デジタル・フロンティアのテクニカルディレクター(TD)・山口氏は5月27日(水)、同社公式note「DF TALK」にて、3DCGの制作フローにおけるUSD(Universal Scene Description)の検証記事「USDをワークフローに取り込んでみてわかったこと」を公開した。近年VFXやゲーム業界で普及が進むオープンソースの3Dシーン記述フォーマットUSDについて、その核となるレイヤー構造の仕組みと、実際の制作パイプラインへ組み込んだ際のメリットおよび課題を実務的な視点から解説している。

レイヤー構造を活かした3Dシーンの構築

USDはレイヤー構造を用いて複数のデータを積み重ねながら3Dシーンを構築できる点が最大の特徴。Photoshopなど画像編集ツールにおけるレイヤーの概念に近く、背景や人物を別々に描いて合成するように、3DCGの各要素を合成できる。

  • ▲model.usd、shader.usd、shader_bind.usd と、それを合成するasset.usdを作成し、MayaのUSD Layer Editorに取り込む
  • ▲取り込み後のMayaのOutlinerとビューポート。Maya内部では3つのUSDファイルが合成されている

実際のデータ構造では、形状データを定義するモデル(model)、質感や色を定義するマテリアル情報のシェーダ(shader)、そしてマテリアルをモデルに割り当てるバインド情報のシェーダバインド(shader_bind)といった個別のUSDファイルを作成し、それらをひとつのアセットファイル内で合成する。この際、後から読み込まれるレイヤーが先の情報を上書き(over)する仕組みにより、元データを直接変更することのない、非破壊編集を実現している。

ワークフローへの導入効果と設計の課題

複数セクションが関わるCGパイプラインにおいて、USDのレイヤー構造はメリットが大きい。従来のワークフローでは、各セクションが出力した多様な形式の差分データや設定ファイルを読み込み、シーン構築時に再構築する処理が必要となる。デジタル・フロンティアの場合、3Dデータはma/mb、fbx、abcで、設定類はjsonやyamlファイルなどで書き出し、差分の処理はシーンビルド時にReferenceやImportで読み込んだり、設定ファイルを解釈してシーンを組み立てるなどといった処理を走らせているという。

その点、USDを基軸に据えたワークフローでは、各セクションの出力データをそのままレイヤーとして重ねるだけでシーン構築が完了し、処理の大幅な効率化が期待できる。

ただし、この仕組みを活かすためには懸念も多いと山口氏。まずは、アセット制作からショット制作までの工程全体でデータの階層構造を一致させる綿密な設計コストが求められること。そして、各種DCCツール間でのUSDサポート状況(単位系の解釈差など)にばらつきがあることから、全工程をUSDに置き換えることは現状難しく、従来の手法と混在することでかえってデータ管理の複雑さが増す懸念があることだ。

山口氏は、メインツールのMayaだけで考えた場合でも、Mayaのネイティブノードとシームレスに混在させることが難しいことや、MayaのGUIからUSDの全機能を編集できないこと、コントロールリグを表現できないこと、Toonシェーダなど、特殊なシェーダの表現に制約があることなどを挙げている。

■USDをワークフローに取り込んでみてわかったこと|DF TALK(note)
https://note.com/dftalk/n/n10a55d1d0d27

OpenUSDについて

OpenUSDは、Pixar Animation Studiosが開発した、アニメーション3Dシーンを共同で構築するための高性能かつ拡張可能なソフトウェアプラットフォーム。大規模な映画やVFX制作のニーズを満たすように設計されており、形状、シェーディング、ライティング、物理シミュレーションといった領域をカバーする拡張可能なスキーマ(データ構造の定義)を備える。これにより、多様なDCCツール間での堅牢なデータ交換を可能にする。

OpenUSDは、複数のアセットを大規模なアセンブリへと組み合わせるための、豊富で多彩なコンポジション機能を備える。これにより、多くのクリエイターが同時に同じシーンを編集・共有できるコラボレーティブなワークフローが実現し、複雑なプロジェクトにおいてもスムーズな共同作業を促進する。

■OpenUSD公式サイト
https://openusd.org/release/index.html

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