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    こんにちは、サンジゲン のまみやです。ただ今、絶賛放送中の 『ブラック★ロックシューター』(以下『B★RS』) 。フジテレビの放送では、ついに第 6 話までがO.A.されましたが、制作現場は第 8 話(最終話)の撮影の真っ只中です! この連載も始まって 4 週目、週間ベースのスケジュールの厳しさを目の当たりにしております......!
    今回は、アクションシーン満載の 第 5 話「ブラック・ロックシューター」 から 2 カットをご紹介したいと思います!

    『ブラック★ロックシューター』第 5 話・場面写真1 『ブラック★ロックシューター』第 5 話・場面写真2

    © BRS on TV

    第 5 話「ブラック・ロックシューター」(その1)

    【CUT143】〜表情を豊かにさせるための"加筆修正"〜
    (アニメーター/清水剛吏)

    この『B★RS』第 5 話から、ほぼ全てのカットで表情の加筆修正を作画アニメーターさんに行なって頂いています。加筆修正 とは、3D 側の原画にあたる絵をそれぞれ原画 LO(レイアウト)用紙サイズに出力したデータに直接加筆して頂くことです。加筆の判断はアニメーションテイク 1 で監督や演出さんに動画を見て頂いて動きのチェックと同時に行なっており、そこで加筆が必要であれば原図出し、必要がなければ撮影さんにデータを渡しています。

    表情加筆には顔の表情はもちろんですが、影の入り方やラインのニュアンスまで含まれており、修正にはオブジェクトで変形させたものもあれば、レタッチしたものや連番のテクスチャを描いて対応するなど様々です。慣れないうちは顔の加筆修正だけで 1 日かかってしまう大変な作業でしたが、CG だと気持ち悪く見えてしまう部分を潰していくことで作画の良い部分を出せたと思います。

    『ブラック★ロックシューター』第 5 話・【CUT143】修正前 『ブラック★ロックシューター』第 5 話・【CUT143】修正後

    第 5 話【CUT143】表情の作画レタッチ前(左)と修正後(右)

    実はこのカット、絵コンテに「表情抑えて」と書いてあるのですが、ここまで表情豊かなのかと楽しみながら表情を描いていきました。アクションだけではなく 1 コマ 1 コマ丁寧に作ってある表情にも注目して『B★RS』を楽しんで頂けると嬉しいです。


    第 5 話【CUT143】ショットブレイク。(左上)絵コンテ、(右上)アニマティクス、(左下)3DCG完成、(右下)撮影処理を施した完成形

    このあたりの ブラックロックシューター(以下、BRS)デッドマスター(以下、DM) が殴り合う一連のシーンを清水さんが担当しています。このガチ対決シーンは今石(洋之)監督色の強いカットとなっており、コンテ打ち合わせの時からアニメーターたちに注目されておりました。ここをやりたかったというスタッフも多かったのではと思います。
    清水さんが書かれているように、5 話あたりから、現場で 「表情加筆」 という言葉をよく耳にするようになりました。3DCG で表情を付けるのはとても大変なのですね。【CUT】143は、今まで無表情だった BRS と DM が初めて露骨に感情を表した瞬間でもあったので、とても印象に残っています。そしてコンテの絵通りに仕上がっている表情に驚嘆しました(まみや)

    第 5 話「ブラック・ロックシューター」(その2)

    【CUT301】〜変形や歪みでアニメの"嘘"を表現する〜
    (アニメーター/松浦宏樹)

    『B★RS』のカットの中では珍しく CG らしいカットになります。第 2 話 の崩壊シーンとは違い 3D 的な表現で迫力のある画にとの要望でした。最初にカメラのみで LO を取りにいきましたが、それだけではコンテのような歪んだ地面や空を大きくフレームに収めることができなかったのでひと工夫しました。
    空 BG のオブジェクトをカメラに対して奥に変形させてフレーム内に大きく映り込むように、地面の歪みは、3D 上で制作することも可能ですが、このカットのような大規模なシーンでは、非常に手間がかかるので、ここでは After Effects のエフェクト [ベジェワープ] で画像自体を変形させています。アニマティクス作業時よりも絵コンテを参考に、立体感とランダム感を意識し、柱の壊れモデルを作成してアニメーションテイク時に配置し直しました。

    カットを作る時は、LO に気を配っています。いくら格好良いエフェクトやアニメーションを作成しても LO が悪ければカットの出来栄えは、決して良くはならないからです。3DCG では、パースが正確に出る分 LO が硬くなりがちですが、そこは、オブジェクトの配置を変えたり、変形させる等して見栄えが良くなるようにしています。
    このカットの場合、柱やお墓、鎖等の配置は、自分で配置し直しました。元々オブジェクトが配置されたシーンはあるのですが、それをそのまま使用しても意図した LO にならないことが多いです。こういった全景が見えるようなカットの LO は、四隅に大きな物を置き、画面真ん中辺りには小さい物を配置していきます。オブジェクト等を見えないパース線上に置いていく感じです。大量の破片に目が引かれがちですが、それ以上に LO が重要なカットでした。今石さんや演出担当の雨宮(哲)さんも喜ばれていたので、当初からの要望に答えることが出来たと思います。
    このように『B★RS』では、CG アニメーターが絵コンテから LO も切っているので本編をご覧の際は、意識して見て頂けると嬉しいです。


    第 5 話【CUT301】ショットブレイク。(左上)絵コンテ、(右上)アニマティクス、(左下)3DCG完成、(右下)撮影処理を施した完成形

    アニメーターたちが作ったカットをチェックする段階では、音は入っていないのですが、まるで柱が壊れる時の音が聞こえてくるかのような迫力あるシーンです。壊れた柱が空に吸い込まれていく時の、鎖にかかるテンションが、リアリティがあって良いなと思います。
    『B★RS』では、CG アニメーターが絵コンテの意図を組んでカットを作っている、という話は 前回(第 3 回) でもありましたが、カット制作の初動であるレイアウト作業はとても重要なのですね。技術的な話になると、私の未熟さでは追いつけない部分がありますが、アニメーターの皆さんはそれぞれがより良いカットを作るために、ひと工夫もふた工夫もしているのですね(まみや)

    いかがでしたか? さて次回は、第 6 話「あるはずもないあの時の希望」のカットです。お楽しみに!

    TEXT_間宮 舞(サンジゲン

    『ブラック★ロックシューター』メインビジュアル

    TVシリーズ『ブラック★ロックシューター』

    2012年2月2日より、フジテレビ"ノイタミナ"ほかにて全8話絶賛放送中!

    原作:BRSプロジェクト
    キャラクター原案:huke
    監督:吉岡 忍
    CG 特技監督:今石洋之
    シリーズ構成・脚本:岡田麿里
    総作画監督・キャラクターデザイン:芳垣裕介
    © BRS on TV

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