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東京に本社を構え「国内生産」や「24時間365日の電話相談」などを売りとするパソコンメーカーのマウスコンピューター。同社のクリエイター向けの高性能PCブランドが「DAIV」だ。コストパフォーマンスと安定性からクリエイター向けPCの定番となりつつあると言って良いだろう。
今回は、VFXアーティスト集団「UNDEFINED」に所属する気鋭の若手クリエイター2人が、ハイエンドのデスクトップPC「DAIV Z9」の性能を検証。それぞれが普段利用するPCと比較してもらい、そのパフォーマンスや使い勝手などをチェックしてもらった。

TEXT_近藤寿成(スプール)
EDIT_池田大樹(CGWORLD)

常用するマシンの予算は約30万~50万円
UNDEFINEDが重視するPCパーツとその理由

UNDEFINEDは、2000年前後生まれの若手クリエイターたちが集結した新世代のアーティスト集団。それぞれのメンバーが得意なジャンルや技術を活かすとともに、プロジェクトに応じて役割分担を変えることで、ハイクオリティな映像制作を実現している。今回の検証では、メンバーであるNAKAKEN氏とnagafujiriku氏の2人に協力してもらった。

NAKAKEN氏は、アブストラクトな表現を得意としており、チームでは「エフェクトやデザイン周りを担当している」そうだ。nagafujiriku氏は、ポストアポカリプスやサイバーパンクな世界観をテーマにフォトリアルなアートワークや映像を制作することが多いとのこと。チームではライティングやコンポジットをメインに担当するが、最近では「映像全体のディレクターを担当することもある」という。



高校生の頃からすでにフリーランスとして活動し、さまざまなライブ映像やミュージックビデオ、アートワークなどを手掛けてきたという両氏。それぞれが高い技術力で魅力的な作品を生み出す実力を持っているだけに、使用するPCのスペックも当然のことながら高性能な仕様になっている。

NAKAKEN氏のPCは、CPUが「インテル Core i9-9900K プロセッサー」(8コア/16スレッド/3.60GHz/TB時最大5.00GHz/16MBキャッシュ)、GPUが「GeForce RTX 3080」、メモリが32GB、ストレージがSATA接続の1TB SSD+2TBと6TBのHDDという構成だ。自作PCで定期的にスペックアップしているため具体的な総額は不明だが、「現在の構成だと約30万円」と見積もる。

nagafujiriku氏のPCは、CPUこそNAKAKEN氏とおなじインテル Core i9-9900K プロセッサーだが、GPUは「GeForce RTX 2080Ti」×2枚を搭載する圧巻の構成。さらにメモリは64GB、ストレージもNVMe接続のSSDを搭載しており、総額は「50万円を超えている」という隙のないマシンだ。

両氏は3DCGのレンダリングでOctane RenderRedshiftBlenderのCyclesやEeveeなどのツールを利用するため、PCの構成において「GPUの比重はかなり高い」とnagafujiriku氏は語る。ただし、After EffectsやPremiere ProなどでCPUパワーが必要になることから「決してCPUを軽視しているわけではない」とNAKAKEN氏は補足。お互いに「インテル Core i9-9900K プロセッサーを使っているのがその証拠」と付け加えた。

一方で、作品作りにおいてnagafujiriku氏は「コンスタントな制作」を意識しているという。なぜなら「圧倒的な量をこなすことが、ひいては質の向上につながる」と考えるからだ。その意味でも、圧倒的なスペックを備えたPCは、作業効率を上げるうえで無くてはならない存在だ。

またnagafujiriku氏は、コンスタントに作品を作り続けるためには、それに見合うだけの「膨大なインプットも必要」と指摘し、「リファレンス集めに時間をかけることも意識している」そうだ。この点はNAKAKEN氏も同じ考えを持っており、「好きなジャンルだけでなく、さまざまなジャンルの作品に触れる」ことの大切さも説く。自分の視野を広げたりモチベーションを上げたりすることにも役立つことから、初心者へのアドバイスとして「まずは、とにかく手を動かしてアウトプットする。そして、疲れたりモチベーションが低くなってきたりしたら、インプットするといい」と語った。

このように、ハイスペックな環境と高い意識で作品を生み出し続ける両氏。今回は、実際の制作に基づくテストを実施してもらい、それぞれのPCと比較しながら、DAIV Z9の実力やスペック以外の魅力を探ってもらった。

GeForce RTX 3070搭載 25万円台モデル
「DAIV Z9」の実力はいかに?

今回はマウスコンピューターのDAIV Z9を使用し、NAKAKEN氏とnagafujiriku氏のPCと比較しながら、それぞれで異なる検証を行ってもらった。

DAIV Z9は、インテルのデスクトップ向けCPU「インテル Core i7-10700 プロセッサー」とGPU「GeForce RTX 3070」を搭載。

インテル Core i7-10700 プロセッサーは2020年に登場した最新の第10世代にあたり、8コア16スレッドで基本クロックは2.90GHz、ターボ・ブースト利用時の最大クロックは4.80GHzという高い性能を持つ。GeForce RTX 3070も2020年に発売された最新シリーズで、コスパに優れたアッパーミドル向けモデルだ。また、メモリは64GB、ストレージはNVMe接続512GB SSDと2TB HDDのデュアル構成という充実した内容で、全体での価格は25万2560円(税込)となる。

DAIV Z9

  • CPU
  • インテル Core i7-10700 プロセッサー(8コア / 16スレッド / 2.90GHz / TB時最大4.80GHz / 16MBキャッシュ)
  • GPU
  • GeForce RTX 3070
  • メモリ
  • 64GB
  • ストレージ
  • NVMe接続512GB SSD+2TB HDD
  • OS
  • Windows 10 Home 64bit
  • 電源
  • 800W (80PLUS TITANIUM)
  • 価格
  • 252,560円(税込)

※実売価格は3月15日現在のものです
※BTO済み

基本的なスペック以外の機能も注目ポイントで、標準でWi-FiとBluetoothを搭載するとともにThunderbolt 3の拡張カードまで付属するのは、他の製品ではなかなか見られない特徴の1つ。また両氏は、電源が800Wあることから「将来的な拡張性がある」(nagafujiriku氏)ことや特徴的な電源ボタンのデザイン性に触れるとともに、「発熱が少なく、ファンの音も静かだった」(NAKAKEN氏)などの使い勝手の良さも評価した。

参考:NAKAKEN氏のPC

  • CPU
  • インテル Core i9-9900K プロセッサー(8コア / 16スレッド / 3.60GHz / TB時最大5.00GHz / 16MBキャッシュ)
  • GPU
  • GeForce RTX 3080
  • メモリ
  • 32GB
  • ストレージ
  • SATA接続1TB SSD+2TBと6TB HDD

参考:nagafujiriku氏のPC

  • CPU
  • インテル Core i9-9900K プロセッサー(8コア / 16スレッド / 3.60GHz / TB時最大5.00GHz / 16MBキャッシュ)
  • GPU
  • GeForce RTX 2080Ti×2枚
  • メモリ
  • 64GB
  • ストレージ
  • NVMe接続SSD

検証1:BlenderのCycles Renderレンダリング時間

NAKAKEN氏の検証では、同氏が用意した静止画の作品を使用してBlenderのCycles Renderでのレンダリング時間を計測した。画像素材のポリゴン数は730万、解像度は2,000×2,400ピクセル、サンプル数は512となる。

NAKAKEN氏によれば、今回の作品はライトの放射マテリアルがいくつもあるだけでなく、テクスチャもすべて4Kという「相当重い素材」となるため、レンダリングにもそれなりの時間がかかると想定していた。
しかしDAIV Z9で実際にやってみると、NAKAKEN氏のPCの6分58秒には及ばないながら、11分19秒で終了。爆速とはいかないまでも「非常に優秀だった」ほか、「スペック的には何の問題も起きず、モデリングからコンポジットまでをスムーズにできた。実制作に使ってもまったく問題ないはず」と高く評価した。

▲最初からテーマや完成形などをイメージしていたわけではなく、「カッコいい画を作る」とだけ決めて約4時間で完成させた作品。全体とは異なる世界観を奥にあるデジタルの文字列に持たせることで、人の目をひきつけているほか、中央に人を立たせることでスケール感も示している。また、複雑なライティングも特徴の1つ。構造物の角に丸みを帯びさせることで「シルエットを出しつつエッジを際立たせている」そうだ。

▲コンポジット前のレンダー画像。よく見るとややノイズ感が出ている。「RAWレンダーだとやはり色が薄かったりコントラストが足りなかったりするので、コンポジットでは、そこを上げるように意識して微調整を繰り返しています。上の完成画と比較しながら見ていただくとわかると思いますが、中央のデジタルの文字から光がこちら側に伸びてるようなエフェクトもコンポジットで追加しています。3Dシーン内だけでは難しい表現もコンポジットで追加できるBlenderはやはり凄いなと思います」(NAKAKEN氏)

▲Blenderコンポジット作業画面。「Blenderで制作を行うメリットとしては、他のソフトを一切開かず、全行程をBlender内で完結できるので、存分にクリエイティブに集中できる点です。例えば他のソフトだと、モデリングとライティングでそれぞれ別のCGソフトを立ち上げた上、さらにコンポジットにはAfter Effectsを......といったように複数のアプリケーションを行ったり来たりするのが常ですが、BlenderはCG制作における全ての工程の機能を一定レベルで持ち合わせているので、同じソフトで作品を0から完成まで作り上げることができます。あとは、DAIVのような高スペックのPCがあれば、ノンストップで集中してクリエイティブに向かうことができますね」(NAKAKEN氏)

▲今回のシーンは、リメッシュをしているためオブジェクト自体が非常に重い。ただ、リメッシュ後はスムーズに動かすことができるほか、リメッシュ自体も「一瞬止まるだけで数秒待てばすぐに元に戻る」ことから、「そこはCPUのスペックが高いおかげ。特別な問題点も感じなかった」(NAKAKEN氏)

▲NAKAKEN氏によれば、「以前使っていたGeForce GTX 1080 Tiでは、スペック的に今回のような重いシーンは作れなかった」という。例えば、三角の構造物の後ろの青い光や霧のような雰囲気は「ボリュームレンダリングでないと出せないため、GPUのパワーがないとそういった表現は犠牲にせざるを得ない」(NAKAKEN氏)。そういった意味で、GeForce RTX 3070なら「表現の幅が広がる」と感じたそうだ。

検証2:Octane RenderとAfter Effectsでのレンダリング時間

nagafujiriku氏の検証では、nagafujiriku氏が制作した静止画『Sleepy Emoji』、『Stasis』と、動画『Out Of Controll』を使用。静止画ではOctane Renderでレンダリング時間を、動画ではAfter Effectsでのレンダリング時間を計測した。

『Sleepy Emoji』と『Stasis』は、その日のインスピレーションを大事にして3~4時間でライブ的に制作した作品。一方、動画の『Out Of Controll』は音楽家とのコラボ作品で、2021年が丑年だったことから牛をテーマに作品を作りあげた。「政府の研究機関から巨大な牛が暴走して脱走した」というイメージがコンセプトとなっているそうだ。また、世界観は3つすべてで異なるが、共通のアセットを使っていたりもするので、「全体的な統一感は出ているかもしれない」と語る。



▲『Sleepy Emoji』完成画と作業画面。Octane RenderでのGPUレンダリングにおいて、ライブビューワーの動作自体は「とても快適でストレスはなかった」というのがnagafujiriku氏の印象で、「RTXの恩恵を大きく感じた」そうだ。さらに、今回のテストでは容量の大きいテクスチャを使っても問題なくレンダリングできたので「その点でも扱いやすかった」という。



▲『Stasis』完成画と作業画面



▲『Out Of Control』ブレイクダウン動画と作業画面。After Effectsなどにおけるシミュレーション系のキャッシュ書き込みでは、「必要十分なメモリや高速なNVMe接続のSSDにアドバンテージがある」とnagafujiriku氏は感じた。さらに、After Effectsはプラグインなども含めてCPUの依存度が高いことから、コンポジット作業では「クロック周波数とコア数に優れたインテルの最新CPUの恩恵を体感できた」と語る。

『Sleepy Emoji』の解像度は3,840×1,600ピクセルで、レンダリング設定はKernel Mode:Pathtracing、Max Sample:1,024、Diffuse Depth:8、Speculer Depth:8、RTX Acceleration:Onとなる。

『Stasis』の解像度は3,840×1,600ピクセルで、レンダリング設定はKernel Mode:Pathtracing、Max Sample:512、Diffuse Depth:8、Speculer Depth:8、RTX Acceleration:Onとなる。Out Of Controllの解像度は1,920×800ピクセルでFrame Rateは24fps、レンダリング設定はDuration:10:00となる。

静止画の検証結果は、『Sleepy Emoji』がnagafujiriku氏のPCで6分57秒、DAIV Z9で11分15秒、『Stasis』はnagafujiriku氏のPCで7分24秒、DAIV Z9で15分7秒だった。さすがに、GeForce RTX 2080Ti×2枚のPCには差を付けられたが、nagafujiriku氏はDAIV Z9に対して「普段の制作で特段の支障にはならない速度が出ている」との印象を語った。

また、それぞれの素材で時間差が異なることから、「シーンによってレンダリング速度も変わるようだ」と補足した。

一方で動画の『Out Of Controll』では、nagafujiriku氏のPCが3分16秒、DAIV Z9が2分18秒だった。DAIV Z9の方が優秀な結果だったことに対して、「SSDと最新のCPUの効果が大きかったのではないか」と分析した。

総合的な実力と高いコスパが魅力的!
初心者にもプロのアーティストにもオススメ

今回の検証を終えて、両氏はDAIV Z9の総合的なパフォーマンスの高さを実感。CPUやGPUの性能の高さからさまざまなツールが快適に動作するのはもちろんのこと、NAKAKEN氏はメモリが64GBあることで「複数のツールを同時に動かしてもまったく問題なく作業できる」と語った。nagafujiriku氏も「アプリの起動時間が短くて快適だった。また、シミュレーション系のキャッシュ書き込みにもアドバンテージがある」と感じたそうだ。

さらにnagafujiriku氏は、高いコストパフォーマンスを魅力として挙げる。自身のPCが約50万円もすることから、すべてにおいて必要十分な性能を兼ね備えながら25万円台(税込)という価格に感心しきりだった。それだけに、nagafujiriku氏が「これからCGを始める人にとってはもちろん、プロのアーティストが使う場合でっても非の打ちどころのない構成だ」と結論付ければ、NAKAKEN氏もさまざまなソフトを駆使して1つの作品を作り上げる「ゼネラリストにもオススメ」と締めくくった。

問い合わせ

株式会社マウスコンピューター
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