デジタル・フロンティアのテクニカルディレクター(TD)・高橋氏は7月7日(火)、同社公式note「DF TALK」にて、検証記事「OpenPBRのすゝめ ツールに依存しない新しい標準マテリアル」を公開した。マテリアルのオープンスタンダードフォーマット「MaterialX」の普及を目指すプロジェクトの検証シリーズ第3弾として、MaterialXのサブプロジェクトとして共同開発されているシェーディングモデル「OpenPBR」に焦点を当て、ArnoldやUnreal Engine、Karmaなど複数の主要レンダラを用いた描画結果の比較を提示している。

OpenPBRの概要と目的

OpenPBRは、3DCG制作において「どのツールでも同じパラメータで同じ質感を再現する」ことを目指して誕生したシェーディングモデル。フィジカルモデルを統一することで、各DCCツールによる解釈の違いやズレを極力減らす設計で、挙動がシンプルかつ直感的、ツール間の橋渡しとしてアーティストの作業を支援する思想が根底にある。

既知の問題点:EmissionやSSSのレンダラ間差異

  • ▲Emissionのレンダラ間差異(OPBR_Light_Bulb_2700_K)
  • ▲SSSのレンダラ間差異(Petroleum)

記事内では実務での運用を想定し、MaterialXViewをはじめ、Unreal Engine(PathTracing)、Arnold、V-Ray、Karma(Houdini)、Omniverseといった多岐にわたるツールでのレンダリング比較が行われている。検証用のアセットには標準的なシェーダボールを使用し、作業用色空間はRec.709で統一。各ツールが同じOpenPBRのマテリアルをどのように読み込み、画面に出力するのかを客観的かつ厳密に評価している。

OpenPBRはツール側の対応が進んでいるものの、高度な光学計算においては依然としてレンダラ間で出力結果に差異が生じることが報告されている。特にEmissionについては、Luminanceの解釈がDCCツール間で異なり、例えばArnoldやV-RayとKarmaではカメラが受け取る数値に大きな開きが生じる事象が確認された。また、サブサーフェススキャタリング(SSS)も、各レンダラ独自の計算アルゴリズムに強く依存するため、数値を揃えるだけでは完全に同じ見た目にすることが困難だと指摘している。

実務における対処法:レンダラ固有係数による調整

▲高橋氏が算出した固有係数表

EmissionやSSS、Transmissionにおける見た目の差異を吸収するため、高橋氏はレンダラごとの内部係数(Coefficients)を算出して適用するアプローチを提案。全体的に見た目が近いレンダラを基準値として設定し、各DCCツールの作業単位(Working Unit)やパラメータの意味合いに合わせた係数を掛け合わせることで、ツール間の出力結果を高いレベルで一致させることができる。記事内には、高橋氏が算出した固有係数表も公開されている。

  • ▲パラメータ調整後のEmission(Light_Bulb_2700_K)
  • ▲パラメータ調整後のSSS(Petroleum)

検証の総括として、現段階でのOpenPBRを用いたツール間の完全なマテリアル共有は発展途上であると結論づけている。内部計算が複雑な要素には依然として差異が残るものの、ターゲットとするレンダラをある程度絞ることで、十分に実用的なルックの統一が可能であると評価している。

■OpenPBRのすゝめ ツールに依存しない新しい標準マテリアル|DF TALK(note)
https://note.com/dftalk/n/nc698760653da

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