Pixar Animation Studios公式YouTubeチャンネルは6月14日(日)、日本では3月に劇場公開されたアニメーション映画『私がビーバーになる時(原題:Hoppers)』のブレイクダウン動画「Hoppers: One Shot, Many Artists | 'Single Shot' Progression for Bear Attack (Hoppers now on Disney+)」を公開した。クマが襲いかかってくるわずか数秒のシングルショットが完成するまでの過程を、ストーリーボードからレイアウト、アニメーション、エフェクト、最適化まで、各部門のスペシャリストたちがどのように連携し、映像をつくり上げたかを約30分にわたり詳説している。
(C) 2026 Disney/Pixar
カメラワークとアニメーションにおける視覚的効果
レイアウト部門とアニメーション部門では、巨大なクマが茂みから飛び出してくる瞬間の迫力を最大化するための試行錯誤について語っている。当初は広い川辺のセットをそのまま映すだけの予定だったが、それではクマの出現が遠くの出来事に見えてしまい、恐怖感が薄れるという問題があった。
そこで、別キャラクターの肩越し視点とウィップパン(Whip Pan、急激なカメラの横振り)を組み合わせることで、観客に直接襲いかかってくるような疑似的な主観映像をつくり出した。
さらに、アニメーターは物理的に正確な移動距離(約15フィート)でジャンプさせると、動きのエネルギーが失われることに気づいた。この問題を解決するため、クマが空中に飛び出す瞬間にキャラクターのスケールを物理的に巨大化させ、カメラが動くまで意図的にキャラクターの進行を完全に停止させるという大胆なごまかしを行っている。
筋肉の質量と皮膚の滑りを表現するキャラクターシミュレーション
キャラクターシミュレーション部門のTDは、アニメーターが作成した動きに対し、説得力のある物理挙動を追加する工程を解説。単に毛を揺らすだけでなく、まずは肉の塊としての質量をシミュレーションし、その上にシート状のジオメトリが体の表面を前後に滑るスキンシミュレーションのレイヤーを追加している。
体毛については、根本を固定し先端に向けて曲げに対する抵抗力を持たせた微小なスプリングシステムを採用し、それぞれが衝突し合いながら皮膚の動きに追従する仕組みを構築。また、物理演算によってアニメーターが意図したシルエットが崩れる場合は、頂点を手動で引っ張って形状をクリアに修正するなど、プロシージャルな計算とアートディレクションのバランスを取る調整を行ったとのこと。
手付けによるアセット配置と流体シミュレーションの統合
エフェクト部門では、クマが水辺を走る際の水しぶきの表現において、Houdiniを用いて計算コストと演出のコントロールを両立する手法を紹介。
川全体の水を3千万ポイントとしてシミュレータにながし込む物理演算任せのアプローチでは、欲しい位置に的確なディテールが出ず、キャラクターの演技を隠してしまうという課題があった。そこで、水しぶきの形状や高さ、ルックを個別にコントロールできるスプラッシュのアセットを設計。このアセットをクマが水面に接するタイミングに合わせてアーティストが手作業でピンポイントに配置し、それらをシミュレータに入力して演算させる手法を採用している。これにより、演出意図に沿った場所のみに的確なディテールを発生させつつ、不要な計算負荷を抑えることができたという。
CPUヒートマップを活用したレンダリングの最適化
ピクサー独自のライトスピード部門は、反復的なレンダリングによるコスト増大を防ぐための最適化アプローチを解説。当該ショットにおいて特定の樹木モデルが計算時間を著しく長引かせていることを突き止めるため、画面内のどの領域が計算的に複雑であるかを可視化するCPU heatmapという診断用レンダリング画像を活用している。
アーティストは質を上げるために細部をつくり込みがちだが、最終的な画面に貢献しない不可視のディテールは計算資源の浪費に繋がる。ヒートマップで負荷の高い葉のジオメトリを特定したうえで、アートとしての意図を損なわない限界まで、モデルを簡略化したバージョンへと差し替えている。
■Hoppers: One Shot, Many Artists | 'Single Shot' Progression for Bear Attack (Hoppers now on Disney+)(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=Vj2OAptTQD4
(C) 2026 Disney/Pixar
CGWORLD関連情報
●SideFX、Houdiniによる『トロール2』メイキング動画を公開 Vellumを用いた心臓表現、RBDによる建物の破壊、KineFX活用の樹木制御など
Houdini公式YouTubeが、映像制作スタジオOne of UsのFXテクニカルディレクター・Anthony Maalouf氏の講演動画「The Weight of a Giant: Orchestrating Large-Scale FX on Troll 2」を公開。Netflix『トロール2』のクライマックスにおける川での戦闘シーンを題材に、AIに頼らない伝統的で高度なエフェクト制作手法を解説している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202607-Houdini-Troll2.html
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Houdini公式YouTubeが、FMX HIVE 2026イベントでのRISE | Visual Effects Studios・Andreas Giesen氏の講演動画「Scaling Procedural Destruction for Fallout Season 2 | RISE | FMX HIVE 2026」を公開。実写ドラマ『フォールアウト シーズン2』における、広大な都市のプロシージャル破壊や最適化された巨大な砂のシミュレーション、大規模制作を支えるUSD(Universal Scene Description)パイプラインについて解説している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202607-Houdini-Fallout.html
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Houdini公式YouTubeが、The Yard VFX・Fabien Novak氏によるFMX HIVE 2026イベントでの講演「The FX of Predator: Badlands | The Yard VFX | FMX HIVE 2026」を公開。映画『プレデター:バッドランド』の制作において同スタジオが手がけたVFXワークフローを解説。広大な異星の環境ダイナミクスから、アンドロイドの身体を再構築する有機的なシミュレーション、そして80カット以上にわたる剣劇アクションシーンを短期間でさばくためのプロシージャルなアプローチに至るまで、高度なパイプライン構築の手法を紹介している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202606-Houdini-Predator.html