6月30日(金)にCygamesのオウンドメディア「Cygames Magazine」で、同社のゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)のメイキング記事「個性豊かな『ウマ娘』会話シーンを実現する「スクリプター」の仕事とは?」が公開された。

会話シーンとは、キャラクターが話したり動いたりしているシーンのことで、ゲーム業界では「キャラ劇」や「アドベンチャーパート」とも呼ばれる。『ウマ娘』では、ゲーム内の「育成会話」と「ストーリー」でウマ娘たちの会話シーンを見ることができる。様々な要素を組み合わせ、会話シーンを制作するのが「スクリプター」の役割だ。

今回の記事では、ウマ娘ひとりひとりに合わせた動きや表情が登場する、リアルな会話シーンを実現するため、スクリプターたちがどんな仕事をしているのか、スクリプトチームリーダーのマサキ氏から話を聞いている。

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会話シーンのワークフロー

▲『ウマ娘』チームでのスクリプターの仕事のながれ

会話シーンの制作はシナリオから始まる。シナリオライターからシナリオを受け取ったら、その会話シーンで必要になるモーションの案出しや発注と、ボイスデータ収録が行われる。全ての素材が揃ったら、スクリプターが会話シーンのスクリプトを組んでいくというながれだ。

キャラクターのモーションは1,500種類以上あるという。そのため、すでにあるモーションでも制作は可能だが、ウマ娘との物語は千差万別なので、シナリオに合わせて新たにモーションを追加することが多い。この膨大な数のモーションの中から、それぞれのウマ娘に似合う動きを選んで演出を付けることも、スクリプターの仕事だ。

ウマ娘にはそれぞれ専用のモーションも存在する。最近反響の大きかったネオユニヴァースの、両腕を上に伸ばして宇宙と交信しているようなポーズの専用モーションも記事内で紹介された。

『ウマ娘』会話シーンの制作には、Cygamesが独自開発した「会話シーン用エディタ」(以下、専用ツール)が使われている。元々スクリプトは専用のコードを書く必要があり、実際にどんな演出になるかはリアルタイムに確認できなかった。しかし専用ツールでは、動画編集ソフトのようにタイムライン上で直感的にスクリプトを制作することができる。

モーション、表情、背景、BGM、カメラ、エフェクト、SEなども設定でき、リアルタイムに設定した演出を映像として確認することが可能となった。通常速度だけでなく、任意の速度でも挙動を確認できるため、細かい部分のチェックにも向いている。専用ツールがあることで、未経験者でもウマ娘たちの魅力を最大限に引き出せる環境になったという。

タイトルに合わせた専用ツールを開発できる体制を構築している点は、Cygamesと『ウマ娘』ならではの強みと言えるだろう。『ウマ娘』のアニメーションについて深掘りした月刊『CGWORLD』vol.296では、ストーリーレース専用の内製エディタを紹介しているので、気になる人はチェックしてみてほしい。

▲記事内で紹介されている専用ツールの画面
「Cygames Tech Conference」(2021年11月開催)にて行われた会話シーンについての講演資料「ウマ娘 プリティーダービーにおける会話シーン制作事例 ~如何にして膨大なモーションを効率よく制作し、自然に演技をさせるか~」

マサキ氏は、『ウマ娘』のスクリプターとして意識していることのひとつに、リアリティーとアニメらしい表現の両立を挙げた。スクリプターは演出を用いて、ウマ娘たちの「実在感」を高めることを目指している。私たちが普段無意識に行なっている動作を、ゲームの中では意識的に演出することが「実在感」に繋がると考えていると、マサキ氏は語った。「実在感」を高めるためのリアルな演出を基本としながら、アニメや漫画のような表現も取り入れることで、ウマ娘たちのいろんな表情を見せることも、スクリプターが目指しているもののひとつだという。

▲「うまぴょい伝説」で、目が横一文字になるアニメっぽい表情を見せているスペシャルウィーク

縦画面の「育成会話」と横画面の「ストーリー」における、各コンテンツのテンポに合わせた演出のちがいも述べられた。「育成会話」では、ゲームのテンポを悪くしないよう、最低限の演出を心掛けているという。一方「ストーリー」では、物語をより丁寧に描写し、ウマ娘ひとりひとりに寄り添った演出を目指している。

今回の記事では、スクリプターに必要なスキルや資質、スクリプターのキャリアパスについても紹介されている。スクリプターの仕事を深掘りした貴重なインタビューなので、ご興味のある方はぜひご確認いただきたい。

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Cygames Magazineでは、Cygames作品の開発の裏側をはじめ、様々なコンテンツを配信している。ほかの『ウマ娘』の制作工程や、各チームの仕事について知りたい方は、今回の記事とあわせてチェックしてみてはいかがだろうか。

『ウマ娘』ライブ開発チームが実現する最高のライブ映像<前編> 『Never Looking Back』のラストカットができるまで
『ウマ娘』ライブ開発チームが実現する最高のライブ映像<後編> 制作事例初公開!『Gaze on Me!』イントロパートのカットができるまで
『ウマ娘』ウイニングライブができるまで 振付師・モーションアクター×3DCGアーティスト座談会

Cygames Magazine

information

『ウマ娘 プリティーダービー』

配信開始日:2021年2月24日

価格:基本無料(有料アイテム販売あり)

開発・運営:株式会社Cygames

対応機種:iOS、Android、PC

ジャンル:育成シミュレーション

umamusume.jp

© Cygames, Inc.

CGWORLD関連情報

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