Sony Pictures Imageworksのアニメーターであり、オンラインスクール「AnimationAid」(以下、アニメーションエイド)の講師、そしてCGWORLDの編集長でもある若杉 遼氏がTwitter上でお題に沿ったポーズ画を募集する「アニメーションエイド ポーズ宿題」。本連載では、その企画で集まった作品を若杉氏がドローオーバーで添削し、ポイントを解説する。

「アニメーションエイド ポーズ宿題」とは?

こんにちは、海外で働くCGアニメーター兼CGW.jp編集長の若杉(@ryowaks)です。2023年もどうぞよろしくお願いします!

さて本連載では「お題に沿ったポーズをつくる」という課題に提出された作品を添削し、その内容を解説していきます。お題として設定されるのはサブテキスト(ポーズから伝わってくる言葉)で、今回のお題は「まずい」です。

以下の3つのポイントを考えながら、作品と添削内容を見ていきましょう。

①キャラクター(性格、年齢、性別など)
②コンテキスト(状況、話の流れ、時間経過など)
③サブテキスト(キャラクターの心の声など)

今回のお題について

今回のお題は「まずい」です。

提出作品は映画のショットのようなレイアウトで、とても面白いポーズに仕上がっていると思いました。アイデアも面白いですし、キャラクターのポーズも悪くないと思います。さらにレイアウトを意識したポーズになっていた点が良かったです。

ポーズ宿題では背景に何か置いたり、カメラを意識しなくても良いのですが、作品をつくる場合には、今回の作品のようにレイアウトを意識できると素晴らしいと思います。

このようなアクションがあり正面から撮るようなショットでは、ポーズをダイナミックに見せるのが少し難しいです。せっかくレイアウト意識した素晴らしい作品をつくってくれたので、僕の個人的なレイアウトの考え方を元に、カメラやポーズを上手に使ってさらに良くなる方法を考えていきましょう。 

提出作品『まずい』

レイアウトの構成要素

僕の場合は基本的に、レイアウトを考えるときには最初にいくつかの要素に切り分け、ある程度、方向性を決めてからレイアウト作業に入っていきます。最初からいきなり作業に入っても良いのですが、そうすると自分の癖や勘で進めることになり、結果的に沼にはまってしまう場合があるからです。

レイアウトがわかってくると、こういう小さなことが実際のショットの印象を大きく変えるというのもわかってきます。また、それによって必要なアニメーションの大きさなども把握できるので、アニメーションの勉強にもなります。

例えば、物静かなショットなのに相応しくないレイアウトでアニメーションをつくってしまうと、必要以上にアニメーションで補わなければいけないのですが、良いレイアウトであれば、仮にキャラクターが止まっていたとしても物足りなさを感じず素晴らしいショットに仕上がるはずです。

このようにレイアウトによってショットの基礎ができ上がるので、アニメーターはレイアウトを絶対に勉強すべきだと思います、面白さも十分にありますしね。レイアウトはアニメーションにも役立ち、アニメーションの基本知識もまたレイアウトを行う上で必須だと思います。

①カメラアングル

レイアウトの要素の1つ目はカメラアングルです。

カメラの角度が上を向いている(アップショット、アオリ)か、下を向いている(ダウンショット、フカン)か、はポーズの印象を決める上でとても重要になってきます。今回の作品ではアップショットよりのレイアウトになっていると思いました(地平線があるので、それがフレームの中で上にあるのか下にあるのかで見当がつくと思います)。

ただかなり激しいアクションでアップショットにするアイデアがとても良いと思ったので、もっとカメラを下に配置し、カメラアングルの角度をもっとつけても良いかなと思いました。そうすることで、キャラクターがより上の方にぶつかり飛び出して行くようなダイナミックな演出ができるかもしれません。

また今回の作品では関係ないのですが、例えば複数のキャラクターがその場にいるときなど、カメラアングルがアップショットなのかダウンショットなのかによって、立場の上下を表現することもできます。

より威圧的なキャラクター、もしくは映画の中でのヒーロー的存在のショットであれば、なるべくカメラのアングルはアップショットにしてみると良いでしょう。キャラクターの存在感が強まると思います。

②レンズの選択

ダイナミックな演出で言うと、もしかすると今回の場合はカメラのレンズをもう少し広角よりにしても良いかもしれません。画だけで見ると何ミリのレンズを使っているのか正確にはわからないのですが、いい意味でも悪い意味でも絵の印象がフラットで少し味気ない感じがすると思いました。

初心者アニメーターの中には、レンズのことを知らない人が多い印象です。実際に自分のショートフィルムや自主制作の作品などでシークエンスをつくってみて、CGソフトの中でも良いと思うのでカメラをいじって様々なちがいを知っていくのが一番勉強になると思います。

広角と望遠のちがいを端的に言うと、手前と奥のパースペクティブを強調したければ広角、逆に会話シーンなどキャラクターの自然なポートレート的ショットが欲しい場合には望遠よりにすると良いです。 

Mayaの場合はデフォルトで35ミリの設定になっています。これからカメラやレイアウトを勉強し始める人は、次にアニメーションをつくるときにぜひこのレンズを少し触ってみてください。レンズを変えてみて、見栄えのちがいなどを肌で感じてもらえると良いと思います。

今回の作品の場合、そういう意味で言うと、もう少し広角なレンズを使うことにより、より奥行き感のあるダイナミックな構図にできると思います。ただ1点だけ注意したいのは、広角レンズを使うことにより奥行きが強調されると、人間の顔でも同じように奥行きが強調されるので、顔のデザインが歪んでしまうことにつながります。キャラクターがカメラの近くにいるときなどは気をつけましょう。

実際に、こういう歪みをなるべく抑えキャラクターデザインを優先させるため、全体的に望遠レンズを多用する映画作品もあったりします。

③手前と奥の要素

レイアウトをつくるときにどうしてもダイナミックな構図がつくれない場合には、フレームの中の要素を3つにわけると良いです。3つの要素というのはフォアグラウンド、ミッドグラウンド、バックグラウンドです。そして3つに分けるだけでなく、それぞれのカメラからの距離に応じて大きさも考えてみると良いです。

僕も仕事で個人的によく言われることの1つなのですが、アニメーター的視点でカメラのレイアウトを考えてしまうと、どうしても動きの全てをカメラのフレームの中におさめたくなり、結果的に悪い意味で全体のバランスがとれた面白みのない構図になってしまいがちです。

場合によってはフレームの外にそれぞれの要素が出ても良い場合もありますし、カメラにより近づけて手前の要素をもっともっと大きく写しても良かったり、または奥の方にある要素をもっと奥にしてみても良いです。ある程度、小さくなっても見ている人には意外と動きがわかるので、視聴者を信頼して思い切って小さく写してみるのも良いと思います。

④視線誘導

4つ目は少しレベルの高い要素なのですが、映画の構図の中でできると素晴らしいものの1つ、「視線誘導」です。

先ほどお話しした要素(特に背景、小物や影など)でラインやシルエットをつくりフレームの中でより観客に見せたい部分に視線を集められるようデザインを組み立てる方法です。 今回の場合、手前にちょうどドラム缶があるので、そのドラム缶を使ってシルエットを浮かび上がらせ、中心にキャラクターを入れるというやり方をすると、上手くキャラクターに視線を集める構図にできるかもしれません。

視線誘導はできる場合とできない場合があるので、うまくできる場合にはチャンスだと思って活用しましょう。特に背景に何か建物やオブジェクトがある場合には、そのデザインを使うと良いと思います。

添削

<添削前のポーズ>

<添削ノート>

最後に、提出作品と僕が上から書いた絵を見比べてみましょう。元作品のポーズは悪くないと思ったのでそのままにしてありますが、少し手前の要素を大きく写せたらよりダイナミックな構図になったかなと思いました。

構図も意識したポーズをつくってくれたのでレイアウトの話を中心に解説していきました。1つ1つのレイアウト要素はそれだけでもっともっと深掘りできる部分が多いので、これからの記事でまた話していこうと思います。

今回の添削はこんな感じです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

ポーズづくりに参加してくださった皆さん、ありがとうございました! 皆さん毎回素晴らしいポーズをつくってくださるので、僕も勉強させてもらっています。ぜひ今後も参加してくださると嬉しいです!

「アニメーションエイド ポーズ宿題」について

オンラインスクール「アニメーションエイド」のクラス内で出している「ポーズをつくる」という課題を、Twitterでみんなでやってみようというとってもシンプルな企画です。

●参加方法とやり方

・毎週月曜日にTwitter(@ryowaks)でその週のお題を発表するので、そのお題に沿ったポーズをつくってみましょう。

・CGでつくった、もしくは絵で描いたポーズにハッシュタグ(#エイド宿題)をつけてTwitterに上げましょう

・ぜひハッシュタグで検索して、他の人がつくったポーズも見てみましょう。

●参考

・「アニメーションエイド ポーズ宿題(旧・エイド宿題)」とは?
https://ryowaks.com/what-is-aidshukudai/
・これまでのお題
https://ryowaks.com/category/aidshukudai/

若杉 遼/Ryo Wakasugi

2012年にサンフランシスコの美術大学Academy of Art Universityを卒業後、Pixar Animation StudiosにてCGアニメーターとしてキャリアを始める。2015年にサンフランシスコからカナダのバンクーバーに移り、現在はSony Pictures Imageworksに所属。CGアニメーターとしての仕事の傍ら、CGアニメーションに特化したオンラインスクール「AnimationAid」を創設、現在も運営のほか講師としてクラスも教えている。これまでに参加した作品は『アングリーバード』(2016)、『コウノトリ大作戦!』(2016)、『スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険』(2017)、『絵文字の国のジーン』(2018)、『スモールフット』(2018)、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2019)など
●若杉遼 ブログ わかすぎものがたり
ryowaks.com
●AnimationAid
animation-aid.com

TEXT_若杉 遼 / Ryo Wakasugi(Sony Pictures Imageworks)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada