ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は北欧神話の光の神「ヘイムダル」を造形します。
TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard Inc.)
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
「光の神」の強さと神々しさを造形で表現
今回も神をモチーフに作品を作ります。筆者の想像による神ではなく、「ヘイムダル」という北欧神話の光の神からインスピレーションを受けて造形しました。ヘイムダルには様々な話や能力が解説されていますが、筆者は凛とした余裕のある強い神というイメージを膨らませていきました。北欧神話では、最後に巨人族の長であるロキと戦い、相打ちになって死んでしまうそうです。今回は、特に光の神というところに感じた強さと神々しさを造形で表現していきます。
主要な制作アプリケーション
・ZBrush 2020
・KeyShot 8
・Adobe Photoshop 2020
STEP 01:ラフモデルの作成
今回も設定画なしで、モデル作成から始めていきます。モデルはデフォルトに近いポーズの予定なので、左右対称で造形していきます。
▲【1】まずは胴体部分からの作成です。大きな形をとらえるためにブロック体のような感覚で造形していきます
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▲【2】この神はあまり意思を感じないようにしたいので、少し暗くなるような姿勢で造形していきます。この時点で体の綺麗な造形は考えず、まずはざっくり彫り込んで骨格や筋肉 のバランスを探っていきます -
▲【3】こんな感じでブロックとして意識するとより造形がやりやすいと思います
STEP 02:中間ディテールの作成
筋肉とシルエットを詰めていきます。今回下半身はあまり映らないので、上半身をメインに造形します。
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▲【3】特に、肩・首から頭の繋がりのボリュームやバランスを意識していきます -
▲【4】表面のディテールだけではなく、中に骨格があるというのを意識して進めます。 内面的な造形を意識していくとより説得力のある造形になっていきます
STEP 03:ヘルメットなどのパーツ作成
大きな翼を制作する前に、ヘルメットなどのパーツを作成して頭部の印象を詰めていきます。
▲【1】SnakeHookブラシで伸ばしながら、なるべく鋭くスタイリッシュな印象の頭部にしていきます
▲【2】背中の輪を作成します。尖るところはしっかり尖らせるといったメリハリを意識するだけで、造形として映える見た目になります
▲【3】複数のアングルから各パーツのバランスを確認していきます
▲【4】攻撃的な意思を感じるバランスになってきました
[[SplitPage]]STEP 04:翼の作成
今回は大きな翼が仕上がりの印象を左右するので、こじんまりした造形ではなく勢いよく躍動感のある翼を意識して造形していきます。
▲【1】SnakeHookブラシで勢いよく伸ばしながら翼を作成していきます。初めから羽の形状をつくろうとせず、ボリュームやシルエットを意識します
▲【2】左右対称では面白くないので、反対側の翼は非対称に作成していきます
▲【3】せっかくのディテールもメリハリのバランスを無視して入れすぎると全体的にうるさい作品になってしまいますので、入れるところと抜くところを意識して進めると、作品としてまとまりが出ます。翼は計4枚で、体を包むようなイメージで作成していきます
▲【4】背中の輪にアクセントになるような細かな造形を追加します。あまり増やしすぎるとごちゃごちゃしてしまうのでバランスを常に確認しながら進めます
STEP 05:全体を仕上げる
髪や腰の布などを追加し、全体的にディテールを加え仕上げていきます。
▲【1】髪は風を感じるように勢いよく伸ばして作成していきます
▲【2】翼を形成する羽を彫り込んでいきます。あまり薄い翼ではなく肉感のある翼にしていきます。その方がより重厚感が出ます
▲【3】羽はラフ造形で作った流れを損なわないように意識して造形していきます。これで造形は完成です
完成
KeyShotでレンダリングし、Photoshopで微調整して完成です。美しくも力強さのある神になったと思います。やはり、大きな翼というものは「強さ」をとても印象付ける要素のひとつだと改めて感じました。
前回に続き神をモチーフに造形しました。今回は北欧神話からイメージを借りてきましたが、オリジナルの神とこういった既存の神話の神を織り混ぜつつ、今後も創作を進めていければと思っています。
Profile.
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岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
www.artstation.com/artist/yuzuki
www.villard.co.jp