>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:チャンスがあれば「まずは挑戦してみる」。第16回:大久保博幸(Digital Domain / Effects TD)
チャンスがあれば「まずは挑戦してみる」。第16回:大久保博幸(Digital Domain / Effects TD)

チャンスがあれば「まずは挑戦してみる」。第16回:大久保博幸(Digital Domain / Effects TD)

今回はハリウッドの老舗VFXスタジオDigital DomainにてエフェクトTDとして活躍中の大久保博幸氏を紹介する。日本でファームウェアの開発者としてキャリアをスタートし、後にロサンゼルスに留学してVFX業界に転職したというユニークな経歴をおもちの大久保氏は、「チャンスがあれば、挑戦してみる事が大切」と語る。それでは、さっそく大久保氏にお話を紹介していこう。

TEXT_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe
ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に『海外で働く日本人クリエイター』(ボーンデジタル刊)、『ハリウッドVFX業界就職の手引き』などがある。
公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」


EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

Artist's Profile

大久保博幸/Hiroyuki Ookubo(Digital Domain / Effects TD)
鹿児島県出身。2000年に長崎大学大学院工学研究科を卒業後、日本航空電子工業株式会社に就職。2年後に退職し、デジタルハリウッド・サンタモニカ校(DHIMA)※に留学。その後、Luma PicturesにTechnical Directorとして就職しキャリアをスタート。その後、Method StudiosRhythm & Hues Studiosなどを経て、2015年にDigital Domainに移籍し、現職。
※デジタルハリウッド・サンタモニカ校 DHIMA(DH Institute of Media Arts):1997年に設立されたデジタルハリウッドのUSA校。後に閉校となったが、多くの卒業生をDigital Domain、ILM、Rhythm & Hues Studiosなどハリウッドの現場に輩出した実績を残している。

<1>未経験でアメリカに留学し、Mayaを学ぶ

ーー日本では、どんな学生時代を過ごされたのですか?

大久保博幸(以下、大久保):日本の大学では機械工学科を専攻し、熱伝導の研究をしていました。3DCGとはまったく無縁で、熱伝導の数値シミュレーションのプログラムを書いていたので、CやC++を勉強していました。ちょうどその頃から『ターミネーター2』、『ジュラシックパーク』、『マトリックス』などの視覚効果に3DCGを使った映画が公開され始め興味はもち始めていましたが、まさか最終的にその業界に就職するとは微塵も思っていませんでした。

ーー日本ではどんな仕事をされていたのでしょうか。

 

大久保:大学院卒業後、日本航空電子という会社に就職してタッチパネルなどのファームウェアのプログラムを書いていました。また、所属していた事業部で産業機械用のジョイスティックを開発しており、その操作のデモ用にDirectXを使ったプログラムを書いていました。このことも、3DCG業界に進みたいと思ったキッカケの1つだったと思います。

ーーアメリカに留学されたそうですが、何か転機があったのでしょうか。

大久保:当初は留学は全く計画にはなく、会社を辞めて大学院の博士後期課程に進学し、リモートセンシング(人工衛星などから地球表面付近を観測する技術)という分野で画像処理の研究に進むことを考えていました。しかしその計画がなくなり、映像関係の学校の情報を集めていたときにデジタルハリウッド・サンタモニカ校(以降、DHIMA)のことを知りました。会社を辞めていきなりアメリカに留学するのは不安でしたが、ハリウッド映画の映像制作に携わるという自分の本当にやりたいことを諦めきれなかったのです。

ーー留学されていた頃の話をお聞かせください。

大久保:DHIMAで、1年間のMayaのクラスを専攻し、同時に語学学校にも通いました。ホームステイ先に3DCGが使える高性能マシンがあるはずもなく、放課後は学校でマシンを自由に使えたので、遅くまで残ってほとんどの時間を学校で過ごしていました。当時は社会人時代の貯金を切り崩して生活していたので、貯金が底をつくまでというタイムリミットもあり、卒業後の1年間で具体的な進路が見えていなければ、帰国する予定でした。


仕事中の大久保氏

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<2>R&Dからレンダリングまで、エフェクト・アーティストとして様々な仕事に携わる

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