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シームレスかつ効率的な制作体制を実現するため、デジタル化が急速に進行するアニメーション制作の現場で抜本的なワークフローの改善を行ってきたトムス・エンタテインメントデジタル推進部。

 以前CGWORLDでも取り上げた「TMSCAM」に続き、AMDと共同で3DCGによるアウトラインを出力するProRender「Toon Trace」を開発、新規タイトルでの活用を模索しているという。そんな彼らの制作体制を支えるのはAMDのRYZEN・RADEON搭載マシンだ。

「どんなに便利なツールを開発してもスペック不足で動かせないなら、受け入れる余地はありません」と語るデジタル推進部部長・伊東耕平氏に、導入背景やアニメーション制作の効率化におけるAMDとの取り組みについて伺った。

TEXT _神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATE STUDIO

PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota


12コア24スレッド搭載で
巨大なシーンデータもサクサク動く

「アニメ制作のデジタル化と作業の効率化においては、レイアウトをいかに早く組めるかが重要な要素のひとつだと考えました。そこで、2018年にデジタル化の足掛かりとしてFoundry MODOをベースとした「TMSCAM」を開発しました。「TMSCAM」はカメラを共通化することで2Dと3Dの連携を強化し、アニメーターのレイアウト作業の効率化を目指したツールで、制作ラインを持つ テレコム・アニメーションフィルムでは、3Dレイアウト作業に活用しています。(伊東氏)」。 「TMSCAM」上で制作した3Dレイアウトを活かすには、これまで線画がメインであった作画・美術チームにもMODOのような3DCGツールが必要となる。さらに、現在の背景美術製作に関しては解像度が高くなっていること、レイヤーが複雑になっていることに起因して処理負荷も圧倒的に上がっていることから、よりハイスペックな機材の導入が必要となった。


  • 森本竜英氏
    日本AMD株式会社
    ストラテジック・アカウントセールス本部
    GPU担当 マネージャー

そこで、美術部にRyzen 7 3700X(8core16Thread),Radeon RX 5500 XT,メモリ16GBのミドルモデルと、よりハイエンドなRyzen 9 3900X(12core24Thread),Radeon RX 5700 XT,メモリ32GBという構成のモデルを導入。背景美術制作で本モデルを使用するテレコム・アニメーションフィルム美術部の山子泰弘氏、石田杏里氏は、現在主にFoundry ModoやArmorPaintなどのDCCツールを活用しているが、特にプレビューの快適性とレンダリング速度を高く評価した。「例えば、57万ポリゴン・844オブジェクトといった非常に重いデータも、プレビューの動き方は全く問題ありません。レンダリング速度も非常に速いため、いつでも最終的な画を確認しながら試行錯誤を行うことが可能です(石田氏)」。背景美術を3Dで制作することのメリットは、"主人公の家"など何度も登場するシーンや、球体に模様を張り付けたような複雑な造形の再現が容易になる点だ。作業には高いスペックが求められるが、RyzenのメニーコアとRadeon GPU性能の恩恵で非常にスムーズな作業が実現出来ている。

  • モデル
  • ハイエンド
  • ミドル
  • 用途
  • 3DCG制作PC
  • 2DCG制作PC
  • CPU
  • AMD Ryzen 9 3900X
    プロセッサー
  • AMD Ryzen 7 3700X
    プロセッサー
  • グラフィックス
  • AMD Radeon RX 5700 XT
    グラフィックス
  • AMD Radeon RX 5500 XT
    グラフィックス (8GB)
  • メモリ
  • 32GB以上
  • 16GB以上

【左】MODOで制作した3Dレイアウト  【右】それをもとに制作された背景美術
原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV

また、PhotoShop CCのレイヤー数も作業者によっては100以上になることもあり、従来機では複数の.psdファイルを開いて作業することが困難な場合も多かったが、現在は複数のツールをまたいだ作業も問題なく行えており、他社との協業の際もスペック不足に悩まされることはなくなったという。背景美術は4K/8Kを見据えた高解像度化や、それに伴うレイヤー数の増加が見込まれるため、PhotoShop CCのブラシの動きひとつ取っても快適な作業のための要求スペックは上がり続けている。普段の業務だけを見るのではなく、未来のワークフローを見据えた余裕のある機材選定が重要となる現代において、AMDマシンの果たす役割は更に大きくなるはずだ。



アウトライン描画ツールの開発で
ワークフローを一新!

AMDの技術支援は機材提供だけにとどまらない。さらなるアニメーション制作の効率化のため、AMD、トムス・エンタテインメント、 モルゲンロットの3社が共同開発した「Toon Trace」を用いたワークフローの改革が進行中だ。Toon Traceは「手描きアニメーションとの合成のためにキャラクターのアウトラインを表示したい」という日本のアニメーション現場の要望から開発されたRadeon™ ProRender向けの新たな描画機能で、開発に携わったのがAMDの藤枝 慎氏、トムス・エンタテインメントデジタル推進部の高野怜大氏と佐伯圭介氏。日本のアニメーション制作現場の声をAMDがキャッチし、日本国内で開発を行ったユニークな事例とった。


  • 藤枝 慎氏
    日本AMD株式会社 ワークステーショングラフィックスR&D
    ソフトウェアディベロップメントエンジニア

「特定のDCCツールに紐付いたレンダラーはソフトウェア側のアップデートで使えなくなる可能性があることから、一度作った仕組みを長く運用するためにはレンダリングに関してゼロから見つめ直す必要があると考えました。Toon Traceも途中段階から見せて頂いて、私達のフィードバックを踏まえてかなりの精度でブラッシュアップをして頂けました(高野怜大氏)」。Toon TraceはRender Output Fileにも対応しており、現在はモルゲンロット株式会社が提供するクラウドベースの分散型高速レンダリングサービス『Render Pool』上での利用が可能となっている。「既存ツールは有料のものが多く、無料オプションとしてクラウドサービスへ実装されるのは世界初となります。また、今後はProRenderの標準機能としても搭載予定です。(井上博隆氏)」


リモートによる各社協業の機会が増加することが予想される中、社内サーバーだけでなくクラウドベースのレンダリングの需要増も見込まれる。トムスとしてはこうした流れに先んじてクラウドベースのレンダーファームを採用し、3DCG活用規模の拡大に対応予定だ。日々進歩する3DCG制作現場を力強く支えるために、AMDはこれからも技術革新を続けていく。

高速レンダリングがワークフローを変えていく



原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV

テレコム・アニメーションフィルムではAMDデジタルクリエーションモデルを14台導入しており、MODOなどの3DCG技術を積極的にアニメーション制作に取り入れている。574,000ポリゴン/844objectのデータを展開していてもプレビューの反応は良く、レンダリングも10秒程度と非常に高速。レンダリングを待つことなく自分のマシンのみで作業が完結することで、ワークフローの短縮を実現できた形となる。CPUのメニーコアに起因して、複数アプリケーションを立ち上げた際の作業効率も向上。「デジタル推進部の次の一手としては、シーンアッセンブル用にIsotropix Clarisse BUiLDERを用いてオブジェクト群やカメラ情報を統合した巨大なシーンデータを取り扱う予定です(高野氏)。」とのことで、ハイスペックなマシンと共にさらに強力なワークフローを推進していくかたちだ。

アニメーション制作現場との連携で生まれた
アウトライン描画機能「Toon Trace」

【左】3DsMax Pencil+によるアウトラインをもとにしたラフ 【右】完成した背景美術
原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV

【左】Toon Traceでのアウトライン出力前 【右】Toon Traceでのアウトライン出力後 ©Yohsuke Nakano
上記の3DsMax Pencil+で出力したアウトラインと比較しても見劣りしないほど細かいライン描画が可能。

AMD、トムス・エンタテイメント、モルゲンロットの3社が共同開発した「Toon Trace」は、アニメーション制作において高速で美しいライン描画を実現する機能だ。現在はクラウドベースのレンダリングサービス「Render Pool」上で使用可能で、ProRenderの次期バージョンにも標準搭載予定となる。セルルック調の画作りにおけるアウトラインは非常に繊細かつ、作品によって違いが大きいため、ライン描画の範囲や太さなど細かなパラメーター設定にも対応する。


問い合わせ先
日本AMD株式会社
TEL:03-6479-1550
www.amd.com/ja