記事の目次

    ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は静かな怒りを感じさせる鬼神を制作します。

    TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard Inc.
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)



    静かに怒る鬼神

    今回は少しストーリー性をもたせ、「傲慢な人間の行いが鬼神を呼んでしまった」というような場面を造形します。静かに怒りを感じている様子を表現したかったので、全体的に神秘的な雰囲気にまとめました。

    主要な制作アプリケーション
    ・ZBrush 2020
    ・Autodesk Maya 2020
    ・Arnold Core 6
    ・Substance Painter 2019
    ・KeyShot 8

    STEP 01:ラフスカルプト

    顔、体を含め全体をラフに作成していきます。


    • 【1】Sphereから全体を作成します

    • 【2】少しかがんでいるような姿勢で造形していきます

    STEP 02:顔、手、足などを作り込む

    顔、手、足など全体的に手を入れていきます。一箇所にこだわりすぎず、全体をバランス良く作り込んでいきます。


    • 【1】顔の形を軽く彫り込んでいきます

    • 【2】耳を作成します


    • 【3】額から角を作成します

    • 【4】脱力感を表現するような形で両手を作成します


    • 【5】今回は雰囲気が出せれば良いので、指は個々に作らず、一体化した状態で造形します

    • 【6】ラフに背中を整えていきます


    • 【7】胸やお腹周りも整えていきます

    • 【8】足を作成していきます。足も指は一体化させた状態で造形します


    • 【9】さらに手の造形を整理します

    • 【10】全体的に力が抜けている印象になるよう意識します


    • 【11】大体の雰囲気ができてきました

    STEP 03:ディテールを加えていく

    ラフモデルに対してより細かく彫り込みを行い、情報を足していきます。


    • 【1】指の関節や節などをより細かく彫りこんでいきます。全体に言えることですが、しっかり関節を意識することが大事です

    • 【2】背中側に筋肉感を足していきます


    • 【3】顔も彫り込んでいきます。瞼に厚みをもたせ、さらに顎を少ししゃくれぎみに造形するとより鬼らしくなると思います

    • 【4】あまり怒りが出すぎない表情に抑えます


    • 【5】腰布を作成します

    • 【6】重みのある布にしていきます。しっかり下にたるんでいるように意識して 制作します。薄く軽い布だと、垂れるというよりふわっとなってしまいます


    • 【7】床を作成し、鬼の体を接地させます

    • 【8】腕を非表示にして、作業しやすくします


    • 【9】重力を意識して進めます。床に布が垂れて弛んでいる様子をしっかり造形するとより重力を感じる仕上がりになります

    • 【10】勢い良く彫り込んでいくのがコツです

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    STEP 04:髪を追加する

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    STEP 04:髪を追加する

    鬼の体に髪を作成します。髪は風を感じるように少し靡いているように造形します。


    • 【1】ラフな形状を乗せ、髪のボリュームを決めます

    • 【2】ボリュームが決まったら、大まかな立体感を出していきます


    • 【3】サイドのボリュームも確認します

    • 【4】毛束を増やしていきます


    • 【5】シャープに整えていきます

    STEP 05:犬を作成し、全体を詰める

    鬼の目の前に矢に打たれ倒れた犬を配置します。その後、全体の要素を確認しながらバランスを取ります。


    • 【1】犬のモデルをざっくりと作成します

    • 【2】犬を鬼の目の前に横たわらせます


    • 【3】犬の体に刺さった矢を作成します

    • 【4】矢を複製して並べます


    • 【5】床を切り出し、地面として整えます


    • 【6】鬼の顔に皺や皮膚のディテールを彫っていきます。あまり掘りすぎるといかつくなるので、バランスを見ながら適度に入れていきます

    • 【7】筋肉をもう少し整えます。アナトミーの資料を見ながら整合性を確かめていきます


    【8】全体的に整ってきました

    STEP 06:KeyShotで完成イメージの確認

    Arnoldでレンダリングに入る前に、KeyShotで簡単にレンダリングし、イメージを確認してみます。


    KeyShotでのレンダリング結果です。雰囲気的に問題なさそうなので、最後に少し皺などのディテールを足すことにします


    皺や、より細かなディテールを入れます。これでモデルは完成です。

    完成

    Substance Painterで色をつけ、Arnoldでレンダリングします。




    今回は神秘的な雰囲気の作品になりました。引き続き神シリーズも作成していきたいと思います。

    Profile.

    • 岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
      デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
      www.artstation.com/artist/yuzuki
      www.villard.co.jp