Sony Pictures Imageworksのアニメーターであり、オンラインスクールAnimationAidの講師も務める若杉 遼氏がTwitter上でお題に沿ったポーズ画を募集する「エイド宿題」。本連載では、その企画で集まった作品をピックアップし、若杉氏がドローオーバーによる添削とそのポイントを解説する。

TEXT_若杉 遼 / Ryo Wakasugi(Sony​ Pictures​ Imageworks
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

今回のお題

こんにちは、海外でCGアニメーターをやっている若杉(@ryowaks)です。今月は、「興奮する」と「気まずい」の2つのテーマを「表情による感情表現」という視点から紹介していきます。AnimationAidのクラスの中でも、表情に関しては苦手意識をもつ方が結構いるような印象があります。

作品01:「興奮する」

投稿作品

ひと目見て、キャラクターが興奮していてテンションが上がっているような印象を受ける、わかりやすくとても良くできているポーズだと思います。アニメーションの場合はどんなポーズでも流れていく絵のひとつに過ぎないので、瞬間的なわかりやすさは重要です。

Point 1:a thousand paper cuts

"a thousand paper cuts"というフレーズを以前ピクサーのアニメーションディレクターの方のアニメーション講座で聞きました。"paper cuts"というのは、本のページをめくるときなどに紙で指先を切ってしまうようなことを言います。本当に小さな切り傷みたいな感じです。a thousand paper cutsというのは、そんなに小さな傷でもそれが1,000回起きたら致命傷になるというニュアンスです。つまり、ポーズを作るときにはそれぞれのパーツ(目や眉毛、口など)ひとつひとつの表現にはそこまで大きな影響力はありませんが、それらが全て重なったときには、しっかりとした強い表現力のあるポーズになるということです。

Point 2:白目と黒目と緊張

黒目とまぶたをつけないようにして、黒目の周りに白目の部分があるようにすると、力が入った目のポーズを作ることができます。

また、黒目と白目のバランスに関しては、もう2つだけ押さえておきたいポイントがあります。1つめは、目線を横に送るときなどにどれくらい黒目をまぶたに埋めるのか?というポイントです。これは大体50%以上は埋めないようにするデザインを目指すと良いと思います。これは、黒目が50%以上まぶたで隠れてしまうと、隠れている部分がどうなっているのか、見ている人が少し困惑してしまう可能性があるからです。50%見えていれば隠れている部分がどうなっているのかほぼ見当がつきます。アニメーションにおいてわかりやすさはどのトピックにおいても最も重要なのです。

黒目と白目のバランスに関するポイントの2つめは、左右で白目と黒目のバランスを合わせるということです。特に意図的に右と左でちがうポーズを目指すときを除いて、基本的には黒目と白目のバランスは合わせるようにしましょう。微妙にそのバランスが変わってくると左右で異なる印象を作ってしまい、結果的にわかりやすさを損なってしまいます。

ドローオーバー

ここまでの内容を踏まえて、目の力の入り方、肩の力の入り方、また指先のポーズやシルエット、それぞれの要素はそこまでの表現力はありませんが、その要素が全て合わさるとよりわかりやすいポーズになるということがわかると思います。

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作品02:「気まずい」

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作品02:「気まずい」

投稿作品

2つめは「気まずい」というテーマのポーズです。キャラクターのコントラスト(対比)については、以前にも何回か紹介していますが、今回も2人のキャラクターのコントラストをしっかりと表情で表現できており、良いポーズだと思います。男の子の表情と、女の子の目線に少しだけ気になる部分があったので、今回そのあたりをまとめてみます。

Point 1:目線と相手の距離

人によって癖が出やすいのが黒目の離れ具合です。黒目は、その離れ具合からどこに焦点が合っているか判断できてしまうので、実は注意が必要な部分だったりします。例えば遠くのものに焦点が合っている場合には、左右の黒目は離れていきます。逆に近くのものに焦点が合っているときには、黒目と黒目の間の距離は短くなります。英語では、黒目の間隔が短すぎる場合にはcross-eyed、逆に離れすぎている場合にはwall-eyedと言ったりします。

Point 2:表情のハーモニー

表情のポーズを作るとき、特にCGアニメーターの場合は目や眉毛、まぶたにはそれぞれ別のコントローラが割り当てられているためパーツごとに独立して考えてしまいがちですが、基本的には表情は眉毛も目も瞼も口もひとつながりと考えて扱うことが重要です。全体的な統一感(ハーモニー)を作ることで、しっかりと意図が伝わるポーズを作ることができます。わかりやすい例で言うと、顔の全体を使ってスクアッシュ&ストレッチを作るケースもあります。

具体的に今回のポーズの場合で言うと、男の子の「気まずい」雰囲気が眉毛と目からは伝わってきますが、加えて口もその雰囲気を表現できていると全体的にもっと「気まずい」雰囲気が伝わると考えました。

Point 3:下まぶたと頬の筋肉

また、まぶたと頬の関係も重要です。下まぶたには筋肉がないので、基本的に単独では動かさないようにし、下まぶたが動くときには頬からの動きを意識するようにします。頬の動きは口の口角によってもち上げられることもあるので、その場合には口角→頬→下まぶたの筋肉のつながりがしっかりとできているかどうか確認してみましょう。

ドローオーバー

女の子は男の子の方に目線が合っているはずなので、黒目の左右の距離をかなり近くにしてみました。また、男の子の方のまぶたと頬の関係や、全体的な表情の統一感を直してみました。

今回の添削はこんな感じです。最後に、いつもエイド宿題に参加してくださってありがとうございます! 皆さん本当に素晴らしいポーズをつくってくださるので、僕も勉強させていただいています。ぜひまた今後も参加してくださると嬉しいです!

「エイド宿題」とは?

「エイド宿題」はTwitterで始めたクリエイターの皆さんへ向けた新しい企画です。オンラインスクールAnimationAidのクラス内で出している「ポーズをつくる」という課題を、Twitterでみんなでやってみようというとってもシンプルな企画です。

●参加方法とやり方

・毎週月曜日にTwitter(@ryowaks)でその週のお題を発表するので、そのお題に沿ったポーズをつくってみましょう。
・CGでつくった、もしくは絵で描いたポーズにハッシュタグ(#エイド宿題)をつけてTwitterに上げましょう。
・ぜひハッシュタグで検索して、他の人がつくったポーズも見てみましょう。

●参考

・エイド宿題とは?
https://ryowaks.com/what-is-aidshukudai/

・エイド宿題 これまでのお題
https://ryowaks.com/category/aidshukudai/

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