Houdini公式YouTubeは6月25日(木)、映像制作スタジオOne of UsのFXテクニカルディレクター・Anthony Maalouf氏の講演動画「The Weight of a Giant: Orchestrating Large-Scale FX on Troll 2」を公開した。Netflix『トロール2』のクライマックスにおける川での戦闘シーンを題材に、AIに頼らない伝統的で高度なエフェクト制作手法を解説している。
VellumとMPMを用いた心臓の鼓動表現と土塊の付着
Maalouf氏はまず、トロールの体内から引きずり出された巨大な心臓の表現について解説している。心臓の鼓動はリギングや手付けのアニメーションを使用せず、完全にVellumのVellumソフトボディシミュレーションによって構築。Constraintの長さを決定するRest Length Scale値をサイン波(Sine Function)で増減させることで、心臓の物理的な収縮と膨張を再現している。
さらに、CHOPを用いて0から1の値を持つ波形グラフを作成し、DOPネットワーク内のVellum Constraint Propertiesノードに属性として読み込ませることで、鼓動のタイミングや部位ごとの変形を精密にコントロールする手法を紹介。また、心臓に付着した土塊の表現には、Vellum GrainsではなくMPM(Material Point Method)を採用することで、Vellum Grains特有の滑るような挙動を避け、土塊としての塊感や回転を伴う自然な崩れ方を実現している。
RBDによる建築物破壊とコンストレイントの制御
トロールが学生寮の建物を破壊するシーンでは、マテリアルごとに階層化されたRBDシミュレーションの手法を紹介。コンクリート、木材、レンガ、漆喰といった材質ごとにFractureを適用した後、RBD Constraints From RulesやRBD Constraint Propertiesを用いてコンストレイントを緻密に設定する。
Voronoi Fractureから得たCluster属性を活用したコンストレイントの制御法も用いられており、バルコニーのような大きな構造を維持する部分にはSoft Constraintを、トロールの衝撃で容易に砕けるべき境界部分にはGlue Constraintを割り当てることで、レゴブロックのように単調に崩れるのを防ぎ、リアルな破壊のディテールを生み出している。また、窓ガラスに走る衝撃波は全体を再シミュレーションするのではなく、最初の破壊結果をGuideとして読み込み、Growing Maskを乗算することで後から容易に追加・制御する。
完全制御を目的としたガイドシミュレーション手法
トロールが破壊された橋の破片を拾い上げて武器にするシーンでは、破片の形状やタイミングを監督の意図通りに完全制御するためのGuided Simulation手法を採用。このアプローチでは、ベースとなる支柱や橋の構造物を手付けのキーフレームでアニメーションさせ、それをガイドとしてRBDシミュレーションをドリブンしている。
さらに、アスファルトや金属部品などの追加レイヤーは、メインの構造物に対して直接的なコンストレイントを行わず、ガイドの動きに追従させる仕組みを採用。これにより、イテレーションをほぼリアルタイムで行うことが可能となり、一部の材質の挙動に変更があった場合でも、シミュレーション全体が破綻することなく迅速に修正できる。
KineFXを活用した樹木の風の挙動とプロシージャルな成長
建物の崩壊に伴う爆風で周辺の樹木が揺れる表現については、計算負荷の高いVellumを避け、KineFXを用いた効率的な手法を解説。SpeedTreeから出力されたメッシュとスケルトンは接続が途切れていることが多いため、For Eachループを用いて枝の階層を示すLevel属性を抽出し、親の枝の先端から子の枝の根元へと正しい順序でスケルトンを再接続する処理を行っている。これにより、トラバーサル(階層を辿る処理)のエラーを回避した上で、Rig Attribute Wrangleノード内でPre-Rotate関数を用いて回転を加えることで、末端の枝ほど強く揺れる自然な風の表現を実装している。
■The Weight of a Giant: Orchestrating Large-Scale FX on Troll 2(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=KCKJsiQP5b4
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