あにつく」公式YouTubeは8月18日(火)、昨年9月に開催した「あにつく2025」における、アニメーション制作スタジオ・株式会社ENGIによる講演動画「【株式会社ENGI】TVアニメ『メダリスト』のキャラクターリギング解説【あにつく2025】」を公開した。TVアニメ『メダリスト』において、手描きの作画パートと3DCGパートが共存する作品特有のキャラクターリグについて解説している。

©つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会

MayaとmGearを用いた構築と揺れものの手付け

『メダリスト』のリギングは、MayaとオープンソースのリギングフレームワークであるmGearを採用。衣服や髪の毛といった揺れものの表現では、アニメ特有の誇張や意図的なタイミングの制御をより精密に行うことを目的に、物理演算によるシミュレーションは用いず、アニメーターによる手付けでモーションを制作した。

作画の「美しいウソ」と3DCGの差異を埋めるアプローチ

アニメーション制作において手描きの作画と3DCGが混在する際、フル3DCG作品では気になりにくい違和感の発生が大きな課題となる。特に、真正面や真横といった特定の角度では設定画に忠実であっても、斜めなどの異なる視点にカメラが移動すると、作画特有の「美しいウソ」と立体物である3Dモデルとの間に形状の乖離が生じやすい。

この3Dキャラクターの弱点を補うため、本作では表情の作成や細かい修正を3Dアニメーターがゼロから手作業で作り上げるのではなく、角度ごとの補正値をあらかじめプリセット化する手法を採用。これにより、作画アニメーターからの修正指示に柔軟に対応しつつ、必要に応じてレタッチ処理を併用することで、手描きと3Dの差異から生じる違和感を最小限に抑えている。

カメラアングル補正のプリセット化と一貫したデータパイプライン

表情の作成と修正において、ショットごとにカメラアングルに合わせた形状補正をその都度つくり上げるのは作業負荷が高い。そのため、あらかじめ作成した補正状態をプリセットとして管理し、シーンに応じて適用する度合い(ブレンド具合)を柔軟に調整可能な仕組みを構築。

また、リグの制作工程全体を見渡すと、モデルのセットアップからレイアウト、アニメーション、そして最終的なライティングおよびコンポジットへと至る一連のデータフローが厳格に定義されている。フェイシャルターゲットなどの要素データはリグ工程へインポートによって統合され、後続のアニメーション工程へはリファレンスとして安全に引き渡されるデータパイプラインが整備されている。

工程を分けたレイアウトリグとアニメーションリグの運用

制作の効率化と安定性を両立させるため、本作では用途に応じた複数のリグが使い分けられている。レイアウト工程では、モデルを輪切りにして各関節にバインドした、計算負荷が軽いレイアウトリグが使用される。後のアニメーション工程に対してモーションデータを正確に引き継ぐ必要があるため、この軽量化された段階であっても関節の位置は厳密に決定される。

一方、メインの動きをつけるプライマリアニメーションから、髪や衣服などのセカンダリ(揺れもの)、そして最終的なレンダリングまで幅広く使用されるのがアニメーションリグ。本作のキャラクターには極端に豪華な服装や髪型はないものの、顔の表情には多様な変形構造を組み込むなど、感情表現の豊かさを支える工夫が施されている。

複雑なデータ要素の管理とデフォーマ階層の緻密な制御

リグを構成するデータ要素は多岐にわたり、ガイドやモデル、ターゲット、ウェイトなどを細かく分類して管理している。例えばモデルデータだけでも、最終出力用のレンダーモデル、調整用のウェイトモデル、構築用のセットアップモデルと目的別に分かれ、ダミージョイントや設定された連動アニメーションであるセットドリブンキー、各種スクリプトがこれらを制御している。

さらに、顔などの複雑な変形を破綻なく実行するため、変形処理を行うデフォーマの評価順序(階層)を緻密に設計。表情を混ぜ合わせるblendShapeから始まり、空間を歪めて変形させるangleLattice、ボーンに追従させるskinClusterへと至る一連の処理において、顔のパーツ(part)や輪郭線(outline)、シワなどの微調整(tweak)を制御するノードが順序立てて適用されている。

■【株式会社ENGI】TVアニメ『メダリスト』のキャラクターリギング解説【あにつく2025】(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=DdpcjbLBc-Q

©つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会

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