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第2回:グラフィックデザイナー志望の表紙

第2回:グラフィックデザイナー志望の表紙

グラフィックデザイン、ゲーム、CG、映像などのクリエイティブ業界へ、デザイナーあるいはアーティスト職での就職を希望する学生は、エントリーシートや履歴書と合わせて、作品集(ポートフォリオやデモリール)の提出を求められます。本記事では、ポートフォリオの「顔」とも言える表紙にスポットを当て、表紙に求められる役割と、ブラッシュアップのためのヒントを数回に分けてお伝えします。第1回では、ポートフォリオの表紙が担う役割を解説しました。今回は、グラフィックデザイナー志望者による表紙のブラッシュアップ過程を通して、ブラッシュアップ時の考え方とやり方をお伝えします。

SUPERVISOR_斎藤直樹 / Naoki Saito(コンセント
TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
取材協力_室橋直人(東京工芸大学)、東洋美術学校
作例提供_鳴海さくら

少し大味な表紙から、内容を伝える表紙へとブラッシュアップする

最初に紹介する実例は、グラフィックデザイナー志望の鳴海さくらさんのポートフォリオです。鳴海さんは2018年3月まで東洋美術学校に在籍し、グラフィックデザインを学んでいました。在学中に第一志望の会社から内定をもらい、4月以降はグラフィックデザイナーとして仕事をすることが決まっています。

  • ブラッシュアップ前の表紙。鳴海さんのポートフォリオの総ページ数は107ページ。Advertising、Editorial、Logo、Package、Otherからなる5つのカテゴリに分かれており、盛りだくさんの作品が掲載されていました


▲Logoの中扉と、作品紹介ページの一部。見せたいものが目立つよう、作品のレイアウトが工夫されています


▲Packageの中扉と、作品紹介ページの一部


このポートフォリオの表紙は「色鉛筆」が主役になっており、盛りだくさんの作品が掲載されていること、レイアウトにこだわっていることを伝えきれておらず、少し大味でもったいないと感じました。一方で、表紙と中扉に共通のモチーフ(色鉛筆)を使うアイデアはとても良いと思いました。このように共通のモチーフを散りばめると、ポートフォリオに統一感が生まれ、世界観を強調できます。

鳴海さんには、手はじめに「YWT」というフレームワークを使い、ポートフォリオ制作をふり返っていただきました。YWTは、以下の3つを書き出すことでふり返りを行う日本発の手法です。

Y=やったこと

W=わかったこと

T=つぎにすること

以下が、鳴海さんのYWTです。ほかの人に読まれることを意識しながら、短い言葉で表現していただきました。

Y=やったこと
・課題作品のブラッシュアップ
・自主制作を増やす
・先生、友人、企業の方など色々な人にポートフォリオを見ていただく
・周りの人だけでなく、美大生やほかの学校の人のポートフォリオも見る
・作品集やポートフォリオのつくり方の本を参考にする
・応募する会社に合わせた作品を制作する

W=わかったこと
・自分の作品は企画がしっかりしている(デザインだけでなく、企画も見せると良い)
・作品をつくる際に自分が考えたこと、意識したことを細かく説明すると良い
・応募する会社に合わせた作品を掲載した方が目にとまりやすい
・美大生のポートフォリオは、目を引き、読みたくなるようなデザインになっている

T=つぎにすること
・作品をより魅力的に伝える
・見やすいだけでなく、読みたくなるポートフォリオへとブラッシュアップする

続いて前述のYWTをもとに掲載作品全体を言い表すようなポートフォリオのタイトルを考え、表紙のサムネイルを描いていただきました。多くの学生は「鳴海さくらのPORTFOLIO」というように、「自分の名前」と「PORTFOLIO(ポートフォリオ)という単語」を組み合わせたタイトルを付けますが、それでは当たり前すぎて印象に残りません。あえて表紙に掲げるとしたら、どんな言葉がふさわしいか、どんな言葉であれば存在感があるか、気持ちを込めて吟味していただきました。なお、こういうときに選ぶ言葉は「こっぱずかしい」くらいでちょうど良いです。実際にアイデアを言葉にしてみて、サムネイルを描いてみて、判断することが重要です。

  • 鳴海さんは「My design picture book」というタイトルを考えました。picture bookには図鑑という意味があります。ボリュームがあって、作品に関する細かな説明が記されている鳴海さんのポートフォリオをうまく言い表したタイトルです。加えて、色鉛筆から受けとれるイメージやメッセージを踏まえ、「適切な色を、適切な場所に」というキャッチコピーも考えました。さらにそこから「図鑑のようにアイコンを並べ、それぞれのアイコンに合う色を色鉛筆で塗り分ける」というデザインを思いつきました


  • 前述のサムネイルをもとに、ブラッシュアップした表紙です。グラフィックスが洗練され、ちゃんと内容が伝わる表紙に生まれ変わりました。流行りのフラットデザインを取り入れたアイコンがデザインにマッチしています。サムネイルのアイコンは縦3個×横3個の配置でしたが、より図鑑らしく見えるように、アイコンを写真に見立てて配置しています。それぞれのアイコンはポートフォリオの中扉にも使えるように、カテゴリに合わせてデザインされています。5色の色鉛筆は一見すると無造作に置かれているように見えますが、バランスの良い配置を考えぬいた結果です。タイトルは「DESIGN PICTURE BOOK」、キャッチコピーは「Best color for the best design.」(そのデザインにベストな色を)へと練り直され、さらに鳴海さんのセンスを感じる言葉になりました。また、キャッチコピーを下部に移動させたことで、上部に偏りすぎていた文字のバランスが調整されています


▲【左】はAdvertisingの中扉、【右】はOtherの中扉です。Advertisingは大きな1個のアイコンで構成する一方で、Otherは小さな4個のアイコンで構成してあります。こういった細やかな工夫や遊び心を通して、グラフィックデザイナーに求められる素養とセンスをさり気なくアピールしています



今回は以上です。次回もぜひお付き合いください。
(第3回の公開は、2018年4月を予定しております)

プロフィール

  • 斎藤直樹(グラフィックデザイナー)
    株式会社コンセント

    神奈川県横浜市生まれ。1987年東京造形大学造形学部デザイン科I類卒。広告企画制作会社、イベント企画運営会社を経て、1991年株式会社ヘルベチカ(現コンセント)入社。HUMAN STUDIES(電通総研)、日経クリック、日経パソコン(日経BP社)などの制作に関わる。東洋美術学校ではグラフィックデザインの実習を担当。

Information

  • 採用担当者の心に響く
    ポートフォリオアイデア帳

    発売日:2016年2月3日
    著者:中路真紀、尾形美幸
    定価:2,000円+税
    ISBN:978-4-86246-293-0
    総ページ数:128ページ
    サイズ:B5判


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