デジタル・フロンティアは4月14日(火)〜20日(月)、公式note「DF TALK」にて、Netflixシリーズ『今際の国のアリス』シーズン3のVFX制作の裏側を語る若手クリエイターインタビュー企画全5編を順次公開した。世界的な大ヒットを記録している同作の最新シーズンにおいて、カメラトラッキングからプロシージャル背景制作、巨大エフェクトのシミュレーション、コンポジットを見据えたライティング設計、水表現の合成に至るまで、実作業を担った若手スタッフ陣が現場での挑戦や工夫が詳細に語られている。

第1回:ズレを許さないカメラトラッキング(木村氏)

第1回では、ショット室に所属する木村氏が、エピソード3〜4における東京タワー周辺カットのカメラトラッキング作業について語っている。木村氏は、ブルーバックが中心で背景情報が乏しい撮影環境下において、ウィットネスカメラ(Witness Camera、空間や照明情報を記録するための参照用カメラ)の映像を頼りに、目視による精密な位置合わせを実践した。

現場では、アナモルフィックレンズ(横長のアスペクト比で撮影するための特殊レンズ)特有の歪み補正の計算について、関係者間で再検証が行われるなど、プロの現場ならではの厳格な品質基準が求められた。わずかなズレが後工程のクオリティに直結するため、妥協のない精度の追求が行われ、プロの現場で最初の工程の正しさを確定させることの重要性を実感したとのことだ。

■VFX制作の裏側|Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3 VFX制作の裏側 若手クリエイターインタビュー① ズレを許さないカメラトラッキング(デジタル・フロンティア 公式note「DF TALK」)
https://note.com/dftalk/n/nc3cde6a4926a

第2回:Houdiniを活用したプロシージャル背景制作(高氏)

第2回では、背景室の高氏が手がけたプロシージャルな背景制作のアプローチを解説。高氏は、独学で習得していたHoudiniのスキルを活かし、建設中のビルの鉄骨通路や渋谷の街中に配置される工事用プロップのレイアウトを自動生成するツールを構築した。

本プロジェクトでは、MayaSolaris(Houdini上でUSDを扱うための専用環境)を前提としたワークフローが採用されており、ツール間のデータ受け渡しにおける制約やエラー対応に苦心したという。Houdiniを用いたアプローチにより、大量の背景アセットを効率的かつランダムに配置する仕組みが確立され、フルCGによる緻密な画づくりに貢献している。

■VFX制作の裏側|Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3 若手クリエイターインタビュー② Houdiniを活用したプロシージャル背景制作(デジタル・フロンティア 公式note「DF TALK」)
https://note.com/dftalk/n/n99df722e01f6

第3回:1周10時間の巨大渦エフェクトはどう作られたのか(藤谷氏)

第3回は、エフェクト室の藤谷氏による、エピソード6に登場する巨大な渦や爆発といった大規模なFXショットの制作裏話。大スケールの渦エフェクトはデータ量が極めて膨大で、シミュレーションからレンダリングまでの1サイクルに10時間以上を要したという。1カットで5〜6TBにも達する重いデータを扱うため、ライティング工程でのマシンのクラッシュを防ぐべくデータを分割し、レイヤーごとに分けるなどのワークフロー上の工夫が凝らされた。

技術的工夫として、傾斜のある地形での計算範囲の肥大化を防ぐため、一度地形を平坦な状態に変形させてからシミュレーションを実行し、その後元の傾斜に戻すという特殊な手法を採用。また、実写とCGのエフェクトでは体感速度に差異が生じるため、実写の60km/hに相当する動きをCG上では120km/hでシミュレーションするなど、実写プレートに馴染ませるための緻密な速度調整が重ねられている。

■VFX制作の裏側|Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3 若手クリエイターインタビュー③ 1周10時間の巨大渦エフェクトはどう作られたのか(デジタル・フロンティア 公式note「DF TALK」)
https://note.com/dftalk/n/nbcb66003123a

第4回:コンポジットを見据えたライティング設計(張氏)

第4回では、ショット室の張氏が、東京タワーのカットやアリスの室内シーン、渋谷の崩壊シーンなど、多岐にわたるショットのライティング設計について解説。ライティング工程においては、後工程であるコンポジット担当者が手を加えずとも成立する「次の工程が困らない素材」を出力することが徹底された。アセットの細かな色味調整やリフレクション素材の追加出力など、先回りした対応によりディレクターからのリテイクを最小限に抑えたという。

また、USDワークフローの導入に伴い、ショットチーム側でエフェクトのレンダリングを行うという社内でも初の試みに挑戦。エフェクトデータの重さとレンダリングコストを身をもって体験することで、画づくりだけでなく、前工程の負荷やスケジュール設計までを総合的に俯瞰する重要性を学んだという。

■VFX制作の裏側|Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3 若手クリエイターインタビュー④ コンポジットを見据えたライティング設計(デジタル・フロンティア 公式note「DF TALK」)
https://note.com/dftalk/n/n3010c09f0c0b

第5回:濁流シーンに挑んだ水表現のコンポジット(中山氏)

第5回ではショット室の中山氏が、難易度が高い水の表現、特に濁流シーンを中心としたコンポジット作業について語っている。激しく動き回る実写のカメラワークに合わせて、ブルーバック素材の人物とフルCGの濁流を違和感なく合成する処理は、技術的ハードルが高かったという。

実写とCGの境界を無くし、質感を馴染ませるための修正作業は幾度となく繰り返され、ディレクターからの緻密なフィードバックを受けながら精度を高めていった。限られたスケジュールの中で膨大なトライ&エラーを重ねることで、合成手法の最適化と作業スピードの大幅な向上を達成できたとのことだ。

■VFX制作の裏側|Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3 若手クリエイターインタビュー⑤ 濁流シーンに挑んだ水表現のコンポジット(デジタル・フロンティア 公式note「DF TALK」)
https://note.com/dftalk/n/nd13112cdf200





■『今際の国のアリス シーズン3』(デジタル・フロンティア)
https://www.dfx.co.jp/cgmaking/alice-in-borderland3

■『今際の国のアリス』(Netflix)
https://www.netflix.com/jp/title/80200575

株式会社デジタル・フロンティアについて

1994年に株式会社ティー・ワイ・オーの映像事業室として発足し、2000年に設立された総合映像プロダクション。映画、TVアニメ、ゲームのムービー、実写VFXなど幅広いジャンルを手がける。お台場にはモーションキャプチャスタジオ「オパキス」を構え、独自のツール開発やAI活用を探求する高度なR&D部門を備える。

■デジタル・フロンティア公式サイト
https://www.dfx.co.jp/

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