株式会社Cygamesは8月4日(火)、CEDEC2026で発表した11講演の資料を公開した。本公開資料には、英語版『ウマ娘 プリティーダービー』のローカライズ手法から、『GRANBLUE FANTASY: Relink - Endless Ragnarok』のアート制作・バトル設計に至るまで、多岐にわたる開発・研究の知見が含まれる。本稿では特にVFX関連の3つの講演について、概要を紹介する。

アートとゲームデザインをつなぐVFX設計『GRANBLUE FANTASY: Relink - Endless Ragnarok』における表現と可読性の両立

蔦 直樹氏による本講演では、ゲーム内の激しいバトルにおいて、派手すぎるVFXがプレイヤーのプレイアビリティを損なう問題がある点を掘り下げている。『GRANBLUE FANTASY: Relink - Endless Ragnarok』では、VFXを印象論に基づいて無闇に薄くしたり小さくしたりするのではなく、プレイヤーが判断に用いる情報として論理的に整理・設計するアプローチを採用したという。

実務的には、視線を止めるためのハードエッジと、環境になじませて視線をながすソフトエッジを使い分けている。これにより、画面内で読むべき情報の芯を際立たせつつ、周辺を世界観に馴染ませることができる。また、プレイヤーに事象の位置や方向、タイミングを正確に伝えるための手がかりとなる、アンカーの概念を重要視。透視変形のパーツを足して奥行きを推測させたり、ポイントライトを配置して空間上の座標を読ませたりするといった工夫を施した。さらに、画面全体の明度配分をコントロールし、起点となる主役のエフェクトに明度を集めて余波の明度を下げることで、情報に明確な優先順位をつくり出している。

■ 【CEDEC2026】アートとゲームデザインをつなぐVFX設計『GRANBLUE FANTASY: Relink - Endless Ragnarok』における表現と可読性の両立
https://speakerdeck.com/cygames/cygames_202607_cedec2026_11

派手さと見やすさは両立できる!『Shadowverse: Worlds Beyond』エフェクト・3D背景の超進化したビジュアル設計

島田遼治氏らによる講演では、『Shadowverse: Worlds Beyond』のエフェクトおよび3D背景におけるビジュアル設計を解説。本作は「明るくモダン」をコンセプトに掲げ、新規層にも既存層にも魅力的なビジュアルの正統進化と、遊びやすさに直結する視認性の両立を目指したという。

エフェクト制作では、標準機能の限界を超えるため、素早い開発サイクルを回せつつアーティストがGUIで直感的に扱える多機能シェーダ「NovaShader」を新たに導入。実装例としては、ベースマップに対してティントカラーとグラデーションマップを掛け合わせて禍々しい炎の温度感を表現する手法や、空間の形状を抜くディゾルブと、エッジを光らせるブルームを組み合わせて次元の扉を開く表現などを紹介している。

また、ポストエフェクトを活用した演出操作では、色収差による華やかなインパクトの付与や、輪郭線抽出を用いたショックコマ風表現、カラーグレーディングによる明度反転などで視覚的な新鮮さを生み出している。さらに、パーツ単位での描画順を厳密にコントロールするため、デフォルトレイヤーの上に加算やブルーム用の専用レイヤーを4つ追加し、複雑なエフェクトの重なりを整理。3D背景制作では、PBRを導入しつつも、Metalnessの個別調整や補助ライトによる立体感の強調を行うことで、フォトリアルに偏りすぎない独自の画づくりを実現している。

■ 【CEDEC2026】派手さと見やすさは両立できる!『Shadowverse: Worlds Beyond』エフェクト・3D背景の超進化したビジュアル設計
https://speakerdeck.com/cygames/cygames_202607_cedec2026_07

グラフィックスエンジニアのためのニューラルシェーディング入門

林 秀一氏は本講演で、AI技術をシェーダとしてグラフィックスパイプラインに直接組み込む「ニューラルシェーディング」の手法を解説している。これは、複雑な計算処理を多層パーセプトロンというネットワークモデルを用いて軽量に近似する技術で、PBRで用いるマテリアル表現やテクスチャのデータ量を大幅に圧縮するニューラルテクスチャ圧縮、グローバルイルミネーションの推論などに適用され、メモリや処理負荷を大幅に削減しつつ高品質な描画を可能にする。

講演では実務的な実装手段として、シェーダ言語「Slang」と、そのPython向けインターフェイス「SlangPy」を利用した効率的なパラメータバインディング手法を紹介。ネットワークの学習に必要な勾配(Gradient)を算出するための自動微分機能や、次世代ハードウェア機能である協調ベクトル(Cooperative Vector)を用いて大量の行列演算をH/Wアクセラレーションで高速化するアプローチなど、描画最適化における重要な知見を解説している。

■【CEDEC2026】グラフィックスエンジニアのためのニューラルシェーディング入門
https://speakerdeck.com/cygames/cygames_202607_cedec2026_03





■ CygamesによるCEDEC2026の講演資料(Speaker Deck)
https://speakerdeck.com/cygames

CGWORLD関連情報

●モノリスソフト、「PythonでPhotoshopのツールを作りたい」技術ブログ公開 デザイナーチーム共通のツール開発ノウハウを紹介

モノリスソフトが公式技術ブログにて記事「PythonでPhotoshopのツールを作りたい」を公開。著者は同社テクニカルアーティスト菅原氏。UI作成や保守の観点から、Pythonを用いてPhotoshop用の独自ツールを開発するにあたって、特にPython環境を持たないデザイナーにツールを配布するための実践的なファイル構成やプログラムの実装例を紹介している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202608-Monolith-Python.html

●Lucas Piazzini氏、現実の金属における微細な傷が引き起こす複雑な反射の物理的メカニズムとレンダラ上で再現するための複数のアプローチについて比較・解説する動画を公開

ILMのジェネラリスト・Lucas Piazzini氏が動画「Forgotten Metal Knowledge | Vray, Cycles, Arnold..」を公開。映画『アイアンマン』(2008)のCGスーツに見られる金属表現「Reflection Tail-off(反射のテールオフ)」現象に着目し、現実の金属における微細な傷が引き起こす複雑な反射の物理的メカニズムと、それをV-RayやBlender(Cycles)、Arnoldレンダラで再現するための複数のアプローチについて比較・解説している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202608-MetalKnowledge.html

●デジタル・フロンティア、OpenPBR検証記事「OpenPBRのすゝめ ツールに依存しない新しい標準マテリアル」を公式noteで公開

デジタル・フロンティアのTD高橋氏が同社note「DF TALK」にて、検証記事「OpenPBRのすゝめ ツールに依存しない新しい標準マテリアル」を公開。マテリアルのオープンスタンダードフォーマット「MaterialX」の普及を目指すプロジェクトの検証シリーズ第3弾として、MaterialXのサブプロジェクトとして共同開発されているシェーディングモデル「OpenPBR」に焦点を当て、ArnoldやUnreal Engine、Karmaなど複数の主要レンダラを用いた描画結果の比較を提示している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202607-DF-OpenPBR.html