記事の目次

    子どもの頃、よく暇な時間にプリントや広告チラシの裏に落書きをしました。ノートや教科書も落書きだらけ。もし落書きが動きだしたらとても楽しいでしょう。そんな気持ちで今回の作品も落書きしてみました。

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 254(2019年10月号)からの転載となります。

    TEXT_早野海兵(GARYU)
    EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

    Method 1:アナログで描くこと


    ▲これはアートディレクターの仕事をするようになってから、特に考えるようになったことですが、上の役職になればなるほど、正確な判断が何よりも早く求められます。3DCGによる表現はときとしてとても時間のかかるもので、上の立場の人間が最初に時間を取ってしまうと、チームの作業時間を大幅に削減してしまうという問題もあります。スケッチのような身軽な作業で、3D空間のレイアウトまでこなせないものか? 今回紹介する手法はそのひとつの解決策のように思います。きっとこれからはもっとアナログとデジタルの境界は薄くなっていくのでしょう。

    Method 2:イメージを固める


    ▲毎度おなじみのイメージを固めるまでのながれです。頭の中の考えを文章化したものなので、たどたどしいですが......。今回はこうした思考を経て、作品のモチーフとつくり方を決めました。

    Method 3:ゼネラリストの強みを活かしたシーン作成

    1:落書きをモデルにする

    今回はBlenderを使用しました。手描きの落書きをCGにしたいと考えたときにベストなツールだったからです。昔は手持ちのツールでなんとか工夫をする風潮もありましたが、昨今は様々なツールを駆使して作品をつくるのも一般的になってきています。大事なのはソフトがあるから画をつくるのではなく、つくりたい画があるからソフトを使う、ということですね。とりあえず試し描きしてみましたが、ツールというものは面白くて、初めて触ると楽しさが先行し、なかなか手がついていかないものです。



    ▲平たいエンジェルフィッシュを基にした魚を描いてみました。平面的な表現で、まずは簡単なものから。


    ▲ここでニシキテグリに挑戦。だいぶ操作に慣れてきたので、思いきって描いてみます。しかし、少し小さかったようです......。


    ▲画の中に主役がほしいと思い、最後にミノカサゴを描画。


    ▲これをモデルとして作成してみました。普通に作成するよりだいぶアナログ感が残っています。


    ▲背景のサンゴやワカメのような海藻も手描きで作成。

    2:シーン作成る


    ▲話は変わりますが、新しいパーティクルシミュレーションのプラグイン「ty flow」(docs.tyflow.com)。とても便利で、Particle Flowの代わりを務めてもらっています。


    ▲Particle Flowのインスタンスだと相当な重さになるところが、ty flowだと各段に軽いです。


    ▲今回、レイアウトには悩みました。二次元の落書きが三次元になることで、レイアウトの幅がかなり広がり、なかなか決まりませんでした。


    ▲最終的には最も二次元らしいレイアウトに収めましたが、これを動かしてみたいですね。

    Method 4:コンポジット


    ▲コンポジットには8Kでレンダリングした素材をそのまま使用しています。


    ▲二次元的なレイアウトもここまで大きな解像度だとなんなくできます。


    ▲少し体を切ることで画面に緊張感を演出。これで完成です。

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    Generalist Style 特別篇 3DCGの情報と楽しさを正しく伝えたい!

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    Generalist Style 特別篇 3DCGの情報と楽しさを正しく伝えたい!

    ゼネラリスト向けの情報を掲載する「Generalist Style」コーナー。今回は特別篇として、今年6月に東京工芸大学に訪問させていただいたときのことをご紹介します。インターネットなどの影響で偏った情報も多い現代、自ら足を運ぶことで正確な情報を伝えていきたいと思っています。

    1 画龍点睛の講演

    講演のテーマは「3DCGという仕事」。だいぶ一般的にはなってきたものの、実際に現場ではどのような仕事をしているのか? どういった環境なのか? 様々な作品のメイキングと一緒にご紹介させていただきました。今回のセッションは"領域研究"と言われる、外部から様々な講師に登壇していただく、とても積極的な授業。セッション中の質問には積極的な回答や反応もあり、クリエイティブへの興味が窺えました。実はこちらのコース、筆者が審査員をしているコンテスト「KLab Creative Fes」で入賞者も出している実力クラスです!

    2 東京工芸大学の魅力 ~アニメーション学科~

    今回訪問させていただいたのは、東京工芸大学の中野キャンパスにある芸術学部アニメーション学科です。中野キャンパスは今年リニューアルされたばかりで、新しい校舎が印象的でした。そこかしこにアートを感じさせる展示があるのも芸術大学ならでは。現在は1~4年まで一貫してこちらの中野キャンパスで学生生活を送っているそうです。様々な場所を見学させていただきましたが、今回はその一部をご紹介します。


    ▲新しいPCがずらっと並ぶ教室。最新の環境が整備されていて、学生に対する熱意が感じられました。


    ▲見事なシアタールーム。作成した作品はこちらで上映できるとか。本番さながらのシアターで自分の作品を観られるのは感動的。


    ▲芸術学部アニメーション学科の城戸孝夫先生のゼミ室。スッキリとした空間にモダンな家具が並び、一見しただけではCGルームのように見えないオシャレな空間です。


    ▲サーバルーム。校内のPC環境は最新のものに整えられています。数百台のPCが一手に管理されています。

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    Special対談 城戸孝夫准教授×早野海兵 ~これからの学生のために

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    Special対談 城戸孝夫准教授×早野海兵 ~これからの学生のために


    芸術学部アニメーション学科・城戸孝夫准教授【右】、画龍・早野海兵【左】
    〒164-8678 東京都中野区本町2-9-5 TEL:03-3372-1321
    www.t-kougei.ac.jp

    早野:城戸先生には、以前にAutodeskで勤務されていたときにとてもお世話になりました。こういったかたちでまたご一緒できて大変嬉しいです。さっそくですが、芸術学部、アニメーション学科の特徴と教育方針をお願いします。

    城戸:アニメーション学科は2003年に全国初めてのアニメーションに特化した学科として設立されました。時代の変化に対応し、多岐にわたって活躍できる学生を輩出しています。制作からアウトプットまで一貫して勉強できる環境を構築し、先を見越してインフラを整え、サウンドステージはもとより、AURO11.1チャンネル立体音響を導入した4Kデジタルシアターを学科で運用しています。

    早野:見学させていただきましたが、群を抜いた環境で学生さんがうらやましいです。そういった環境と3DCGへの関わりはどうでしょうか?

    城戸:2Dアニメーションを基軸に教えていますが、3DCGも3ds Maxを中心に授業があります。技術的なところよりも、ものをつくる姿勢と理解力、将来を見つけることのできる環境を整えています。そのため、卒業してから3DCGに関わるようになる学生も多いです。彼らはアニメーションとしての基礎を勉強しています。

    早野:卒業後にはどういったところへ就職されるのでしょうか?

    城戸:2Dアニメーションスタジオが多いですが、A-1 Picturesサイバーコネクトツーサンジゲン東映アニメーション デジタル映像部など、名だたるスタジオに就職しています。本校のメディアハブ構想の下、教員や卒業生がお世話になっているスタジオともつながりをもち、作品制作などにご協力もさせていただいてます。

    早野:卒業生とお仕事できるなんて理想的ですね。最後にこれからの学生の皆さんにメッセージをお願いします。

    城戸:いろいろなことにチャレンジするのが大事だと思います、学校は自分で勉強するところで、失敗しても大丈夫。チャレンジと興味をもって勉強してください!

    早野:ありがとうございました!



    [Information]

    • 株式会社画龍 早野海兵 監修
      3DCGベーシック講座[3ds Max]

      3ds Maxを本当にゼロからスタートする方のために作成したオンライン講座です。本講座は画づくりと技術アップの両面を重視しています。また、3ds Maxの様々な実践的な機能を動画で収録しているため、後々機能のリファレンスとしても使用可能です。ぜひ、この機会に3ds Maxを通してCGの世界に!
      online.dhw.co.jp/course/3dcg

    [プロフィール]
    早野海兵
    はやのかいへい●日本大学芸術学部卒業後、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント、(株)リンクス、(株)ソニー・コンピューターエンタテインメントを経て、フリーランスで活動。2007年(株)画龍を設立。
    www.ga-ryu.co.jp
    www.kaihei.net
    Twitter:@Kai_ryu_Kai