先日、Kaikai Kiki Marketplaceにて発売されたPVCフィギュア『超弩級人造怪猿獣ZERO』。現代美術家、映画監督など幅広いフィールドで活躍する村上 隆氏が手がけた全長36cmのPVC(ポリ塩化ビニル)製フィギュアであり、カイカイキキ製ソフビフィギュアの第一作目でもある。全長36cm、リアルな塗装、圧倒的な造形力で仕上げられていることから、その価格も484,000円(税込)と、アートエディション物の高価格帯であった。本稿では、そんな『超弩級人造怪猿獣ZERO』の発売を記念して制作された特別映像について、制作を担当したエヌ・デザインへのインタビューをお届けする。

大迫力バトルをフォトリアルなCGアニメーションで描く

今回制作された『超弩級人造怪猿獣ZERO』特別映像は、グランドシネマサンシャイン池袋にて『ジュラシッ ク・ワールド/復活の大地』本編上映前の幕間映像として2025年8月8日(金)から14日(木)までの期間限定で、4K映像、7.1chサラウンド音響で公開された。それだけクオリティに自信があると言えるだろう。

それでは、特別映像の制作を担当したエヌ・デザインとのインタビューをお届けしよう。

——どのような経緯で、映像制作を担当されたのですか?

エヌ・デザイン:
村上 隆さんから、「カイカイキキ製ソフビの第1作目となる怪獣フィギュアを、リアルな世界観でCGアニメーション化してほしい」とのご要望をいただきました。そこで演出をはじめとする様々な提案をさせていただきながら制作を進めました。

完成した映像としては、映画の予告編のようなイメージで約2分のフルCGアニメーションになります。ちなみに定かではありませんが、後半の商品紹介パートは実物のフィギュアを使った特撮だと思います。

——参加スタッフ数と、チーム編成について教えてください。

エヌ・デザイン:
CGスタッフとしては、細かく分業していたので15名ほどでした。そのほかにモーションキャプチャスタジオの方々や、モーションアクターさんなども関わっています。

——制作期間と、ワークフローを教えてください。

エヌ・デザイン:
プリプロから完成までに約10ヶ月を費やしました。

まずはビデオコンテを作る過程で、アクションコーディネーターさんと相談しながら具体的なアクションプランを練りました。ある程度アクション演出が固まったタイミングで、いったん簡易的なモーションキャプチャを収録して、プリビズを作りました。それを村上さんにチェックしていただき、全体の構成がほぼ確定したら、本番のモーションキャプチャ収録を行いました。

それと並行して怪獣キャラクターとエンバイロンメントのモデリングを進めていきました。クリーンアップされたキャプチャデータが届いたら、キャラクターに流し込んでみてめり込みなどの不具合を調整。さらにその裏で、毛と筋肉のシミュレーション、街の破壊などのエフェクト作業も進めていきました。

それらのデータが完成したらショットワークを行なって完成、というながれでした。

——キャラクターモデルの制作について、詳しく教えてください。怪獣フィギュアのデジタル原型データを基に、映像用の作り替えを行なったのでしょうか?

エヌ・デザイン:
そうとも言えますが、支給されたデジタル原型データは体毛も含めてソフビ用にモデリングされていたため、全面的に作り直す必要がありました。まずは、毛がない状態を想像しながら筋肉の構造に合わせたリトポロジーとモデリングを行いました。具体的にはZBrushでスカルプトし、Mayaで質感付けを行いました。毛のシミュレーションを前提とした、モデリングと質感を設定しました。

毛のないモデルができあがったら、リグ&セットアップ作業を行います。まずはアニメーター用のリギングをMayaで行い、アニメーションチームにパブリッシュ。

次に筋肉シミュレーションのためにHoudiniでセットアップを行いました。Mayaから、.abc(Alembic)形式で書き出して、Houdiniでシミュレーション作業用のネットワークを構築しました。

さらに必要な表情のターゲット作成とフェイシャルリグのセットアップを行なっていきました。

——アニメーション作業について教えてください。

エヌ・デザイン:
先ほどの回答と一部重複しますが、モーションキャプチャによるプリビズ作業を通してアクションや芝居のながれ、くり出す技の選定を行いました。

その後のアニメーション工程では、キーフレームで動きをブラッシュアップ。カメラワークについては、巨大な怪獣が戦っているその場にいる臨場感とドローン的な俯瞰の画を織り交ぜることで観る人をどんどん引き込むように演出しました。

——ライティングとレンダリング作業について教えてください。

エヌ・デザイン:
先ほどお話した筋肉と毛のシミュレーションに加えて、破壊のシミュレーションもHoudiniで行いました。ライティング作業はMayaで行なったため、Houdiniから.ass等の形式でMayaに読み込みました。

レンダリングは、ボリューム系についてはHoudini(Arnold)を使い、それ以外の要素はMaya(Arnold)でレンダリングしています。

——最後に、コンポジット作業について教えてください。

エヌ・デザイン:
今回は、基本的にNukeによるDeep Compositingで作業しました。相応にデータは重くなりますが、煙などの実写素材も扱っていたので、CG素材の前後関係を特に意識することなく効率的にコンポジット作業を行うことができました。

——ありがとうございました!

エヌ・デザインはフルCGから実写VFXまで多彩な表現を得意としているが、現在放送中の『ウルトラマンオメガ』 などの怪獣アクションもコンスタントに手がけているので本作でもその才能が存分に発揮されたと思う。

PVCフィギュア『超弩級人造怪猿獣ZERO』
本体価格:48万4,000円(税込、国内梱包配送費は4,200円)
仕様:SUPER COLOSSAL ARTIFICIAL APE BEAST

 PVC製フィギュア

 H360×W250×D115(mm)/全長36cm

 シリアルナンバー・サーティフィケート(サイン入り)
プロデュース:Tonari no Otakara antique hunter
製造:カイカイキキ ソフビ工場
©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

INTERVIEW & EDIT_NUMAKURA Arihito