NVIDIA社は1月6日(月)、CES 2025でのGeForce RTX 50シリーズの発表に合わせて、ゲームキャラクター作成用の新しいニューラル・レンダリング技術群「NVIDIA RTX Kit」を発表した。本技術群は、ゲームアセットのAIによるレイトレース、パフォーマンスの向上したパストレーシングの利用、フォトリアルなゲームキャラクターのビジュアル生成などに活用できる。

NVIDIAはRTX Kitの公式ページで、同技術群のベネフィットを3つ紹介している。

ひとつは「シェーダーからAIをトレーニングしてデプロイ」。テクスチャのメモリ消費量を最大7倍削減し、シェーダコードを圧縮してマテリアル処理を最大7倍高速化する、新しい圧縮技術を利用可能になり、映画レベルのクオリティのアセットをリアルタイムでレンダリングできるという。

ふたつ目は「ゲームで利用可能なパフォーマンスで利用できるパストレーシング」。Bounding Volume Hierarchy(BVH、レンダリングやシミュレーションを高速処理できる階層的なデータ構造)をより高速に構築し、物理的に正確な反射や影、GIをシミュレートして、ディテール豊かなワールドをレンダリングするというもの。

3つ目は「“デジタル・ヒューマン”レンダリングの高速化」。ハードウェアアクセラレーションによってフォトリアルな出力をシンプルなワークフローで提供できるストランドベースのヘア(1本1本が確認できるタイプの3DCGのヘア生成手法)や、肌の品質を高めるレイトレースされたサブサーフェススキャタリングが利用できる。

RTX Kitに含まれるテクノロジー

■AIを活用したシェーダ
・RTX Neural Shaders:シェーダー内でニューラル・ネットワークをトレーニングしデプロイ
・RTX Neural Texture Compression:AIを使用したテクスチャ圧縮。最大8倍のVRAM効率
・RTX Texture Filtering:アーティファクトを減らして画質を向上させる技術
・RTX Neural Materials:AIを使用して複雑なマルチレイヤーマテリアルのシェーダーコードを圧縮

■ジオメトリとライティング
・RTX Mega Geometry:BVH構築を高速化してトライアングルを最大100倍レイトレース
・RTX Dynamic Illumination (RTXDI):シーンで最も重要なライトをサンプリングし、物理的に正確にレンダリングするアルゴリズムのライブラリ
・RTX Global Illumination (RTXGI):マルチバウンス間接照明を計算するスケーラブルなソリューション
・NVIDIA Real-Time Denoisers (NRD):レイが少ないピクセル信号用のデノイザーライブラリ
・NVIDIA Opacity Micro-Map (OMM):複雑なジオメトリの効率的なマッピングとレイトレースのパフォーマンス向上のために不透明度をエンコード
・RTX Memory Utility (RTXMU):メモリ消費量削減のためのユーティリティ

■キャラクターレンダリング
・RTX Character Rendering SDK:ストランドベースのヘアとフォトリアルなスキンをパストレースするためのツールセット

■NVIDIA RTX Kit(NVIDIA Developer、英語)
https://developer.nvidia.com/rtx-kit/

■NVIDIA RTX Neural Rendering Introduces Next Era of AI-Powered Graphics Innovation(NVIDIA Developer Technical Blog、英語)
https://developer.nvidia.com/blog/nvidia-rtx-neural-rendering-introduces-next-era-of-ai-powered-graphics-innovation/

CES 2025で発表されたその他の関連技術

NVIDIAは同日、「NVIDIA RTX Kit」以外にも下記のような技術を発表した。


■RTX Neural Faces:より自然なキャラクターの顔をレンダリングできる生成AIのアルゴリズム

■DLSS 4:AIを活用してFPSを高め、画像クオリティを向上させるニューラル・レンダリング技術

■NVIDIA Reflex 2:PCゲーム用のレイテンシ削減技術

■NVIDIA ACEによる自律型ゲームキャラクター:ACEの生成AIによりゲーム内のNPCがプレイヤーに動的に適応

音声ベースのAIフェイシャルアニメーション「Audio2Face」にも大きな更新が予定されており、従来よりもさらにキャラクターが表情豊かになるという。

CGWORLD関連情報

●NVIDIA、メッシュ生成モデル「Meshtron」発表! アーティストが制作するような高品質・実用的なトポロジーを生成可能

NVIDIA社が機械学習アルゴリズムを用いた3Dモデルのメッシュ生成モデル「Meshtron」を発表。Meshtronは入力されたポイントクラウドデータから、アーティストが制作するような整理されたトポロジーを持つ3Dメッシュを生成する。1,024レベルの座標解像度・最大64K面のメッシュの生成に対応する、新しい自己回帰モデルとなる。
https://cgworld.jp/flashnews/202412-NVIDIA-Meshtron.html

●3D生成AI「Stable Point Aware 3D」発表! Stability AIとNVIDIAとのパートナーシップ、画像から1秒以内に3Dモデルを生成

Stability AI社がNVIDIA社とのパートナーシップによる3D生成AI「Stable Point Aware 3D(SPAR3D)」を発表。すでに公開されており、ダウンロード(Hugging Face)とコードへのアクセス(GitHub)、統合(Stability AI Developer Platform API)が行える。Stability AI Community Licenseに基づき、商用・非商用を問わず無料で利用可能。
https://cgworld.jp/flashnews/Stability-SPAR3D.html

●生成AIスイート「NVIDIA ACE」向けUnreal Engine 5プラグイン発表! MayaによるAIフェイシャルアニメーション制作、AI駆動のMetaHumanをスムーズに展開可能に

NVIDIA社がAI駆動のMetaHumanキャラクターの構築や展開を容易に行えるNVIDIA ACE向けのUnreal Engine 5用プラグインを発表。また、Maya用の新しいAudio2Face-3Dプラグインも発表され、AIを活用したフェイシャルアニメーションの効率的な制作に対応する。さらに、Unreal Engine Pixel Streamingを活用したUnreal Engine 5レンダラも提供。これにより、MetaHumanキャラクターをリアルタイムで大規模にストリーミングできるようになる。
https://cgworld.jp/flashnews/202410-NVIDIA-ACE.html