる。その具体例として、人間の視覚特性に近く、色相環を移動しても彩度が低下しにくい「OKLab」カラースペースに対応したOpenCLベースのカラーランプノードの構築事例を詳細に解説している。
開発されたカラーランプノードは、OpenColorIO(OCIO)を認識し、ACESプライマリカラーを直接変換して自然なグラデーションを作成できる。さらに、スタジオ間を移動するフリーランスの環境下でも客観的な色基準を保つためのカラースコープツールの自作や、Hydraデリゲートを活用してSolaris上で他社製レンダラのようなAB比較操作などを可能にする自作のレンダービューア開発事例も紹介している。
■COPius Amounts of Fun | Nick Scarcella | Gnomon HIVE 2026(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=EzE62ZeMzLQ
■Houdini公式ページ(SideFX)
https://www.sidefx.com/ja/products/houdini/
Gnomon HIVE 2026について
「Gnomon HIVE 2026」は、ハリウッドに拠点を置くCG・VFX専門学校「Gnomon」が主催し、Houdiniの開発元であるSideFX社などと協同開催した、CG業界向けのプレゼンテーションイベント。映画やゲーム、モーションデザインなどの第一線で活躍するアーティストやテクニカルディレクターが登壇し、実際のプロジェクトで培ったワークフローや独自のR&Dの成果を解説した。
■Gnomon School of Visual Effects, Games & Animation
https://www.gnomon.edu/
CGWORLD関連情報
CGCircuitが同社YouTubeチャンネルにてチュートリアル動画「[FREE TUTORIAL] How to Create a Custom Geometry Dissolve in Houdini | VFX Tutorial with Ali Al-Tobi」を公開。テクニカルディレクターのAli Al-Tobi氏が講師として登壇し、Houdiniを用いて、オブジェクトが分解・消失していくジオメトリのディゾルブ(溶解)エフェクトをプロシージャルに構築するワークフローを解説している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202604-Houdini-dissolve.html
●SideFX、チュートリアル「Project Violet」公開 MetaHumanを用いたプロシージャルなキャラクターパイプラインの構築に焦点を当てた、Houdini 21の実践的なワークフロー解説
SideFXが同社公式サイトにHoudini 21による中級者向けチュートリアルコンテンツ「Project Violet」を公開。Epic GamesのMetaHumanとHoudiniの高度な物理演算機能を組み合わせた、人型キャラクターの制作ワークフローを提示している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202604-ProjectViolet.html
●HoudiniとUnreal Engineによるプロシージャルジェネレータのブレイクダウン公開 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の空島にインスパイア
Jesse Olchawa氏が自身のArtStationブログにて「Sky Island Generator Project Breakdown」と題した記事を公開。本記事は、HoudiniとUnreal Engineを活用し、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』から着想を得た「Sky Island Generator(空島ジェネレータ)」の制作工程をブレイクダウンしたもの。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202604-SkyIsland.html