今回は特別企画です。西川貴教さんの1stシングル『Bright Burning Shout』のMVに登場する死神をデザインさせていただきました。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 237(2018年5月号)からの転載記事になります

TEXT_早野海兵(画龍) / Kaihei Hayano(GARYU)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

西川貴教『Bright Burning Shout』
リリース:発売中
価格:1,800円(初回生産限定盤)、ほか
www.takanorinishikawa.com
©EPIC Records Japan

STEP1:仕事上での幸運


▲ここ最近、幸運にも若い頃にファンだった方々とお仕事する機会が何度かありました。3DCGの仕事をしていて本当に良かったと思える瞬間のひとつです。こうした仕事を通じて自分の作品もまた、観てくださる方の何かの役に立ったら本望です。

STEP2:モデル画像



▲モデル画像です。モデル自体はアニメーションのカットも多いということで、なるべく扱いやすいように考慮して作成しました。

STEP3:デザイン


▲デザイン第一稿です。いわゆる一般的な死神のシルエットを残しながら、胴体は自由に運動する帯のような素材で作成しました。


▲顔のアップ。髑髏にさりげなく装飾を施し、アップになったときにわかるようなしかけにしました。


▲「ラスボスっぽく」という意向で角を大きくし、羽を付けてファンタジーゲームの大ボスのようなイメージにしました。


▲帯にも金を混ぜ、顔の装飾も増やしました。


▲いったん撮影現場で世界観を確認したところ、「もっと自由に盛っていい」とのことだったので、今までにない独自の死神のイメージを作成しました。


▲装飾もより豪華に。MVの後半を飾る迫力を演出できるようにしました。

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STEP4:モデルとテクスチャの作成

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STEP4:モデルとテクスチャの作成

▲ベースになるスケルトンのモデル。マントで覆ってバランスを整えていきます。

▲体内や外に浮遊する帯は禍々しさを表現するためにあえてフリーハンド、手描きで作成しました。

▲顔の装飾も既存のパーツは使用せず、ひとつひとつ丁寧に仕上げています。

▲特徴的な死神の鎌も全体に装飾を施していきます。まるで職人になった気分です。


▲今回、ほとんどのテクスチャをSubstance Painterで作成しました。


▲Substance Painterと3ds MaxV-Rayの環境を合わせて、同じ見え方になっているか確認します。

STEP5:シーンの作成

▲ハイライトでもある、死神の死にゆくシーンはパーティクルやボリュームエフェクトを多用しました。

▲よく見ると破片ひとつひとつにもクロスシミュレーションで剥がれる動きが付いています。

▲途中、演出でシルバーになったときの画像です。これも良かったのですが。

STEP6:合成作業

▲今回の連載のために8Kで再レンダリングしました。実際、アップのシーンも多かったので十分堪えられるモデルです。

▲エレメントなどもなるべくシンプルにして、コンポジットの手間をかけないように配慮しています。

▲最終的なコンポジット後です。

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Extension Column 03

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Extension Column 03

3ds Maxは老舗の3DCGツールのひとつとして、その歴史上、様々な本体以外の機能拡張が施されてきました。かゆいところに手が届くフリーのものから、VFXでメインツールとなるような商用のものまで、様々な分野の機能拡張が存在します。このようなプラグイン文化と呼ばれる構成はほかの3DCGソフトにはない3ds Max独自の特徴と言ってもいいでしょう。

配置に役立つプラグイン

今回は作成したオブジェクトを配置したりランダムに表示したりと、レイアウト作業に便利なプラグインをご紹介します。

Clone

▲定番のフリープラグイン。オブジェクトをモディファイヤでクローン配置してくれます。モディファイヤなので後から数や位置などの変更が可能。

▲筆者の作品の龍はこのプラグインを活用しています。
www.itoosoft.com/freeplugins/clone.php

Greeble

▲オブジェクトの表面に細かいパーツを配置して、メカパーツのようなディテールを追加してくれるプラグイン。こちらもモディファイヤなので、後々変更ができて便利です。

▲筆者の作品例。街などの作成にもオススメです。
max.klanky.com/plugins.htm

RailClone

▲配置プラグイン、RailCloneのライト版。ライト版にしては十分な機能が付いています。ただ、プリセットが一部しか使えず、Z方向には対応していません。

本誌223号の連載で制作した巨大建築物です。水槽状のパーツはRailCloneで複製して並べています。
www.itoosoft.com/railclone.php

Forest Pack

▲こちらはForest Packのライト版。こちらも同様にプリセットが一部しか使えず、Z方向には対応していません。

▲森などの作成にオススメです。
www.itoosoft.com/forestpack.php

Object Randomizer

選択したオブジェクトをランダムに移動、回転などをしてくれるスクリプト。ちょっとした配置に便利です。
www.scriptspot.com/3ds-max/scripts/object-randomizer-2011-05-06

Randomize Elements

選択したオブジェクトのエレメント(要素)をランダムに移動、回転などをしてくれるスクリプト。モディファイヤなので便利です。
www.scriptspot.com/3ds-max/scripts/randomize-elements

Glue Utility

スプラインをオブジェクト上に投影してくれるプラグイン。変形した形のオブジェクトの表面にスプラインなどで配置したいときに便利です。
www.itoosoft.com/freeplugins/glue.php

[Information]

  • 株式会社画龍 早野海兵 監修
    3DCGベーシック講座[3ds Max]

    3ds Maxを本当にゼロからスタートする方のために作成したオンライン講座。本講座は画づくりと技術アップの両面を重視しています。また、3ds Maxの様々な実践的な機能を動画で収録しているため、後々機能のリファレンスとしても使用可能です。
    online.dhw.co.jp/course/3dcg

[プロフィール]
KAI
株式会社画龍 アートディレクター
www.ga-ryu.co.jp
www.kaihei.net
Twitter:@Kai_ryu_Kai